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第十話 『夜』の始まり

さくらをみると何故かしんみりしてしまいます。

さくらを観ると心が癒されます。

さくらを見るとなるを思い出します。


さてネタはいくつあったでしょう!答えは後書きで。


魔女の意識が閉ざされつつある安らぎの夜がゆったりと過ぎていく。


質素だが品質のよさが窺える寝具の上で、ペトラルカは身を横たえながら物思いにふけっていた。


彼女は自身の体の内に生きているもう一つの存在について、考えなかった日はこれまでないといっていい。


しかしペトラルカは自分の体を支配する魔女の本名を知らなかった。





魔女と契約する時に聞いたはずなのだが、異なる言語だったとしか認識できなかったのだ。


あの時は友人を助ける事にしか意識が向いていなかった事が後になって悔やまれるが、もう時は戻せない。




(あの時の記憶がもっとしっかり思い出せたならいいのに)




魔女はペトラルカの体の支配権を握る代わりに幾つかの代償を強いられていた。


其の一つが行動時間の制約、つまり夜は強制的に眠らされ昼間は動物の姿になる。


ある程度は魔女としての実力で制約を緩和できるのだが、それも持続して二時間程度である。


その時間を自分の遊びとして捕獲した女性達を小鳥に変えて、私欲を満たしているのは許せない。


しかし。どうにも腑に落ちないことがある。





(どうしてこの城には工房がないのかしら)





魔女と言えば大きい釜でどろどろした何かを煮ている光景がよく想像されるが、あれは工房で作業している好例といえるよう。


この世界において魔術というのは、人の精神が世界に干渉して実体化したものである。


その行使には様々な制約が課せられている為、簡単には行使できない。


強力であればあるほど代償は多く制約もあり、それを軽減する研究がされ始めたのが工房の始まりとされている。


今でもその傾向は変わっておらず、優れた魔術を行使するものほど巨大な工房を持っているものなのだが―――――この城の中にはそれがない。


契約した時の小屋が当時の工房であると思うのだが、今はもう跡形もなかったと後で調べて分かっている。


有るのは魔女が自身の手で作った一冊の本なのだが、見たことない文字で書かれていた為にペトラルカが読む事は出来なかった。


それを飽く事無く緑髪の魔女は毎晩本を手に取り、ページを捲っていく。




(・・・・ん)




眠気が少し出てきたらしく、目蓋が重く感じられてきた。


本を元のベッド脇に備え付けられたテーブルに戻して、睡魔に身を任せて夢の世界へと旅立たとうとしている最中、




(せめて、夢の中だけでも)




其の行き先が懐かく温かいものである事に期待を寄せて一人の女性は目を閉じる。


城の中で起きている出来事を知らないままで。











少年の緊張は徒労に終わった。


メイドたちが城内に荷物を搬送しているのに紛れ込み、侵入するという安直な手法をとった。


これが意外や意外、普通に気づかれることなく侵入できてしまったのだ。


具体的に言うと・・・作業しているメイド(妙に無表情)と後ろにいるメイド(こちらも無表情)の間に一メートルほどの感覚で空いていたので、そこに入り込み歩調を合わせて侵入したのだ。




(こんな簡単に侵入できたのは幸運だ)





城内に入ってすぐに作業列から外れて、暗い城内へと足を踏み入れる。


しばらく歩くと、ひっそりとした扉を発見した。


他の扉と違い其の材質は鉄で、周りから隔絶されている雰囲気を醸し出しているので不吉な予感がして遠ざかろうとした時。





コッ、コッ、コッ・・・・・





足音が突如廊下の向こう側から聞こえてきた。



(――――!!)



