336話 始まる決勝戦!
「皆さん、お待たせしました。ただいまより、決勝となります」
モニターから聞こえた声……いや、会場中に響き渡る言葉に、いち早く反応するのはカタリナだ。
彼女は、姿勢を正し、部屋の中にいる選手たちを見回す。
さらに、警備の人間も動きを見せ、選手たちに入場の段取りを教える。段取りと言っても、呼ばれた順に部屋を出ていくだけだが。
『百名に渡る各ブロックの戦いを勝ち抜いた選手たち! 今より、入場していただきます!
まずはAブロック勝者、戦いを危なげなく勝ち抜いた、魔導士冒険者であるフェルニン選手ー!』
「じゃあ、行ってくる。後で」
やはり、呼ばれるのはAブロックから順番にらしい。
一足先に呼ばれたフェルニンは、エランに一言告げてから、警備に案内されて部屋を出る。
少しして、会場が湧く。モニターを見ると、フェルニンが入場したことがわかる。
先ほどとは、熱量が違う。やはり、決勝だからか。
『続きまして、Bブロック勝者……といきたいところですが、今回はBブロックの勝者はいないため、続いてCブロックへと移ります!』
歴史ある魔導大会でも、各ブロックで勝者が出ない、なんてことはまれだ。
『Cブロック勝者は! 魔導を一切使わない武闘家! 有名貴族アレクシャン家長男、ブルドーラ・アレクシャン選手ー!』
「けへへ……」
名前を呼ばれる前から、歩き出していたブルドーラ・アレクシャンは、不気味に笑いながら部屋を後にする。
とても、あの筋肉男の兄とは思えない……と、エランは思った。
しかし、見た目と中身と戦闘能力とは、別だ。彼はその肉体のみで、魔法や魔術までもを跳ね返してきた。
その力、油断ならないものがある。
……さて、フェルニンとブルドーラ・アレクシャンがいなくなったことで、部屋に残った選手はエランとラッへのみだ。
部屋にはカタリナなど残っているため、二人きりではないが……
「……」
やはり、視線を感じる。早く呼ばれてくれ、とエランは思っていた。
『続きまして、本大会のダークホースとも言えるでしょう! 魔導学園新入生にして、他選手を寄せ付けないパフォーマンスを見せてくれました!
Dブロック勝者、エラン・フィールド選手ー!』
「よしっ」
名前を呼ばれ、エランは軽くため息を漏らす。緊張している、のだろうか。
頬を両手で叩き、気合いは充分。
カタリナから手を振られ、自らも振り返して……部屋を出る。
舞台へと繋がる廊下を一歩一歩と踏みしめて……光の先に、出た。
その瞬間、割れんばかりの歓声が、エランを包み込む。
「わ……」
観客のボルテージも、最高潮だ。先ほど見ていた、各ブロックのすさまじい戦い。そこを勝ち残った、ただ一人の選手。
それらが、この決勝で戦う。
戦う本人たちはもちろん、見ている側も、手に汗握る展開となっていた。
『最後に、突如現れた謎の人物! 姿も性別すらも不明なその人物は、すさまじい力を見せてくれました! その力は決勝でも見られるのでしょうか!
Eブロック勝者、ラッへ選手ー!』
最後に入場してくる……身を隠した人物、ラッへ。
彼女の状態がエルフであることは、この場の誰も知らない。唯一その素顔を見たノマは今、治療室からモニター越しに決勝を見ていた。
しかしエランは……ラッへに、なにか並々ならぬ気配を感じていた。
それは、自分に対する敵意のようなものであり……また、どこか懐かしいような気持ちでもあり……
『出揃いました、各ブロックの勝者たち! 今から彼らには、四人でのバトルロイヤルを行ってもらいます!
……しかし、実はもう一人、ここに加わって、五人での決勝を行ってもらうことになっております!
加わるのは、魔導大会前回優勝者であるこの男! アルマドロン・ファニギース!』
「待たせたな野郎どもー!」
司会の紹介に、最高潮だと思われていた会場の熱気がさらに熱くなる。
聞いていたとおり、出てきたのは前回の優勝者……そして思っていたとおり、エランの知らない人物だ。
見た感じは、むさいおっさんといった感じだ。どこからともなく、空から現れ豪快に着地した。
「なるほど、これは手強いね……」
「ふっ……」
アルマドロン・ファニギースを知っているらしいフェルニンと、ブルドーラ・アレクシャンは、それぞれ反応を見せる。
フェルニンが手強いと言う辺り、本当に強いのだろう。
ラッへは、彼に対してのリアクションはなく……
「……めっちゃこっち見てる」
ずっと、エランを見ていた。
『さーて、これで本当に出揃いました!
前回大会優勝者、そして各ブロック決勝進出者! この五名によるバトルロイヤル! これは目が離せません!』
「ふふん、ミーに単身で挑むもよし、それとも協力して挑むかね?」
「さあ、どうしたものかな……」
「ふっ……」
「みんな強そー……わくわくしてきた」
「……」
五名が、一定の距離を保ち、円状に並んで待機する。
観客も、今か今かと待ちかねて……
『これより始まる決勝、私ももう待ちきれません!
なので、行っちゃいましょう! 決勝、これより開始します!』
先ほどまではあった、司会の身の上話もなく、決勝がスタートした。
そして、その瞬間……
「殺す……!」
「! ぅ、えぇ!?」
即座に飛びかかるラッへが、その先にいるエランに向かって、物騒な言葉を吐いた。




