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【一年生編完】史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます  作者: 白い彗星
第四章 魔動乱編

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219話 精霊さんの話



「誰……って、なにが? なに言ってるの?」


 私の問いかけに、彼女……ランノーンと名乗ったダークエルフは、困ったような表情を浮かべている。

 困っている……それは、そうだろう。私も、自分の言葉を客観的に見て、おかしなことを言っているなと思うんだから。



『ねえ、ランノーンさん。…………あなた、誰なの?』



 彼女は、ランノーンという名前だと。自分から名乗った。自分から名乗ったのだ、それが本当の名前かそうでないか、確かめる材料はそれしかない。

 普通は、そこに嘘をつく理由はないし、嘘をついているとも思わない。


 彼女は、ダークエルフだ。褐色の肌、きれいな銀髪、尖った耳……その特徴は、間違いなくダークエルフだ。

 その、はずなのに……


「言った通りだよ。あなた、誰?」


「……あのねぇエラン、さっき言ったばかりだよ。もう忘れちゃったの?

 アタシはランノーン。ダークエルフの、ランノーン。キミの言う、ルリーちゃんをよぉく知っている、故郷の村で一緒に育った女だよ」


 彼女の言っていることが、本当か嘘かの区別は私にはつかない。そもそも、さっきまでは本当のことなのだと、私自身が信じていたじゃないか。

 なのに、こんな疑問を持ってしまった理由は……一つだ。


「精霊さんがね……」


「んん?」


「精霊さんが、教えてくれたの。あなたは、嘘をついている」


 世間にとって嫌悪されるダークエルフでも、私にとってはそうではない。むしろ、仲良くしたい相手だと思っている。

 初めて会う相手だって……ルリーちゃんの知り合いと言うなら、私は無条件に信じていた。信じてしまっていた。


 でも……私が、一番信じるのは……


「初めて会ったあなたよりも、私は小さい頃から知ってる、精霊さんを信じる」


「……」


「こっちの勘違いだったら、ごめんなさい。的外れなことを言っていたら、ごめんなさい。精霊さんにも、後で注意する。

 ……でも、ごめんなさい。私は精霊さんの勘違いとも、的外れなことだとも思ってない」


「……めちゃくちゃなこと言うねぇ」


 私は、ランノーンの目をじっと見る。彼女も、私の目を見ているが……くくっ、と、なにがおかしいのか喉を鳴らして笑い始める。

 それは、見当はずれのことを言われておかしくて笑っている……というわけでは、なさそうだった。


 おかしいは、おかしいんだ。でも、それは私の言葉が間違いだからじゃあなくて……


「精霊、精霊かぁ……なるほど、噂で聞いてた通りだよエラン・フィールド」


「噂……?」


「ダークエルフらしき人物と懇意にしている、けた外れの魔力持ちの人間がいるって聞いてはいたが……

 いやはや、まさか精霊とそんな会話までできるなんてな。全部お見通しってわけだ」


 ……なんだ? ランノーンの雰囲気が、一変した?

 空気が、重い。これは結界のせい……じゃ、ないよな。


 ……結界……?


「考えてみれば、おかしい。あなたは、自分から人払いの結界を張って、私とあの場で話をすることに応じた。

 でも、自分からその結界から出た」


 人目を避けたいなら、むしろ結界から出ないほうがいい。私にルリーちゃんを呼ばせるなり、すればいい話だ。

 でも、彼女は結界から出た。人払いの結界から。おかげで、その効果は今なくなっているはずだ。


 なのに、誰もランノーンのことを見ていない。いくら、さっき周囲の人は逃げたと言っても、人っ子一人いなくなったわけじゃあない。

 それなのに、誰も反応を示さない。ダークエルフに過敏な人たちが、ランノーンを見逃すなんてあり得ない。

 ルリーちゃんみたいに、認識阻害の魔道具を使っているわけでも、なさそうだし。


 結界は、強力で便利なものだ。使い手の魔力量によって、使える時間も変わってくるけど……人払いの結界や、学園で決闘の際に張られる結界など、その種類は多岐にわたる。

 ただし、結界は一度張ったら動かせない。あくまでその場に張るものだ。


 つまり、たとえばランノーンが結界と一緒に移動しているなら、人払いの効果は持続していることになるけど……

 そんな器用な真似は、できない。


「あなたもしかして……ダークエルフじゃ、ない?」


「なぁに言ってんの、ついさっき。アタシのことを見て、周りの人間がダークエルフだーって騒いでいたじゃない」


「でも、今は違う」


 さっきと今とじゃ、状況が違う。人がいるいない以前の問題だ。

 まるで……さっきまではダークエルフだと認識していたけど、今は普通の人間として認識されている、みたいな。


「あははっ、なかなか鋭いねぇ! びっくりだよ!」


「!」


 自分に向けられている疑念は、わかっているはずだ。それを受けて、ランノーンはケラケラと笑い始める。お腹を抱えて。

 なにがそんなにおかしいのだろう。それは考えるまでもない。


 今、ランノーンは鋭いと言った。ってことは、私の指摘が当たっているか、惜しいとこいってるってこと……


「あなた、ダークエルフじゃないね」


 先ほどと同じ言葉を、今度は確信めいて告げる。ランノーンの特徴は、ダークエルフのそれだ。誰もが、見れば一発でわかる……ダークエルフは、特徴的な外見をしている。

 彼女がダークエルフでないのなら、わざわざダークエルフに化けているってことになる。なんのために?


 わからないけど……私の言葉を、否定も肯定もしない。ただ、笑みを浮かべている。

 それも、少しの間。次の瞬間には……


「御名答。アタシは、ダークエルフなんかじゃないさ」


 あっさりと、私の言葉を認めたのだ。

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