思わず声が出そうになるのを懸命に堪え、何処か隠れる場所がないか辺りを見渡して手短にあった部屋に入ろうとする。


幸か不幸か扉には鍵がかかっておらず、すんなりと入れたのだが近づいてくる音は少しずつだが確実に近づいてきている。




(・・・・見つからないよね)




コッ、コッ、コ・・・・




足跡が止まる。扉が開けられるまで少々間があった。


祈ることしか小さな侵入者には出来ず、其の身が震えてしまうのを押さえきれない。


扉を開けられた時も少年はただじっと身をすくめていることしか出来なかった。





「・・・・部屋内に異常なし。鍵がかかってない為施錠します」




一体のホムンクルス(レオルからみれば綺麗なお姉さん)が事務的な口調で口頭確認して、扉を外から施錠する。


幾つかの施錠音が聞こえてきた為、この部屋が重要な部屋である事が容易に想像できた。




(た、助かった・・・)




情けない恰好でへたり込みながらも少年は安堵の吐息を漏らす。


深呼吸して落ち着きを取り戻す。


目が暗闇に慣れてきた頃に改めて部屋を見渡してみると・・・数多くの薬品、呪物、器具、そして数多の生物の標本が整理整頓されていた。


レオルは失神しそうになりながらも物品を一つ一つ丁寧に手にとって調べる。


この行動こそ魔女っ娘からの作戦の中核であり、今回の救出劇の要でもあった。





『多分、あの魔女は普通とは違う何か特殊なもの使っている筈。魔術というのは本来とても時間がかかるし、代償が必要となるから・・・其処が狙い目かな』





魔女の代償さえ知ってしまえば攻略も格段と楽になり、救出も簡単になるということらしい。


さらに人間を別の生命の形に変えつつもその知能を維持させ、元に戻せる事は困難を極める事象だという。


その事から『ペトラルカ』が特殊な工房を持っていると予測できた。


工房さえ見つけられれば魔女っ娘が破壊する手はずとなっている。


問題はどうやって知らせるかだが、



『大丈夫、私が君を見つけるから。発見さえ出来ればもう勝ったも同然♪』



少年を箒に乗せてきた少女はそう言った後、出立前にもう一つ教えてくれた。


その時の少女の表情は忘れがたいものだった。





――――魔術、神術ともに特別な力というものは「世界から認められていない異常」だからどうしても惹かれあうんだよね。だから拠り所を求めるように本人とは別の場所、例えるなら家みたいな所にもう一つの本体があるんだよ―――





そういって苦笑いする彼女を見て、レオルは複雑な気持ちになるのを感じた。




(まるで、親から認められてない子供みたいだ)




なら、魔女はもしかして悪くないかもしれない。


誰かが一緒にいればもう寂しい思いをさせずにすむんじゃないかと心優しき少年は思う。


認められない寂しさと孤独の辛さ、双方がレオルにとって経験ある事だから魔女が一方的に悪いとは思えなかったのだ。


そう思考しているうちに本棚と本棚の隙間が月明かりに照らされて、小さな反射が目に入った。


不審に思い少年が手を伸ばしふれた次の瞬間。



「え、な、何?」


【ゴゴゴゴゴ・・・・】



部屋に隠されていた扉が開き、地下へと続く長き道をさらけ出されていった。
















月夜の晩に、四つの影が舞うように交錯していた。


三つの影が一つの影を洗練された連携攻撃で追い求め、一つの影が的確に自分へと向けられ実体化した敵意を、ステップで避け、杖で薙ぎ払って防ぎ、薙ぎ払った態勢で魔法を放ち撃ち落す。


三つの影のリーダー格であるレティスは表情を変えることなく、姉妹と連携しながら容赦なく攻め立ててる。


一見優勢にも見えるが、レティスは心中で舌を巻いていた。





(この敵は――――――強い)





