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【一年生編完】史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます  作者: 白い彗星
第五章 魔導大会編

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349話 刻み込まれたもの



「うわあぁあああ!」


「なにこれぇええ!」


「魔獣!? 来るなぁああ!」


 ……魔獣が暴れ、会場中が混乱に陥り、阿鼻叫喚の嵐が周囲を包んでいる。

 その中……一部割れてはいるが、何者も寄せ付けず抜け出せない、結界の中。


 そこで、周囲の光景に似つかわしくない声が、響いていた。


「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」


 いや、もしかしたらそれは、この光景にこそふさわしいのかもしれない。

 これほどまでに邪悪な、純粋なまでに邪悪な笑いは、他にはない。


 目の前で繰り広げられる光景に、エレガは大口を開け、腹を抱え、笑っている。

 ジェラもまた、笑いを堪えきれずに、くすくすと笑っている。


「な、にが……おか、しいの?」


 この状況で、なにをそんなに笑えることがあるのか。なにをそんなに、楽しそうにできるのか。

 エランは、怒りよりも困惑を、感じていた。


 クレアが殺され、ルリーが魔術を持って生き返らせた。その過程でルリーの正体がダークエルフだとバレ、クレアはこれまでにないほどの感情を見せている。

 それは、怯え? 怒り? 悲しみ?

 いったいなんなのか、わからない。


 それでも、これが笑える状況でないことは、確かだ。

 だというのに……


「っ、ぷっ、はははは……っ、ひ、ひーっ、こ、これが笑わずに、いられるか……あははは!!」


「本当に、無知は罪よね、くふふふ!」


 エランたちの、仲間割れとも言える場面。それを見て、エレガとジェラは笑った。

 そして、エランを無知だと、そう言った。


 無知、無知……ダークエルフが、人々にとってどういう存在か。それを正確に、わかっていないということか?

 それとも……


生ける屍(リビングデッド)


 ポツリと、エレガが言った。


「そのガキ……クレア、つったか。そいつの今の状態だ」


「……は?」


「一度死んでるんだ、そいつは。で、闇の魔術で蘇生した……そいつは、生者じゃない。かといって、死者でもない。

 ゆえに、生ける屍(リビングデッド)


 ざわっ……と、エランの背筋を、悪寒が走る。

 クレアは死んでしまったが、今一度生き返った……それを喜んだが、実はそれにどれだけの意味があったのか、エランは深く考えなかった。

 きっと、ルリーも。


 友達が目の前で殺されて、だから希望にすがった。ただそれだけのことだった。

 だが……


「ぁ……ぅ、おぇえ……!」


「クレアちゃん……」


 その場に、胃の中をぶちまけるクレアを見て……エランは、事の重大さに気づいた。


 ノマのときとは違う。ノマは一度、死の淵を彷徨った……だが、死んでしまったわけではない。

 生と死の狭間で、魔石の魔力と適合し、意識を取り戻した。なにも生き返ったわけではない。


 だが、クレアは……一度死に、そして生き返った。

 それは、生者でも死者でもなく……ひどく、曖昧な存在。


 まさに、生ける屍だ。


「それに、だ。そいつは生者でも死者でもない上に……そいつは、本当に以前のクレアなのか?」


「どう、いう……」


「一度死んだ人間が、生き返った。それは事実だろうが……問題は、そいつの中身だ。本当に、以前のままなのか、それともガワだけ取り繕った偽物なのか……

 それは、本人が一番、思い知らされるだろうなぁ。それも知らずに、必死に生き返らせやがって……ぷっくく……」


「なんで、邪魔しないのか不思議そうだったね? 邪魔する必要すら、なかったからよ」


 クレアの、絶望に染まった表情……それを見た、エランとルリーの表情。

 それを想像するだけで、笑いが止まらなかった。今もこうして、込み上げてくる笑いを耐えるのに、必死だ。


 それに、だ。


「お前、ダークエルフでも友達だ、とかなんとか言ってたが……そういう問題じゃないんだよ」


 エランの先ほどの言葉……それに対しても、笑いが込み上げてくる。

 ダークエルフを拒絶するクレアに対し、エランは、言った。友達として、仲良くしてきたではないかと。


 だが……違うのだ。そういう問題では、ないのだ。


「そいつらは、ダークエルフに対する恐怖、(おそ)れ……そういった感情を、刻み込まれているのさ」


「刻む、って……どこに……」


(ここ)に、本能(ここ)に、(ここ)に……ダークエルフを恐れろと、嫌えと、憎めと……!

 それが、今を生きる人間に刻み込まれた、性みたいなものだ!」


 ……正直な話、エレガの話を、エランはこれっぽっちも理解できない。

 刻み込まれている? 頭に? 本能に? 魂に? スケールが大きすぎて、理解が追いつかない。

 だいたい、そんなこと、あるもんか。


 ……だが、怯え震えているクレアを見ていると、その話はあながち間違いではないのでは……そう、感じてしまう。


「誰が、そんな……っ、刻み込まれたってことは、誰かがそう仕組んだってことでしょ! 誰が……」


「おいおい、聞けば全部答えてくれると思ってんのか? そこまで優しくねえぞ俺は。

 それに、いいのか俺とばかり話してて。お友達のクレアちゃん、今にもどうにかなっちまいそうだぜ?」


 刻み込まれた恐怖……それが本当だとしたら、クレアの怯えようはうなずける。膝をつき、頭を抱え、涙を流している

 思ってはいたのだ。ダークエルフは嫌われているとはいえ、それは遠い過去のこと。今も、果たして負の感情が渦巻いているのか、と。


 その答えが、これだ。刻み込まれた恐怖……加えて、生ける屍(リビングデッド)という現実が、クレアを押しつぶそうとしている。


「クレアちゃん、しっかり!」


 エランは、クレアに駆け寄り背中を擦る。その間、ルリーはただおろおろするのみ。

 その様子を、楽しそうに見ているエレガとジェラ……だったが……


「だ、ダークエルフ……っ、いや、あぁああ……!」


「そんなに嫌なら……そのダークエルフ、"消して"やるよ」


 漆黒の瞳が、ルリーを捉えていた。

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