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第八話 夜の紅茶

ちょいと日が開いてしまったので連続投稿です。

満月の夜、空には星が綺麗にその時を謳歌しているかのような輝きを見せている。


月明かりが差し込む一室で、眠りについている小鳥達を魔女であるペトラルカはとても穏やかな瞳で眺めており、普段の彼女を見るものからは想像のつかない姿を晒していた。





「いつになったら、私は私に戻れるのかしら」





夜風が彼女の長い艶やかな髪を軽く回せている中、軽い溜息が漏れる。


もう幾度となく繰り返してきた自問自答に内心嫌気が差し込みながらも、つい幾年にもわたる習慣に従ってしまうのは仕方が無い事と彼女は割り切っているのだが・・・



(これ以上、私が私の手によって罪を重ねていくのは嫌なのに)



もう何度も自決しようと『自分』が思いつく限りの事を試したのだが、『魔女』は眠りについているはずなのに尽く妨害され失敗に終わっている。





【この運命から逃げられるワケないじゃないか、ペトラルカ・・・】





ふと、声なき声が『彼女』の耳に囁かれる。


不快感を顕にし美貌を顰める。


その目は鳥たちを見守っていた時とは正反対の色をしていた。




「―――――――黙りなさい」




きつい口調で切り捨てても、聞き分けの無い幼子に優しく語り掛けてくるように魔女の声は彼女の耳に囁きかけ続ける。




【ふふ・・・もう何十、何百年の付き合いじゃないか。いい加減仲良くやらないか?】


「もしそうなったら、その頃には狂い咲いているんでしょうね・・・私は」





かつての温かい思い出の世界から随分とかけ離れてしまった事を嘆きたくなる。


どうしてこんな目にあっているのか、神に問いかけたくなる。


しかし彼女が信仰する神は昼の神であり、夜にしか自我を保てなくなってしまった彼女は祈ることも許されないのだ。


それでも彼女は『自分』を取り戻す為に気の遠くなる長い時を戦い続けてきたのだ。


自分自身を心の中で自嘲しながら、ペトラルカは温かい飲み物が欲しくなったので明かりが点いているであろう厨房へと足を向ける。




【さて、それはどうかな・・・居心地いいからねこの肉体は】



その間も魔女の嘲笑うような一応の説得は彼女の耳にのみ流され続けていく。






―――――本来、ペトラルカは魔女ではなかった。


生来の才能があったとはいえ、彼女自身とても温厚な性格をしており術など使えるような度胸も無く他人の心配をよくしているような、そんな子供だった。


裕福な農家に生まれた割には何事にも勤勉で、知性と温かい雰囲気を纏った彼女は村の人気者であったがそれを鼻にかけるような振る舞いは一切しなかった。


温かい両親や村の人達、大切な友達もいてペトラルカは幸せだった。


彼女たちの平和が崩れる時が訪れるまで。






国の高等教育機関に奨学生として入学し、ぺトラというあだ名がクラスメイトによって定着し、寮生活にもなれた二年目に突如、戦争が起きたのだ。


カリキュラムの中には素質に合わせて戦術訓練も組み込まれていた為、ペトラルカたちも戦時特例として任官させられ、戦場へと赴いた。


祖国の為に戦いながらも学生である彼女達は多少は戦功を上げたりしたが、手足に支障をきたし戦線を離脱したり、戦死したりして次々に屍を戦場に残す方が多かったのが現実だった。


過酷な戦況の中、仲間とはぐれてしまい手負いの友人を背負ったまま樹海を彷徨い、一軒の小屋に辿り着き、心優しき少女はそこの主たる魔女にこう請うた。






―――友人を助けてください、御礼は何でもしますから―――






一度こぼれてしまったミルクは元には戻せないように。


時をさかのぼる事など人には出来ない事象であると聡明なペトラルカは知っていたけれど、この時彼女を信用するのではなかったと後悔しない日は無かった。


友人を助けようとした事に後悔は一切無く、ある意味で約束が反故されてしまったわけでもない為に、その思い出は精神性を保たせる一因となっていた。




『お陰で私は魔女の身でありながら、回復の術が仕えるようになったから感謝している』




その言葉は自分の努力がいいように利用されている以上に、人助けのためにと学んだ知識が人々に仇なす魔女に使われている事がペトラルカを苦悩させる。


鬱屈した心の内を晴らさせる為に、まだ片付けをしていたホムンクルスたちにお願いしてお茶を自分で入れさせてもらい口に含む。




「・・・・・まずいわ、やっぱり」




人としての記憶が薄れていく中でも決して忘れなれない思い出の味が口の中に広がる。


寮のルームメイトから教えてもらった特別な入れ方。


試験前日には必ずその入れ方でお茶を飲むのが友人達との密かなジンクスだった。


一つの願いを込めながら、一口一口味わうように飲む。




〝私達の行く末が温かいものでありますように〟




彼女は人の寿命の何倍もの時を生かさせられてきた自分の体に温かさを感じたが、それは郷愁の念なのか、お茶の温かさか。




【いい月夜じゃないか】


「・・・それに関しては同感ね」




不思議な心の内を魔女に明かす事ないよう、注意を払いながらペトラルカは月を見上げつつ、ただ一人のお茶会を過ごしていった。



後書き劇場 

~ネコは正義です編~




ペトラルカ(以下ぺトラ)「皆様、こんにちは。なんかいきなり不遇の扱いを受けているペトラルカです」


末期(以下末)「皆さん、こんにちは!二連続投稿した割に大した量を書かなかった筆者でございます」


ぺトラ「量はさておいて・・・・今回は私からとある飲みモノを用意しました」


末「おお、これはありがたい。では頂きます・・・・ッ!何だこれは!?」


ぺトラ「とあるアニメを参考に作った●●●●茶ですけど?」


末「在る意味罰ゲームだろコレ!」







ぺトラ「話題は変わりますが、私の過去がすこし出てきましたね」


末「うん。在る程度は書かないと不都合が出てくるからね」


ぺトラ「早く主人公の事も書いてあげないと空気化してしまいますよ?」


末「言うな、それは俺も気にしてるんだ・・・」


ぺトラ「これを機会に目指せヒロイン!というわけですね、わかります」


末「何気に野心を吐露するんじゃないwww」


ぺトラ「いいじゃないですか、今時魔法処女なんて供給過多です」


末「字が違う!危険な間違いをするんじゃない!!」


ぺトラ「なら魔砲性女ならどうでしょう」


末「それも危険な気配がするからダメだろう・・・個人的にはおkだが」


ぺトラ「或いは魔王症女」


末「危険すぎる、恐れを知らないぺトラ・・・・恐ろしい子!」







末「これからは魔女の城に突入していく展開になります。ようやくシリアス&バトル成分がでます」


ぺトラ「こんな駄作者ですが、応援やご意見などもらえると元気が出ます。それでは皆様、ごきげんよう」

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