認めざるを得ない。


唯でさえホムンクルスの戦闘力は並みの軍隊の一個中隊に匹敵すると言われている。


魔女ペトラルカによってこの世に生を受けた彼女達は通常のホムンクルス以上に強化されているというのに、三体がかりで未だに手傷を負わせていない。


その事実はこの敵を主に近づけさせはしないという覚悟を、本来感情が無い人形達に感情を抱かせる程の恐怖として充分だった。


侵入者が鍔迫り合いしていたアルテを弾いたと同時にレティスに向けて氷槍の群れを放つ。


魔女っ娘の攻撃をレティスは専用のハンドベル「アーカム」をムチのように扱って防ぎきり、お返しとばかりに相手に向かって鳴り響かせる。


防がれた氷槍が粉砕されると月明かりが下された氷の粒によって乱反射し、戦場は美しく映え見るものが居たならば魅了しただろう。


ハンドベルが死の調べを優しく敵に響かせる、その光景はまるでダイヤモンドダストを思わせた。







――――「アーカム」は本来殺傷能力に長けているわけではない。


相手の動きを一時的に止める、自分以外のホムンクルスを統制する目的で作られた代物である。


しかし彼女は其れを戦闘に使用して、長き時の中で数多の敵を屠ってきた。


音はあらゆる生物に共通する一種の『言語』であるとも言われている。


その共通言語を媒介にして空気振動を起こさせ衝撃波を生み出し、相手の意識を知覚させる事無く操る事を可能としたのはレティス自身の手によるもの。


本来、自己を持たないはずのホムンクルスが自己改良など不可能である。


その筈なのに、いくら主人によって与えられた知性があるとはいっても『生み出す』行為は出来ないと定義された存在である彼女はやってのけたのだ。








音無き透明の波状攻撃が大地を削り取る――――――――しかし敵には当たらない。


侵入者が切りかかってきたシラナに対して箒を槍のように扱い、強烈な突きを繰り出す様を見てホムンクルスのリーダーは驚嘆せざるを得なかった。


シラナとてこれが初陣と言うわけではなく屍を山のように築いてきた実力がある。


アルテも緻密な魔術構成と陣構築技術などサポートにおいて洗練された技能がある。



その二人を加えて三人がかりで攻めているというのに、なぜ一向にダメージすら与えられないというのか?



幾度かの攻防の内にどちらも決定打にかけてまま戦局は推移している。


三人はあの魔女は見た目で判断しては危険と「察せた」が「理解」していなかった。


魔術はどうしても起動から具現化まで時間がかかってしまう。


故に殆どの術者が周到に罠を張った自分の工房で戦う、もしくは武術に長けたものを共に戦うといったスタイルをとっている。





しかし、この魔女はどちらでもなかった。


箒を槍に見立てた槍術と高速呪文具現化による魔術の併用、つまり箒でなぎ払う動作一つとってもそれ自体が魔術を発動させる印となっている。


魔術を扱うものにとって同時思考は必須要項ではあるが、目の前にいるのはそれを遥かに超えたもの。


つまり同時思考行動―――――思考と行動、双方を同時に二つ以上進行させていたのだ。









―――――――このままでは決着がつかない。


魔女の放つ魔術はレティスが縦横無尽にアーカムを展開させ防ぎきり、アルテやシラナも防ぐ。


またホムンクルスたちの連携、また個人による攻撃も敵は手にした箒で薙ぎ払い、魔術で撃ち落し、近づかれれば箒の柄が迎え撃つ。


一進一退。


もう数時間経ったとも感じられ、またほんの数分しか経ってないとも思える時の流れの中で四つの影は観客無き戯曲を演じていた。





(これ以上長引かせると支障が出ますか・・・・アルテ、シラナ)


(分かりました)


(りょうかいですー)





視線を合わさずとも意志疎通に問題はない。


彼女達には言葉を交わさずとも意識を交わせる様に作られており、ほんの一瞬でリーダーの意図する事を把握する。


三人は音を最大限に鳴り響かせるために適切な陣形を刹那の間に整えた。


一方のメルメは足元にある魔術陣をいっそう強く発光させて、






「蒼き精霊の源よ、我が意思と一つになりて―――――」


「調律修正・・・・鳴り響け、アーカム!!!」







次の瞬間、双方の強大な一撃が終止符を打とうとして放たれた。


一つの衝撃が大地を抉った後に城内は静けさを取り戻した。


月が時の流れに従い、夜をかけていく下で立っていた人影は無かった。


もっと臨場感出す為に改稿する予定です。


メルメの動作を描写してより臨場感を出そう・・・としたがメインが何時の間にかレティス達になっているので難易度が上がってた。なんでだ。






そして前書きの答え。


さくらを観ると~ →『カードキャプターさくら』

あの作品って同性愛も地味にあったよね。

近年の魔法少女モノの中では正統派だと思います。


さくらを見ると~ →『佐倉メイ』

(ネギま!のキャラ、そして『ラブひな』のメインヒロイン『成瀬川なる』の妹。ちなみにラブひな最終巻の最後にちょこっとだけ出てきます。一コマだけ。

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