第12話 現実と真実
さて、誰も見てないだろうからリハビリがてら更新するか(笑)
重ね続けられた年月とは裏腹に年季を感じさせない古城の廊下に足跡が響く。
月光が差し込むことで浮世離れした場景を醸し出している廊下を行く一つの影が在った。
影は進んでいく―――――その足取りは重くぎこちないながらも、もう一つの影に支えられながら。
純白の絨毯の上に赤い液体の点をポツポツ残しつつ…
(早く、ペトラルカ様に知らせないと―――――)
レティスは対峙した際に相手の力量を把握した際に脳内ネットワークを通して警備に当っているホムンクルス達に連絡をしており、侵入者を発見次第捕縛せよと命じてある。
警備の者達でどれだけの時間稼ぎになるだろうか…今夜は熟練のメイド達は『工房』で定期検査を受けており動けない。
長い間侵入者がこなかった事と、前回の侵入された時には既に戦えるホムンクルスたちは工房に運び込まれてしまっていのが状況的に痛かった。
戦闘に耐えうるのはレティス、シラナ、アルテを含めほんの数人。
一旦、定期検査に入ってしまったら一週間はかかってしまう―――――悠久の時間を持つ彼女達からすれば問題にならない時間、しかし今はそれが障害となっている。
時間的にいって彼女たちが復帰するのはあと数時間、しかし一刻の猶予もない。
そんな状況を把握していたからこそ、あの戦いには敗北するわけにはいかなかったというのに自分達は負けてしまった―――――その事がレティスを深い後悔へと誘う。
(なんとかしないと、このままでは)
状況は拙い方向へと向かっている―――まるてレティスには救いあげた砂が隙間から零れ落ちていくかのように感じられた。
※
「蒼き精霊の源よ、我が意思と一つになりて―――――」
「調律修正・・・・鳴り響きなさい、アーカム!!!」
魔女は足元にある魔術陣をいっそう強く発光させ、レティス達は音を最大限に鳴り響かせるために適切な陣形をほんの僅かの間に整える。
(――――――――間に合わない)
レティスはこれまでの戦闘で得られた情報から自分達よりも刹那ほど相手の方が早く此方を攻撃できると瞬時に判断を下した。
アーカムによる攻撃を行うには距離が少々近すぎて他の二人にも被害が及ぶ。かといって他の二人の武装では決定打となりうる攻撃は繰り出せないだろう。
恐らくはこちらを三人纏めて倒せるほどの魔術だろうが、相手は想像の域を超えている為に念には念を押しておくべきと考えてシラナとアルテに指示を与える。
次の瞬間に双方の強大な一撃が終止符を齎さんとして放たれ、予想通りの速度で互いの攻撃がぶつかり合うのを冷静に美しい瞳で見定めた。
本当なら三人で攻撃を放つべきだという事はあの時に判断がついた。
しかしレティスは二人に防御のみに徹するよう命じ、あえて自分だけで魔女の攻撃に対抗しようと試みた。
その時に彼女はこの戦いの勝利を放棄していた。
無理に戦闘を継続し悪戯に戦力を疲弊させるよりも一旦引き、体勢を整える方が良いと考えたからである。
これほどの相手を自分達だけで抑えきるのは無理と判断したのも大きい要因であるのだが、その代償はあまりに大きかった。
アーカムによる音障壁である程度の負傷の軽減は出来たものの、アルテとシラナを守る為にレティスはかなりの手傷を負ってしまった。
左腕は糸が切れたかのように感覚がなく、左足の太ももにも深い傷を負ってしまい歩くのがやっとという有様――――それでも、彼女は使命の為に廊下を途中で捉まえた部下のホムンクルスの手を借りながら進んでいく。
意識が霞みながらもレティスは危険を知らせるために、就寝しているはずの己が主の元へと歩を進めていった。
※
一方、地下の洞窟内でしばし抱き合っていた子供達はと言うと……次第に気恥ずかしさを感じてきたのか離れて話をしていた。
ありふれたお話や思い出話、色々レオルはルモンに一生懸命に話す。
最初の内はお互いに色々気まずく、お世辞にも会話の弾んでいるとはいえなかったが……二人とも次第に会話を楽しんでいった。
「・・・ごめん」
「ううん、ありがとう。抱きしめられたの初めてだったから嬉しかった」
照れてながら感謝の言葉を述べられたレオルは、嬉しさと共に湧いた疑問が胸の中で膨れ上がっていくのを確かに感じていた。
――本当に魔女は悪い人なのだろうか?
――――何か理由があるのかもしれない。それさえ判れば皆と仲良くなれるかもしれない。
――――――誰だって、一人は辛いんだから。
レオルは以前レーナから『あんたって本当にお人好しよね~』といわれた事を思い出す。
確かに怖い魔女相手でも話し合おうとするのは自分でも人が良過ぎると思わないでもない。
それでも彼は皆が笑いあって助け合う可能性を信じたかった。
カッ、カッ、カッ・・・
規則正しく次第に近づいてくる足音に二人が驚き、少年と少女は硬直してしまう。
足音の主が姿表した時レオルは驚き、ルモンも「あ」と気の抜けた驚きの声を上げた。
姿を表した人影は一体何があったのか訊きたくなる位に大怪我を負っている。
それぞれ髪が解れており、傷口から赤い半透明の血が流れている――――――よく見れば、手足だけでなく全身に渡って酷い傷を負っている。
何か凄い事があったということ位は少年にも簡単に察することが出来た。
レオルは知らなかったが、その二人はメルメとの戦闘によって傷ついた二体のホムンクルス。
レティスの指示により別行動をとっていたアルテとシラナだった。
「アルテさんとシラナさん、ようこそ・・・・って酷い怪我じゃないですか!! はやくこっちに来てください・・・何やったんですか? 『怪我しないように注意してお仕事やってくださいね』ってレティスさんから言われているでしょう!」
無表情のホムンクルスたちを叱りつける少女。
心なしか二体のホムンクルスは落ち込んでいるようにも見える反面、満身創痍で口数少ないホムンクルスたちもそんなルモンを愛おしく思っているようである。
(やっぱり、この人たちも普通の人と変わらないんだ)
魔女さんもきっと何か理由があるんだろう。
最初から悪人だった人間なんていないって神父さまも言ってたし、ルモンの表情を見ていればこのお城の魔女さんが悪い人には思えない…
ルモンの指示に従って二人の年上の女性の治療を手伝いながら、そう思っていた。
レーナを助けたいという気持ちもあったが、ルモンや目の前のお姉さんたちも助けてあげたいと思うのも嘘偽りない気持ち。
『どうすれば皆が幸せになれるのだろうか?』
そんな思いが小さな産声を上げたのを、レオル自身が知る由がなかった。
んー…さびついてるなぁ文章力。
元からないけどw