第二話 立場
この話に出てくるキャラは凄くお気に入りですw
でも話の都合上、ほぼ出番は皆無orz
星が煌めく夜空をとぶ影がひとつ、星明りに照らされる。
「・・・・さむっ。やっぱ遠いなぁ~」
手紙を出した少年の家がある村はとても遠い。
馬車で急いだとしても、10日はかかる位置に依頼者の少年がいる村は在る。
通常なら断るか遅れるとの手紙を出してから向かうのだが、その依頼内容に気になる点が在った為に文字通り飛んでいくことにした。
依頼主がいる所が近場なら帰りに色々買い物も済ませられる為、徒歩で行く。
遠方からの場合は前述したとおりに飛んでいく。
結構遠方から出されているのも少なくなく、その場合には少女が飛んでいった方が何かと都合がよい。
この時代、手紙を出したとしても届くのにひどく時間がかかってしまう。
返事を出しているよりも直接赴き、依頼人と直接話した方がメルメにとって色々と都合がいいのである。
・・・・・決して手紙が書くのが面倒だとか、字が汚いのを隠す為とかではないのよ!
依頼を達成したら報酬を提供されるが、メルメは報酬を受け取ることに難色を示す。
何故ならば、
(だってお礼貰っちゃったら『遊び』じゃなくなっちゃう)
少女にとって人助けが『遊び』であり『娯楽』と化しているからだ。
それに報酬をもって家まで飛びながら帰るのが少々面倒だ、という実情とお礼を貰うまでの事をしていないと思う心情がそうさせている。
最も収入が無いとやっていけないので、最低限の報酬は確保するように心がけているのだが。
さらにメルメが本当の意味で求めている報酬を持っている人がほとんどいないから、という事情もある。
(えっと、ちょうど半分位か~・・・早く行かないと)
星を見て少女は現在自分が何処まで来ているのかを確認する。
結構急いで飛んできたのだが、やはり距離がある事を実感して、急ごうとした時に、
「貴女はいつまでそうしているつもり?」
突如、声が降ってきた。
「………あたしの勝手でしょ」
それに対して、少女は驚く事無く平然と答える。
何も無かった虚空に突如あらわれた存在。
足元まで届く長髪、所々にふわふわした白いレースつきのいわゆるゴシック・ロリータの服。
その身丈よりも大きく仰々しい大鎌を携える神葬の令嬢。
その威容は見るものすべてに畏怖の感情を抱かせ、その美貌に見とれてしまうだろう。
なによりも特徴的なのは艶やかな髪と瞳と服の色だ。
其の色は血の色。
生命ある存在すべて体内に通っている命の道に流れ続ける鮮色をしていた。
「『私達』が他の存在に関わるのはあまり良くないということは判っているはずよね?」
「今更、そんなこと言われなくても判ってるわ」
女性は姿勢を崩さないまま、声だけを夜の空気に同化させていく。
緊迫し始めた雰囲気に同調しているかのごとく、辺りは静まり返っていた。
「なら、どうして貴女はそうしている?報酬も拒絶し、何の為に?」
「あなたには分からないでしょうね」
少女は知らず知らずのうちに硬化させていた態度を緩める。
そして諭すように、聖なる月夜に溶け込ませていくように言葉を少女の声が淡々と紡がれていく。
「人と関わるのがどうしようもなく楽しいからよ。色々考えさせられる事多いし、何よりも私は人の笑顔を傍で見ていたい」
互いが星空の下、しばしの間静寂が二人を支配した。
(……もの好きね)
女性の口元に笑みが浮かんだ。
目の前の少女は強情だ、とでもいうように。
「・・・分かったわ、自由になさい」
「だから貴女になんと言われようと――――って・・・へ?」
温かなる母性を感じさせる笑顔で大鎌を少女に向けて、話す。
「そこまでいうのなら好きになさい。あの者達には私から話しておくから」
「・・・・いいの?」
少女はてっきり戦闘になるものかと思っていた。
「何にせよ、一度『あちら』に戻る必要があったから良い機会だしね」
「貴女も色々面倒な立場ね・・・」
「仕方が無いわ、それが『私達』だもの」
女性はそう言うと背中を少女に向けて、
「それじゃ、私はもう行くわ……貴女が決めた道なら押し通しなさい、メルメ」
別れの言葉をいい、夜に同化していくように消えていった。
しばし呆然としていた少女だったが、自分が何をしていたかを思い出し急いで少年の家がある村へと向かう。
満月と輝く星達がこの世全てのものたちの祝福を祈る夜の中を飛びながら・・・
はい、メルメの隠したい事実を暴露しましたwwww
メルメは字を書くのが苦手という設定です。
他人に読ませると「何処の古代文字だ?」とマジで言われてしまい、それがもとでひと騒動起こした―――という話をかこうかと思いましたが、関係性が無い為にお蔵入り。
この話に出てきた神葬の令嬢ですが、筆者のお気に入りキャラです。
でもほとんど出番はありませんorz