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【一年生編完】史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます  作者: 白い彗星
第五章 魔導大会編

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328話 魔術纏いし魔剣



「せいやぁ!」


 飛び出したエランは、まずタメリアへと狙いを定めていた。

 下手な小細工はいらない、ただ一直線に走り、右拳を握りしめる。全身を魔力強化しているため、速さも力も上昇している。


 先ほどとは違い、エランをなんとか目で追えるタメリアであるが、それでも気を抜けば見失ってしまうだろう。

 エランが真っ向勝負を望むというのなら、受けて立とう。


「ありったけの魔力を込める!」


 タメリアは前面に、魔力防壁を張る。エランを止め、その間に魔術で応戦する考えだ。

 残っていた魔力を注ぎ込み、防壁を強化。魔術を撃つための僅かな力さえ残しておけばいい。


 展開した防壁は、魔法はもちろん、魔術だって受け止めることができる。本調子なら、魔術を防ぎ切ることだってできるだろう。

 ここに至るまで、たくさんの選手と戦いを重ねてきたからだ。


 だが本調子でないのは、エランも同じはずだ。イザリとの打ち合い、他の選手との戦闘、そして魔法の集中攻撃を受ける。

 回復魔術を使った様子もないし、元気に動いていても、もう限界が近いはずだ。


「さあ来い!」


「うりゃあ!」


 ……振り抜かれた拳は、タメリアへと向かって放たれる。そして、両者を隔てる魔力防壁へと、衝突する。

 思ったとおり、拳は防壁に止められ、エランの動きはそこで止まる。その間に魔術詠唱を開始し、大火力で一気に仕留める。


 ……それが、理想の姿だった。

 しかし、現実は、無情だ。



 ……パキッ



「……は?」


 拳が触れた瞬間……防壁から、パキッとひび割れる音がした。次に、見えない壁にひびが入る。

 いや、おい……これはどういうことだ。いくらエランが全身を魔力強化しているとはいえ、こんなことがあるのか?


 直後には、パリン、と防壁が砕け……勢いを殺さないまま、拳はタメリアの顔面に突き刺さる。


「ぶ……っ!」


「んー、りゃ!」


 強烈な一撃には似つかわしくない、気の抜けた声。拳を振り抜き、タメリアをふっ飛ばす。

 いくらこれまでの戦いで消耗していたとはいえ、こんなにもあっさりと、破られてしまうとは思っていなかった。タメリアは、受け身も取れずに地面へと転がった。


『な、なんと凄まじいパンチ! 怪力女との噂は、どうやら本当のようだぁ!』


「ったく、失礼しちゃうなぁ」


 一瞬の攻防、それを見ていたイザリは、息を呑む。


「んでも、ありゃー? 私こんなに力あったっけか……うーん、まあいっか。

 残ってるのは……ダルマスか」


「っ、勘弁してくれ」


 振り向くエランの表情には、笑みが浮かんでいた。

 ただでさえ、エランは規格外なのだ。それが、なんだかわからないがとんでもないことになっている。

 その事実に、イザリは腰を落として、構える。


 先ほどのような打ち合いをする暇すらなく、今のエランには殴り倒されてしまうだろう。

 ならば、一撃の下に、決めるしかない。


 エランの動きに注視しつつ、イザリは息を吐き、気を集中する。次の瞬間、彼の周囲の魔力が、高ぶる。


「おっ?」


「魔導剣士……この意味を、お前はどれだけ理解している?」


 魔力の変化に気づくエランだが、特に行動を起こすことはない。魔力の変化に、イザリが関係しているとわかって、イザリを妨害しない。

 それは、余裕から? それとも、なにが起こるのかの興味から?

