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【一年生編完】史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます  作者: 白い彗星
第五章 魔導大会編

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347話 死者を生き返らせる魔術、そして……



 クレアの死……それは、エランたちの心を大きくかき乱した。

 それでも、自分にできることをするため……ルリーは、一つの魔術を使うことを、決意する。


 それは、ダークエルフにしか使うことのできない、闇の属性魔術。その中に、死者を生き返らせることのできる魔術が、ある。

 回復魔術では、人の怪我までしか治せない。失ったものを生やすなんてこともできない。当然、人の死を覆すことはできない。

 しかし、この魔術なら、死した人間をも生き返らせることが可能だ。


 無論、いくつか条件はある。たとえば、生き返らせたい者の死体が残っていること。たとえば、死んで一定以上の時間が経っていないこと。

 でなければ、とっくに、ルリーは兄たちを生き返らせている。結果的に、兄ルランは生きているが。


「はぁ……ふぅ……」


 ルリーは深呼吸を繰り返し、エランはルリーを守るように、周囲を警戒する。

 エランも聞いたことのない魔術……とはいえ、魔術は魔術だ。その使用に、精神力、集中力を必要とするのは、想像だに難くない。


 だから、誰もルリーに近づけない。これが、エランの役目だ。

 魔術ウプシロンも、ウプシロンが生み出す小型の魔獣も、こんな事態を引き起こしたエレガとジェラも……


「……?」


 しかしエランは、眉をひそめる。先ほどから、エレガとジェラは動く気配がない。

 クレアを刺し、命を奪ったジェラ。混乱するエランに追撃するかと思いきや、おとなしくしている。


 彼らは、エランに選択肢を与えた。エルフを差し出すか、抵抗するか。その答えを待っているのか?

 いや、こうして律儀に待つ必要など、どこにもない。


 周囲では、阿鼻叫喚の嵐だ。この場は、結界で守られているため干渉不可。

 正確には、エレガがぶち割った部分のみ、結界の穴が開いている。あそこからなら人の出入りが可能なため、あそこに注意しておけば、敵の増援はない。


 もっとも、あの穴は小型魔獣の通路となってしまっており、敵どころか味方の増援も期待できない。

 それどころか、小型魔獣が外に出るせいで、被害は拡大する一方だ。


「……いや、今はそんなこと……」


 どうでもいい。ただ、クレアを助ける……そのために、ルリーの邪魔をさせないことだ。

 後ろでは、魔力の高ぶりを感じる。ルリーが、魔術を使い始めたためだ。


 ぞわぞわ、と、なんだか妙なざわつきがある。


「死者の魂よ、黄泉の国より戻り、今一度生者としてこの世によみがえれ。

 死者蘇生(リバイブ)


 魔術詠唱が紡がれ、魔力が活性化する。

 その間も、目の前で特に動きは、ない。


「……なにも、してこないの?」


 後ろにいるルリー、そして周囲を警戒しつつ、一番警戒しなければならないエレガとジェラに、問いかける。

 もちろん、なにかしてほしいわけではない。が、なにもしないならしないでそれは不気味なのだ。


「別に、好きにすればいいんじゃねぇか」


 エレガは、いやらしい笑みを浮かべていた。


「お前こそ、あいつらの加勢に行かなくていいのか? 強いぜ、ウプシロン」


 と、エレガが指すのは白き魔獣、ウプシロン。それと対峙するフェルニンたち。

 ウプシロン本体の強さもあるが、あれから生み出される小型の魔獣が、厄介さを際立てている。


 本当なら、エランも加勢に向かったほうがいいのだろうが……


「お前たちを放って、ここを離れることはできない」


 今なにもしていなくても、エランが離れた瞬間……というのは、おおいにあり得る。

 ここに留まり続けることが、エレガたちへの敬遠にもなるはずだ。


 それに、あの三人ならば大丈夫だ。大会での戦いを見る限り、魔獣にやられるようなタマではない。


「クレアさん……お願い……!」


 ポツリと、ルリーの声が聞こえた。ルリーもまた、クレアを助けたいと一心に思っている。

 感じる魔力は、これまでに感じたことのない、異質なものだ。そして、学園で魔獣が現れたときにルリーが使ったのと、同じ感覚。


 それは、他の者も感じ取っているだろう。

 一秒一秒が、緊張の時間。流れる汗を拭うこともなく、頬を伝い地面に落ちる。


 数秒か、それとも数分か、はたまたそれ以上か。時間は流れる。

 その間も、周囲の騒ぎは聞こえていた。しかし、エランもエレガもジェラも、一言も喋らなかった。


「……けほっ」


「!」


 ……声が、聞こえた。小さく、咳き込む声。

 聞き馴染みのある、そして聞きたくてたまらなかった、声。たまらず振り返る。


 うつ伏せに倒れているクレアは、頭をルリーの膝に乗せられている。

 その口元が……わずかに動いている。胸が、確かに上下して動いている。


 エランは、周囲への警戒も忘れ、駆け寄ろうとした。


「ピギュアアァアァァ!」


「!」


 瞬間、ウプシロンの耳をつんざくほどの咆哮。そして、突風。

 巨大な羽で羽ばたき、その羽根が小型の魔獣へと姿を変える。


 吹き荒れる突風に、エランは吹き飛ばされないよう、しっかりと踏みとどまる。


「……ん、ぁ……?」


「! 気が付きました!?」


「その、声……ルリー、ちゃん……?」


 その間に……閉じられていたクレアのまぶたが、ゆっくりと開いた。

 それは、生きている……生き返ったという証拠だ。指先が、胸元が、体が動いている。


 死者を生き返らせる魔術。初めて聞いた魔術だったが、それは成功した。

 喜びに震えるエラン、ほっと胸を撫で下ろすルリー、そのルリーの膝に頭を寝かせられているクレア。


 本当に、よかった。安堵し、そして嬉しさが込み上げてくる。その感情を表すかのように、ルリーの耳が、ピクピクと動いている。


 ……露わになった耳が、動いている。


「ぁ……」


 遅れて、エランは気づく。おそらく先ほどのウプシロンの突風で、フードが脱げてしまった。

 魔術に精神力をすり減らしたルリーは、それにすら気づかないほど疲弊していた。


 つまり、今……クレアが目を開けた先には、ルリーの素顔が晒されている。

 今まで、クレアには内緒にしてきた……ルリーが、ダークエルフという事実。その事実に、彼女はなにを思うだろう。


 驚くのか……いや、きっと驚くだろう。でも、きっとそのあと、受け入れてくれるだろう。

 なにせ、クレアとルリーはいつも仲良しで。確かにダークエルフたろうが、それよりも二人の友情は遥かに固い。


 クレアは、ゆっくりと目を開き……ついに、まぶたを完全に開いて、目の前の人物を確認する。声の主、ルリーの素顔を、視界に収める。

 そこにあったのは、今までフードに隠れていた姿……褐色の肌、銀色の髪、緑色の瞳、とがった耳。


 その特徴は、間違いなくダークエルフだ。

 その姿を目にしたクレアは、口を開き、目を開き、固まっている。エランの予想通りだ……だが、そのあとに続くであろう言葉は、きっと優しいもののはずで……






「い、いやぁああああああああああああ!!! いや、うそ……だ、ダーク……ダークエル……っ、いや、ぁ、ああああぁあああぁあああぁああああああ!!!!! だっ、あ、やっ……た、助け……ひ、ぃいいい!?」






 …………その声は、表情は……エランの予想していたものとは、まったく異なる反応であった。

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