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【一年生編完】史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます  作者: 白い彗星
第五章 魔導大会編

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312話 魔力上昇のカラクリ



「せい!」


「っ!」


 振るわれた刃を、ゴルドーラは杖で受け止める。その杖には、ゴルドーラの魔力が纏っている。


 魔導の杖に、魔力を纏わせ剣のように振るう。これも魔力強化の一種で、これはほとんど誰もが使う方法だ。

 身に持っている魔力を、意識して体に流すか杖に流すか……それだけの違いだ。

 極論を言えば、棒状のものであれば杖でなくとも、魔力を流し込めば剣のように振る舞うことはできる。要は魔力の質の問題だ。


 しかし、その身に纏う魔力を一つに収束させ、それを剣のようにするなど……よほどに膨大な魔力がなければ、できる話ではない。

 魔力で剣のように強化したのではない。魔力そのものが剣となったのだ。


「なるほど、すさまじい魔力だ」


「お褒めの言葉どうも!」


 他の参加者の相手はサラマンドラに任せ、ゴルドーラはヨルに向き合う。

 百一名が入り乱れていた乱戦は、すでにほぼこの二人の戦いへと変化していた。


 ヨルは自ら積極的に踏み出し、ゴルドーラに反撃の隙を与えまいと猛攻を繰り出す。

 なるほど剣の形を模した魔力を使うだけあって、ただ闇雲に振り回しているだけではないらしい。


 それでも、ゴルドーラにとってはまだ余裕がある。


「爆ぜろ!」


「!」


 しかし、それも束の間。

 斬りかかると見せかけたヨルは、魔力を手放す。直後、魔力が大きく膨れ上がった。


 剣の形をした魔力は、二人の間で宙に浮き……落下すると同時、大きく膨れ上がる。同時にヨルは後ろへと飛び退いた。

 それがなにを意味するか、ゴルドーラにも理解できたが……出遅れた。



 ドッ……



 爆ぜろ……その言葉の通りに、魔力は膨らみ、爆発した。

 先ほどのゴルドーラの魔術のような規模ではさすがにないが、近くにいれば大怪我は免れないだろう威力。


 結界内では、一定以上のダメージ……例えば死に直結するようなダメージは、無効化される。代わりに、疲労などといったものは無効化されずそのままだ。

 一定以上のダメージは無効化……それは逆に言えば、一定以下のダメージは無効化されないということ。


「くっ……」


 ゴルドーラは後ろへと飛び退くが、激痛にたまらず声を漏らした。

 とっさに、右腕を前に出し、体を庇った。結果として、顔や体は軽症で済んだが……


 右腕は、もろに魔力爆発を受けてしまった。


「悪いね騙し討ちみたいなやり方で!」


 追撃するヨルは、今度は両手にそれぞれ剣の形を模した魔力を持つ。対するゴルドーラは、ただでさえ魔力を纏わせられる武器は杖しかないのに、使えるのは左腕のみだ。


 だが、それを悲観するつもりはない。

 杖のみで、振るわれる二刀を弾いていく。


「おおっ、やるぅ!

