354話 その大陸の名は
……ベルザ王国。そこで行われた、魔導大会。
魔導士も、そうじゃない人も。国内の人はもちろん、国外からも人が集まり、一番強い人を決める大会。
AブロックからEブロックに分かれて、各ブロックから勝ち残った一人が、決勝で競い合う。
私、エラン・フィールドは、友達や学校の知り合いを含めてその大会に参加した。
白熱した大会で、勝ち残った人、負けてしまった人……もちろん、いろんな人がいた。
私はなんとか勝ち残り、決勝へ。
そこで、各ブロックの勝者や、前回の大会優勝者を交え、魔導大会決勝を戦っていたのだけど……
「……魔大陸……?」
今私は、大会の会場どころか、ベルザ王国にもいない。
周囲を見渡しても、岩以外なにもない平野。空は紫色で、それだけで異質な空間だと感じさせる。
大会の最中、大会に乱入してきた人たちの手によって、私たちはどこかへ転移されてしまった。
その、転移先……ここは、どこなのか。
それが、魔大陸という場所らしい。
聞いたことのない大陸名。まあ大陸の名前なんてよく知らないけど……
少なくとも、ベルザ王国がある大陸ではなさそうだ。
「あぁ。大陸の、どこかまではわかんねえがな。少なくとも、さっきまでいた国の遥か遠くなのは確かだ」
そう、答えてくれるのは、エルフであるラッへ。
金色の髪、白い肌、緑色の瞳、尖った耳……とても美しい容姿で、さすがは森の妖精と言われるだけある。
だけど、不思議なことに、私と顔立ちがそっくりなのだ。
エルフである特徴……それが、いやそれだけが、私との違い。
大会ではフードを被ってたけど、今は素顔をさらしている。
彼女はなんでか、私に強い敵意を持っていた。
「はぁーあ。本当なら、寝ている間にてめえを殺したかったんだがな」
「ちょ……物騒だなぁ」
「はっ。そのダークエルフに邪魔されて、やむなしだ」
ちっ、と舌打ちをして、ラッへは顔を背ける。
そのダークエルフ、と指すのは、ルリーちゃんのこと。銀色の髪、褐色の肌はエルフと対照的な。そして緑色の瞳、尖った耳はエルフと同じ、特徴を持っている。
大会に乱入してきた人たちは、なぜかラッへとルリーちゃんを狙っていた。というかエルフを。
その中の一人が、ルリーちゃんに"転移能力"のある魔石を投げ……彼女は、転移に巻き込まれた。
ルリーちゃんを助けるため、私は飛び込み転移に巻き込まれた。ラッへは、私を掴んで自発的に巻き込まれたみたいだ。
「……ルリーちゃんを殺してでも、私を殺そうとは思わなかったの?」
ラッへは、私を狙っている。転移の影響で気を失っていた私を殺すのは、簡単だろう。
でもそれを、ルリーちゃんが止めてくれた。
ただ、止められたくらいで、こいつが止まるタマだろうか。ルリーちゃんにはごめんだけど、ラッへの実力ならルリーちゃんくらい敵でもないだろうに。
「……あんとき、そいつが出てきたのは、私を助けようとしたからだ。そいつを殺すほど、私は恩知らずじゃねえよ」
「……へぇ」
一瞬、ルリーちゃんを見たラッへは、再び顔をそらす。
ラッへなりに、恩義を感じているのか。ていうか、そういう理由でルリーちゃん、来ちゃったのか。
乱入者たちがラッへを追い詰めていたとき、結界の穴からルリーちゃんが入ってきた。
あのときは、なんで来ちゃったんだと思ってたんだけど……
「同じエルフ族を助けるため、か。ルリーちゃんらしいや」
「えへへ……まあ、エルフの方は、ダークエルフなんかに助けられても、嬉しくもなんともないと思いますけど」
「…………」
エルフ族は、ただでさえ数が少ない。その理由は、まさしくあの乱入者たちにある。
あちこちで、エルフ族を殺しているからだ。エルフも、ダークエルフも、関係なく。
だから、エルフ族仲間というのは貴重なのだ。
エルフとダークエルフは、そう区分されてはいるけど、同じエルフ族であることに違いはないし。
私としても、そういう理由ならルリーちゃんに「どうして来たの!」なんて、言えないや。
「それにしても、魔大陸なんて聞いたことないけど、どんな場所なんだろう」
改めて、周りを見る。なんとも殺風景な場所だ。
それに、なんか出てきそうな不気味さもある。
「決まってんだろ、魔族の住んでいる大陸だ」
「へ」
またも、私の疑問に答えてくれるラッへ。
私を殺したいとか言っておいて、結構親切だよなぁ。
ただ、言葉の意味があんまり、わからない。
「魔族って、滅んだんじゃないの?」
「ま、そういう話もあるがな。だが実際には、魔族は滅んじゃいない。
奴らは滅びかけた。が、少ない数で結託し、遠く離れた地で繁栄していった」
「じゃあ、ここがその、遠く離れた地、というわけですか」
ラッへの説明が正しいなら、ここは魔族が住んでいる土地、ってことだ。
なんか誰かが、魔族とか他の種族は滅んだとかなんとか言っていたような、気がしたんだけど……
誰だっけ……あ、そうだ、先生が言ってたんだ。
『かつてこの世界の始まりの四種族と言われる、"竜族"、"魔族"、"命族"、"鬼族"から取られたものだ。
彼らは、今やその姿を見せていない……どこかに隠れて暮らしているのか、種族ごと絶滅してしまったのか』
そうだそうだ、確か第41部分で、クラス名の由来を説明するときに、そんなこと言ってたよ。
滅んでなかった、滅んだかもしれない、だ。
……その、始まりの四種族のうちの一つ、魔族。その種族が住む土地がこの、魔大陸。
え、じゃあなんで私たち、こんなところに飛ばされたの?




