294話 優雅にティータイムを楽しむ
魔導大会への準備は着々と、行われていた。
といっても、私は生徒会で指示された仕事をこなすだけで、正直なにしてるのかはよくわかってないんだけどね。
日々生徒会の仕事、ダルマスの訓練、そして私自身の訓練……いやぁ、毎日忙しいよ。
もちろん、学園の授業もしっかりやる。たとえ自分が知っていることであっても、基礎を復習するのは大切なことだからね。
そんな日々の中、今日は……
「うーん、おいしい」
「ふふ、よかったですわ」
手に持ったカップ、それに注がれた紅茶の香りを味わい、カップに口づけて一口飲む。喉を潤す紅茶の味は、生徒会で味わうのとはまた別の味。
逆の手でお茶菓子を摘み、優雅にティータイムを楽しむ。
今日はお茶会をしている。初めてお茶会に誘われたあの日以来、定期的にお茶会は開かれている。
メンバーは、だいたいがカリーナちゃんが率先して集めている。ロリアちゃんとユージアちゃんとは、仲良し三人組だ。
そこに、私とクレアちゃんが加わったのが今日のメンバー。日によってはもっと多かったり、逆に少なかったりもするけど。
「それにしても、よかったんですか? なにか用事とか……」
「あったら断ってるよ、残念だけど」
むしろ、誘ってくれてありがたい。私の中の優先度はお茶会は上位に位置しているけど、さすがに生徒会の用事をすっぽかしてってことはできないし。
今日はダルマスとの訓練も休みだし、ちょうどよかった。
「ですが最近、エランさんは魔導大会に向けてご自分のことも忙しいでしょう。誘っておいてなんですが、本当に……」
「いーのいーの。ていうか、根を詰めすぎても疲れちゃうだけだから。少しくらいは息抜きしないと」
確かに、魔導の訓練や、それ以外でも極めるにはいくら時間があっても足りない。でも、ただがむしゃらにやればいいというわけではない。
訓練も大切だけど、休息も大切だ。それは、師匠も言っていたこと。
だからこうした、優雅なティータイムは願ってもない。
「ふふ、そうそう……ねー」
「エランちゃん……たまに、謎の独り言多いわよね。
あ、精霊と話してるんだっけ」
「うん、そだよー」
こうしたのどかな時間は、精霊さんも大好きだ。なので、周りに寄ってきたりする。そうした子たちとおしゃべりするのも、また楽しい。
ただ、精霊さんの気配を感じれない人やしゃべれない人は、私が独り言を言っているようにしか見えないみたいだ。私が痛い子に見えているかもしれない、ってこと!?
みんなかわいいのに、友達と共有できないのは少し寂しかったりする。
「精霊……いいなぁ、私もお話したいです」
「お、ユージアちゃんは精霊さんに興味あり?」
「はい!」
考えてみれば、同じクラスで精霊さんとおしゃべりできる子はいないなぁ。まあ、精霊さんも私がクラスメイトと居る時はあんまり話しかけてこないんだけど。
だから、実はクラスで精霊さんの話をしたことは、あんまりない。
大抵は、みんな魔術の話になっちゃうもんなぁ。精霊さんいてこその魔術なのに。
「ふむ……魔導大会、案外エランさんはいいところまで行くかもしれませんね」
「どうしたの急に」
それまで黙って話を聞いていたロリアちゃんが、口を開く。
今の今まで精霊さんの話をしていたわけだけど、いきなり魔導大会の話に。
それに対して、カリーナちゃんもうなずいていた。
「そうですわね。魔導学園でも、魔術を使えるのは一年生どころか、二年生や三年生もみんながみんな使えるわけではありませんから」
「え、先輩でも使えないの?」
意外な話だ。この学園に長く在籍しているんだから、みんなバンバン魔術を使えるのだろと思っていた。
そんな私の言葉が意外だと言うように、カリーナちゃんはうなずく。
「魔術を扱うためには、まず精霊の気配を感じ、精霊と対話し、精霊と契約し……そういった段階が必要ですわ。
それは、いくら魔導学園と言えどみなができるわけではありません」
「そっかぁ……でも、ゴルさんや、同じ一年のコロニアちゃんやコーロランは魔術使えるみたいだけど。
その上、コロニアちゃんは無詠唱だよ、すごいよね」
「……それは、比較対象として参考にしないでほしいですわね」
お茶菓子を、一口。うん、おいしい。
魔術を扱える人は、思ったよりは少ないのかもしれない。試合をしたコーロラン、訓練に付き合ってくれたコロニアちゃん、決闘をしたゴルさん……
魔術を扱える人と関わることが多かったから、そう思ってただけか。思えば、ゴルさん以外の生徒会のメンバーが魔術を扱えるのかも知らないや。
ただ、無詠唱で魔術を使えるのは、コロニアちゃんだけじゃないだろうか。魔術は詠唱ありきで、無詠唱に到達するためにはよほど魔力や精霊さんと深く交わらないといけない。
私だって、無詠唱はまだ使えないのだ。
「というか、ゴルさ……ちゃん付けに、呼び捨て……」
「王族に対して……」
「私はエランさんが怖いです」
なぜだろう、みんなが私を見る目が、少しおかしい気がする。
「こほん。と、ともかく。
エランさんは魔術を、それも多数の魔術を扱えますし、他にも多彩な魔法があります」
「そうですわね。以前目にした、浮遊魔法で宙を飛びながら魔術を使ったり、分身魔法での二重詠唱……」
「普通に魔術だけでも、私たちでは及ばない域にいるのに……」
「化け物ね……」
みんな、私を褒めてくれているとは思うんだけど……どうしてだろう、なんか素直に褒められている気がしない。
私、なんかやっちゃっただろうか。出来る限りのことをしただけなんだけどな……
……あー、紅茶おいしい。