 ……エランの真意は、後者だ。そして、もう一つ……


 もっと、愉しみたいから。

 だから、妨害に走らず、イザリの質問に応える。


「そうだなぁ……魔導を扱う剣士、だよね。魔導を使う剣士じゃなくて」


「そうだ。魔導を使うだけの剣士なら、そこらのチンピラでもできる。

 だが、魔導を扱うことのできる剣士は、そうはいない」


「魔導と剣両方を扱って、二つのいいところを組み合わせて……だもんね。私には剣はさっぱりだから、できそうにないや」


 この問答の意味は、なにか。イザリの時間稼ぎか、それとも別のなにかか。

 エランに、魔導剣士がなんたるかを教えているわけでは、ないだろう。


 高ぶる、周囲の魔力。そして、時間稼ぎと思われるイザリの態度……

 思い浮かぶのは……魔術だ。魔術も、詠唱を口にする際、時間稼ぎが必要となる。


 もしかしてイザリも、魔術を使えるようになったのだろうか。

 それにしては、構えたままの剣の意味がわからない。


「だが、ただ魔導を扱う剣士、と言っても、ピンとこないだろう。

 先ほど俺がお前に斬りかかったもの……あれは、要は剣技と魔法を組み合わせたものだ」


「ほうほう」


 イザリがなにを言いたいのか、だいたいわかってきた。エランは興味津々に、うなずく。

 先ほどの剣技、確か「炎牙(えんが)」だったはずだ。あれが、剣技と魔法を組み合わせたもの。


 エランはかわすことができたが、威力は相当なのだとわかる。あれが、魔法か……

 と、いうことはだ。


「魔法があるなら、魔術もある……道理だと思わないか?」


「! そうだね」


 イザリの言葉に、エランは身震いをする。

 今からイザリが出そうとしているのは、単なる魔術ではない。それよりももっと、複雑で、見たことのないものだ。


 魔導剣士というもの自体、エランは学園に入学してから初めて知った。あのときは、まだ魔力の使い方も未熟だったイザリ。

 しかし、あれから訓練を重ねて……着実に、成長した。


「剣技と魔術を組み合わせて、使いこなせて、真に魔導剣士と呼ばれるにふさわしいものとなる」


「へぇえ。いつの間に、そんな……」


「試すのは、今回が初めてだ」


 ウズウズする体を抑えるのに、エランは必死だった。対してイザリは、集中力を高めていく。

 これまで、剣技と魔術を組み合わせた技の、練習はしてきた。だが、成功した試しなんかない。


 そもそもイザリは、魔術自体使えないのだ。だというのに、魔術のさらに先にある高等技術を身につけようなど、簡単なことではない。


 ……だが……


「お前だって、あの二重詠唱はぶっつけだったんだろう? その場で考えて、やって、成功した。

 俺も、同じことをするだけだ」


「きっひひ、いい、いいね! 魔力が高ぶってるよ、すごいよこれ!」


 これまでの訓練は、努力は、決して無駄になりはしない。いや、無駄にはしない。

 兆候は、あった。少し前から、精霊というやつを感じ取れるようになっていた。ただ、それから心を通わすのに、だいぶ苦労したが。


 魔術には、火、水、土、風……四つの属性がある。エランは複数の魔術を使ったり、あろうことか二つの属性を組み合わせた複合魔術なんて使っていたが……

 彼女はまあ、例外だ。


 一つの属性、一つの魔術を使うだけでも、常人には遥かな努力と、魔力を感じ取る力と、そして少しの運が必要だ。

 精霊の力を借り、魔術を使う……精霊と心を通わすことができなければ、魔術は使えない。人は精霊と心を通わせ、また精霊は人を選ぶ。


 イザリが心を通わせた精霊は、火の属性を持つ。イザリの持つ剣に纏うように、魔力が炎のように燃え上がる。


「ふぅ……行くぞ」


「うん、見せてよっ」


 一呼吸を置き、イザリは細く、目を開く。

 魔導剣士……彼らが扱うそれを、魔導剣と呼ぶ。さらに、魔導剣が魔術を纏いその力を発揮するとき、それは『魔剣』と呼ばれるものへと昇華する。


「魔剣……火の型……!

 炎天狼牙(えんてんろうが)!!!」


 火の属性魔術を纏い、赤く染まる刀身……燃え上がる魔力を一気に放出させ、イザリはエランへと真っ向斬りかかる。

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