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【一年生編完】史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます  作者: 白い彗星
第六章 魔大陸編

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377話 名前



「これより、契約の儀式を行う」


 ラッへの言葉に、私は息を呑む。

 長く生きてるエルフなだけあって、こういうことには詳しいみたいだ。人目を避けて生きてきたルリーちゃんは仕方ないけど、ラッへがいてくれてよかった。


 私とドラゴンの血は、魔法陣の中に吸い込まれた。

 青白く輝く魔法陣は、私とドラゴンとを照らしている。


「ま、儀式ってもそんな物々しいわけじゃねぇ。必要なことはある。それをクリアすればいいだけだ」


 ふむ、条件がある、と。

 私とドラゴンの心が通っている、だけじゃだめなんだろうか。


 そう不安になっている私に、ラッへは告げた。


「契約を結ぶモンスターに、すべきこと……名前をつけてやることだな」


「……な、まえ」


 どこか深刻に言うものだから、身構えてしまっていたけど……必要なのは、名前だという。

 契約を結ぶモンスターに名前をつける……つまり、私がどらの名付け親になる?


「えっと……必要なことって……」


「名付けだな。んで、互いに互いの名を呼び、契約を結ぶことを確約する。そんで、儀式終了だ」


 思ったよりも、簡単な工程なんだな……ちょっと拍子抜け。

 でも、そうか……考えてみれば、苦労して召喚した、自分と相性のいいモンスターだ。

 その段階で、難しい条件はクリアしているのかもしれない。


「モンスターって、名前はないもんなの?」


「種類にもよるが、基本的にはな。それに、契約を結ぶとモンスターの名前は、結ぶ人間が名付けるもんだ」


 モンスターに名前……あんまり深く考えたことは、なかったけれど。そういえばゴルさんや先生も、使い魔に名前付けてたもんた。

 ゴルさんのサラマンドラは『ドラ』、先生のハムスターは『ハム子』だったっけ。


 ……あんまり凝ったのじゃなくて、いいのだろうか。


「言っとくが、名を与えるってのは与えられる側……モンスターにとっては重要な分かれ道だ。気に入らねぇ名前を付けようもんなら、反感を買って体内から爆発するかもな」


「なにそれ!?」


 ひひひ、と笑うラッへの言葉が、冗談なのか本音なのか、わからない。

 体内から爆発……って。ない……とは思いたいけど。


 あれかな。さっき私とドラゴンの血が魔法陣の中で混ざったことで、二人の間に繋がりみたいなものができて、ドラゴンの気に入らないことがあったらそれに反応して私の体に異変が起きるとか!


「まあ冗談は置いといて」


「冗談かよ!」


「ただ、てめえならわかるんじゃねえか?

 ……名を付けられることの、意味が」


 冗談だと跳ね除けるラッへ……けれど、次の言葉は私の胸に、突き刺さった。

 名前を付けられることの意味……それは、私にとって、切っても切り離せないものだ。


 十年より前の記憶がない私は、自分が何者であったかを知らない。師匠に拾ってもらい、『エラン』という名前をもらった。

 空っぽだった私に、師匠はいろんなものを、与えてくれた。


 この『エラン』って名前は、死んだと思われた師匠の娘……つまりラッへの本当の名前だってのは、知ったばかり。ただ、私にとって、すごく重要な意味だ。

 だって、この名前は師匠にとって、娘に名付けた名前なんだから。


「名前……か」


 私が、誰かに名前を付けるなんて。考えたこともなかった。

 なんていうか、ちょっと緊張する。


 自分の、使い魔……立場としては、対等な存在だけど。私に仕えると言ってくれた、この強く気高いドラゴンに。

 名前を、付けるとしたら……


「……クロガネ」


「お」


「クロガネ、って名前は、どうかな」


 ドラゴンの皮膚を覆う、黒い鱗。……ラッへの攻撃や、私の魔術でも、たいしたダメージを与えられなかった、硬い鱗。

 見ていて、とてもきれいだし。その鱗を見ていると、自然とこの名前が浮かんだ。


 『クロガネ』、と。


「へぇ、悪くねえじゃん」


「素敵です!」


 ルリーちゃんも、意外にラッへも、褒めてくれた。

 自分のネーミングセンスが悪くなかったと思い知って、一安心。だけど、問題は……


 この名前を、ドラゴン自身が受け入れてくれるか、だ。


「どう、かな」


『……』


 ドラゴンはさっきから、黙ったままだ。それが返って、緊張感を高めていく。

 なにを考えているのか。言葉はわかっても、頭の中まではわからない。


 しばらく、ドラゴンは黙っていたけど……


『フム、クロガネ、カ』


 その名前を、自分の口でつぶやいた。


「うん。いや、かな」


『……フフ、ハハハハ! クロガネ、ソウカクロガネカ! 良イ、気ニ入ッタ!』


 やがて、大きな口を開けて、豪快に笑い出した。それはとても、愉快そうだ。

 ただ、言葉がわからない人にとっては、これもかなり怖いのだろう。


 ルリーちゃんもラッへも、震えてるし。


「ど、どうしたおい」


「クロガネ、気に入ってくれたみたい!」


「紛らわしいな!」


 私の付けた名前を、気に入ってくれた……なんだろう、なんだか胸のあたりがじんわりとするよ。

 私も、名前を喜んでもらえて、嬉しい。


「ったく……なら、お互いの名前を呼べ。そして、契約することを誓え。

 それで、契約は成される」


 名前……それは、とても重要なもの。

 私たちを繋ぐ、大切な言葉。それを、お互いの口から、相手に伝える。


 それが、私が今後共に道を歩むあなたの、名前なのだと。

 お互いに、通じ合う……私の情報がドラゴンに流れ、ドラゴンの情報が私に流れてくる。


 言うべき言葉は、自然と口から流れ出てくる。


『ワレガ仕エシ人間、エラン・フィールド。ワレハ……』


「私と共に歩んでくれる黒竜、クロガネ。私は……」


「『あなた(汝)を我がパートナーとして、契約を結ぶことをここに誓う』」


 ……いっそうに輝く、青白い光が……私とクロガネを、包みこんだ。

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