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907話 使い魔会議



 そんでもって、翌日の放課後。


「じゃーん! つーかーいーまー会議ー!」


「……」


「……」


 訓練所には、私とキリアちゃん。そしてダルマスの三人がいた。

 昨日思いついた"もう一人"も交えての使い魔会議。そのもう一人が、ダルマスだ。


 私は場を盛り上げようと声を張り、一方の二人はぽかんとしている。


「なんだよう、テンション低いぞこのこのー」


「いや、そう言われましても……」


「なんのつもりだ、いきなり連れてきて」


 不服そうな顔を向けるのはダルマス。放課後になった瞬間、引っ張ってきたんだけど……それがお気に召さなかったのだろうか。


「もしかして、なにか用事があったとか?」


「いや、ないが……」


「ならいいじゃん」


「そういう問題ではなくてだな」


 ふむ、暇なら付き合ってくれてもいいのに。なにが問題なんだ。

 この間ヨークリアさんとの……で、デート、を目撃された時も様子がおかしかったし。


 ……ま、様子がおかしいのはこっちもか。


「え、ええええ、エランさ……な、ど、どうして……」


 と、私の服を引っ張るキリアちゃん。

 その顔は赤いやら青いやらで、大忙しだ。


 私が考えたのは、使い魔との関係がうまくいっていないキリアちゃんとダルマスを交えていろいろ情報交換したり、なんやかんやで二人の距離を近づけようというわけだ。


「にっ」


「いや、笑顔浮かべられて親指立てられてもわかんないです」


 ただ、事前に話すとキリアちゃんが小さくなってしまうので、いきなりのサプライズにしたわけだ。

 結果は大成功だね、うん。


 さて、放課後の時間も限られてるし、ちゃちゃっといこうか。


「じゃ、早速出してよ。ほら」


「カツアゲか!」


「おお、ナイスツッコミ。でも出すのは使い魔だよ、使い魔会議って言ったじゃん」


「さっきのが初耳なんだがな」


 言いながらダルマスは足下に魔法陣を展開していく。ツンデレさんかな?


 魔法陣は輝き、その中から一匹……いや一羽? とにかく丸っこい鳥のような生き物が飛び出す。

 いや、鳥なんだけどさ。


 ずんぐり体型のモンスター、不死鳥(フェニックス)。伝説上の生き物であるが、力を解放していない姿だという。

 名前をフィザードと言う。


「わ、私もっ」


 それを見て、キリアちゃんも魔法陣を展開する。

 現れたのは、昨日勝手に飛び出していたフクロウ、ベルだ。


 バサバサと飛び上がり、嬉しそうに回っている。

 なんか……あのフェニックスとちょっと似てるな、体型が。


「ほう、元気だな」


「き、恐縮です」


 フクロウが飛び回る度に、彼(?)の首についている鈴がチリンチリンと音を鳴らす。


「あの、首についている鈴は?」


「あ……この子、勝手に飛び回るから。居場所がわかるためにと、他の方に気付いてもらうために、鈴をつけまして」


「ほぉ、なかなかいい考えじゃないか」


「! と、と言っても、エランさんのアイデアなんですけどね……あはは」


 ダルマスに褒められてまんざらでもないキリアちゃん。謙遜は美徳だけど、そこは自分がやったってことにしとけばいいのに。


 ほら、ダルマスが「ほぉ……」って感心した様子で私を見ている!


「……鈴をリボンにでも巻いて、それを首に巻けばいいんじゃないかなって。ちょっとしたおしゃれにもなるしね」


「確かにな」


 ふむふむと感心したようにうなずくダルマス。

 それから、キリアちゃんを見てからまた私に視線を移す。


「で、使い魔会議というには……今のが、使い魔に対する悩みというわけか。似た悩みを持つ者同士、集められたと」


「そゆこと」


「まったく。おせっかいというかなんというか」


 とは言いつつ、嫌だとは言わないんだよなダルマスったら。


 まあ使い魔のことはぶっちゃけた話図書室で調べればわかる。フェニックスは例外だけど。

 主な目的は二人の距離を近づけることなわけですよ。


「それにしても、このフェニックスとフクロウ……ちょっと似てると思いませんかい。丸っこいフォルムとか、翼が生えてるところとか」


「一応鳥類だからな」


 使い魔に共通点がある、というのはいいことだ。なんとなく親近感が生まれて、使い魔同士のことで話が広がっていく。

 そして次第に使い魔の話から当人同士の話になって、二人の距離はどんどん縮んでいく……


 これだ!


「これはもう、あれだよ! お互いにさほら……ね!」


「全然わからん! なにが言いたいんだ!」


 くぅう、だめだ。私になんか、気の利いたことを言えってのは……まさかこんなに難しいことだなんて!

 キリアちゃんなんか、ハラハラした様子で私を見ているし。


「そもそも、使い魔会議と言ったって……俺のフェニックス、そっちのフクロウとでは悩みも全然違う。解決策が見出だせるとは思えんが」


 ぬぐぐ……こういうときだけ理詰めしてきやがって……!


「いやいや、要は二人とも使い魔が言うこと聞いてくれないのが悩みなんでしょう? それには確かな共通点があるじゃない」


「ならばどうやったら言うことを聞いてもらえるのか教えてくれ」


「……そ、それをこれから話し合うんだよー。そのための会議じゃーん?」


 だめだ、これ以上喋ってたらいろいろとボロが出そう。そりゃもうボロボロ出そうだよ。

 もう出ている気がしなくもないけど。

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