 悪いとは言ったけど、俺別に剣士じゃないから、恨み言は受け付けないよ!」


「問題はない。卑怯だなんだと言うつもりもないしな」


 先ほどのヨルの動き……それはゴルドーラにとって、まさに虚を突かれた一撃だ。

 剣の形を模した魔力……それを振るっていることで、相手は剣撃による接近戦を挑んできたのだと思い込んだ。


 しかし、剣撃を繰り出すのは囮……本命は、ゴルドーラの意識が剣撃に向いたところで、至近距離から魔力爆発をくらわせること。

 まさか、自ら得物を剣から爆弾に変更させるなど、思いもしなかった。


 そもそも、ヨルの使っている得物が剣ではなく"魔力"だった時点で、警戒しておくべきだったのだ。

 剣の形を模しても、魔力は魔力……形を変えることもできるし、爆ぜさせ爆発させることもできる。


「よっ、ほっ! はは、うまく捌くなぁ!」


「お前は剣士ではないからな。太刀筋などはないが、見極めきれんことはない」


「なぁる。

 使い魔を呼んでもいいんだぜ?」


「そうしたいところだがな……」


 攻防もそこそこに、ゴルドーラはチラリと使い魔……サラマンドラの方を見る。

 そこには、数人がかりで挑んでいる参加者の姿。


 サラマンドラは他の参加者に止められている。さすが、大会に参加している者たち……誰もがあっさりやられてしまうわけではないようだ。

 これでは、サラマンドラが他の参加者を倒しているのか、他の参加者にサラマンドラが足止めされているのか、わからない。


 図らずも、ゴルドーラとヨルの一騎打ちのような構図になってしまっている。

 ……しかし……


「……?」


 ふと、違和感に気づく。

 剣と剣……正しくは中身は違えど互いに剣の形を模した魔力であるが……それが打ち合う度に、違和感を感じた。

 そして、その違和感はどんどん大きくなる。


 打ち合うヨルの力が……魔力が、上がっている。そう理解した瞬間、ヨルは自分の魔力の量を確認する。

 相手の魔力が上昇する……これに対して考えられるのは、打ち合う相手、つまりゴルドーラから魔力を吸い取っているパターン。


 そういった手合いは、いると聞く。

 それについ最近、エランとの決闘で、魔力を吸収する魔導具と対峙したばかりだ。もっとも、あれは刀身となる部分に魔力を吸収させるため、ある程度接近しなければならない。


 対象の魔力に近いと、魔力を吸収できる……

 ゆえに、ゴルドーラは自身の魔力を吸い取られていないか、疑念を持ったのだが……


「……変わりはない、か」


 今のところ、体に変化はない。

 だが、ヨルの魔力は確実に増している。


 ならば、他に考えられるのは……


「お前は……周囲の人間の魔力を、吸収しているのか?」


「! へぇ、もう気づいたんだ」


 ガギンッ、と、互いの魔力がぶつかり合う。

 ゴルドーラとヨルとでは手数が違う。しかしゴルドーラは、押されはしない。


「さっすが……けど、いつまで持つかな」


「……っ」


 徐々に、ゴルドーラの体が押され始める。こうしている間にも、ヨルの魔力は上昇している。

 ゴルドーラ自身の魔力は減っていない。逆に、ヨルの魔力は上昇する。


 触れているゴルドーラから魔力を吸収するならまだわかるが、ヨルは、触れてもいない周囲の人間から魔力を吸収しているというのだ。


「俺には、他人の魔力を吸収する力がある。自前の魔力に加えて、他人の魔力も合わされば……無限に力が上がるってことだ!」


「……触れずに、他人の魔力を吸い取るか。なるほど、気絶はしていても魔力までなくなるわけではない……お前は百名近い参加者の魔力を、吸い取っているわけだ。

 だが、なぜそれを俺にしない?」


「誰でも無条件に、ってわけじゃないんでね!」


 ゴルドーラは、後ろに吹き飛ばされる……いや、自ら後ろに飛び、距離を取ったのだ。

 ヨルの魔力が上昇しているカラクリはわかった。その全てを明かすつもりがないことも。


 そして、このままではヨルの魔力は上昇し続ける。

 さすがに、本人の言うように無限に、とは思いたくはないが。エランの使っていた魔導具だって、吸収限界があった。


 だが、エランは魔導具の吸収限界を知らないようだし……今回の場合、ヨルは自分の体のことを把握していないとは考えにくい。

 吸収限界には期待しない方がいいだろう。


「厄介だな……」


 エランと同じ、黒髪黒目の人物……しかし、エランとはまた別の意味で厄介だと、ゴルドーラは自らの唇を舌で舐めた。

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