第十八話
「これが屋台で働く時の制服だ」
俺は大河内遙敏。日本で会社を立ち上げ新しい社屋が完成したところで中学時代からの幼馴染み、関猛暁と高校で知り合った後輩霜鳥洋平とともに異世界に飛ばされた。俺と猛暁は二十八歳、洋平は二十七歳だ。
俺の身長は178センチ、体重は69キロで体型は細マッチョ。黒髪はツーブロックで自分でいうのもなんだが、学生時代からハーフかクォーターと間違えられるほど鼻筋が通ったイケメンである。瞳はダークブラウンだ。
猛暁の身長は俺より少し低い172センチ、体重は60キロ。彼は高校生時代に剣道のインターハイで優勝を経験している。茶髪のスポーツ刈りで少々暑苦しさを感じる角張った輪郭に切れ長で鋭い眼光が特徴だ。強面ともいう。あとわりとお調子者である。
洋平は身長が173センチ、体重は59キロ。ひょろっとした印象は初めて会った誰もが持つ。垂れ気味の目に面長で色白。不健康そうに見えるが物質転送装置を開発した天才である。あと基本引きこもりで重い厨二病を患っている。
もちろん元の世界に帰ろうと試行錯誤したものの方法は見つからなかった。結果、洋平ほどではないにしても俺も猛暁も厨二病患者であることは間違いなかったので、帰れないならとこの世界で生きていくことを決めたのである。
「なかなかいいじゃん」
「この世界には合わなそうですけど、なんとなくホッとしますね」
制服の上着は向かって左半分が白無地、右半分が白と赤の縦ストライプで男性用はライトブラウンのズボン、女性用は同じ色の膝丈ボックススカートである。
洋平がこの世界に合わないと言ったのは、スカートの長さのことだろう。こちらではくるぶしまで隠れる長いスカートが主流で、膝下でも足を見せている女性はまず見かけない。
一枚の布に穴をあけて頭をそこに通し、腰ひもで縛る貫頭衣と呼ばれる奴隷服は例外だ。
「ロイレンちゃんとブリアナちゃんには着せないのか?」
「もちろん着てみてもらったがお前らには見せん」
「なんでだよ!?」
「どうしてですか?」
「か、可愛すぎたからだ!」
「そう言えば物質転送装置の取り寄せ履歴にセーラー服とかテニスウエアとかナース服とかミニスカサンタ服なんてのがありましたけど……」
「洋平! 黙れ!」
「洋平、スク水はなかったのか?」
「ありましたね、白い方」
「洋平!」
「白スク水ねえ。遙敏、お主もエロよのう」
「やめい!」
いや、ロイレンとブリアナの二人は異世界の衣装だと喜んで着て見せてくれたが、俺は輸血が必要になるほど鼻血を噴いた(イメージ)。さすがに白スク水は恥ずかしがられたが初々しくて萌え死にしたよ。
そのロイレンとブリアナは今、貧民街の教会に行っている。子供たちと屋台で働く者たちに読み書き計算を教えるためだ。屋台では最初のうちは俺か猛暁が付くことになるが、いずれは彼らだけに営業を任せたいと思っている。だから読み書き計算が出来ないと困るというわけだ。
「にしても遙敏はいいよなあ」
「なにがだ、猛暁?」
「可愛い嫁さんが二人もいてさ」
「まだ嫁じゃないけどな」
「夜もハッスルハッスルなんだろ?」
「いつの言葉だよ。てかしてねえし」
「「はぁっ!?」」
「なぜ洋平までハモる?」
「だってあんなに可愛い二人ですよ。夜は大河内先輩の部屋で一緒に寝てますよね? CAの制服とかチャイナドレスまで取り寄せてるじゃないですか」
「そんなものまで!? 遙敏、モゲろ!」
「だからしてねえって言ってんだろ!」
「もしかしてお前、その歳でEDか?」
「ちげーよ! その、なんて言うか、大事にしたいんだよ!」
二人揃って目をパチクリするのはやめろ。
そりゃ俺だってしたい。ロイレンもブリアナも拒絶することはないだろう。現に手で……げふんげふん。
「考えてもみてくれ。突然元の世界に帰れることになったらどうする?」
「うーん、それは確かに問題だな」
「そうですか? ボクは帰りませんよ」
「「はぁっ!?」」
「せっかく異世界に来たんですから楽しみませんと。大河内先輩も帰ることなんて考えなきゃいいじゃないですか。それに先輩がいなくなったらロイレンさんとブリアナさんは悲しむと思いますよ」
「それはそうなんだが……」
「あの二人を泣かせてまで元の世界に帰りたいんですか? もし先輩がそんな薄情な人だとしたら、ボクは今後の付き合い方を考え直さないといけなくなりますね」
「洋平の言う通りだぞ、遙敏。オレも覚悟を決めた! 帰れるとしても帰らない!」
「そ、そうなんだ」
「だから遙敏」
「なんだ?」
「ロイレンちゃんとブリアナちゃんに女の子紹介してくれるように頼んでくれねえか?」
「なんでそうなる!」
あの二人は元々王城のメイドだが今は出禁になっているのだ。友達がいたとしても紹介するのは難しいのではないだろうか。
とはいえ俺だけ女の子とイチャイチャしてるのも気が引けるので、ロイレンとブリアナが帰ってきたら相談してみよう。俺って友達思いだよな。猛暁、感謝しろよ。
という話を思いっきり上から目線でしてやったら、洋平には呆れられたものの猛暁にはひれ伏された。
で、夕食後の一時、俺に纏わりつきながら寛いでいる二人に猛暁の件を相談してみた。
「関様に女の子を紹介ですか?」
「うん。誰か知り合いによさそうな子はいる?」
「そうですねー、お城の女の子たちとはそれほど親しくお付き合いしていたわけではありませんし」
「私、一人思い当たる人がいるんですけど」
「え? ブリアナ、誰?」
「ただその子はですね……」
彼女の話を聞いて言い淀んだ理由に納得した。俺はもちろん猛暁もそんな理由なんて気にしないと思うが、問題は女の子の方だ。ブリアナによると向こうは猛暁が気になっているらしい。それでも猛暁がストレートにいったら恐縮してしまうだろう。
「とりあえずしばらく様子を見ることにしようか」
「そうですね。関様にも黙っておいた方がいいと思います」
「だね」
「そうと決まれば旦那様!」
「ん?」
「「きゃらめるぽっぷこーんをお願いします!」」
「お、おう」
セーラー服姿の未来の嫁たちは今日も可愛かった。




