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史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます  作者: 白い彗星
第十三章 黒髪少女の軌跡編

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1023話 追想



 ――――――



 ……魔導学園に入学するために、ベルザ国へ訪れた。これまでは師匠と二人でだったのに、今回は一人だ。

 国へ行くまでの途中、盗賊に会ったりもしたけど適当にあしらって、国へ足を踏み入れた。そして、冒険者ギルドで宿を聞いた。


 教えてもらった宿『ペチュニア』で、クレアちゃんと出会った。クレアちゃんに王都を案内してもらって、ずいぶん仲良くなった。

 学園の入学試験では、ルリーちゃんと知り合って……クレアちゃん、ルリーちゃんと三人で入学試験に合格して。


 学園に入学して、【成績上位者】として一目置かれたり、ルリーちゃんのルームメイトであるナタリアちゃんと仲良くなったり、私のルームメイトであるノマちゃんと仲良くなったり……

 そして、それからもたくさんのことがあった。


 クラスメイトのダルマスと仮決闘をしたり、学園に現れた魔獣を倒したり、コーロランのクラスと試合をしたり、ゴルさんと決闘したり……それからも、いろんなことが。


 本当に、いろんなことがあった。


「ママー? ママー!」


「!」


 思い出にふけっていた私は、耳元で聞こえたかわいらしい声に意識を取り戻す。


 私は……そっか、フィルちゃんにフィルちゃんと同じくらいの年の時になにをしていたのか聞かれて、思い出していたんだった。

 思い出していたのは、師匠との思い出だ。


 懐かしいなぁ、師匠。最近はあんまり思い出すこともなかったけど、やっぱり思い出すと心があったかくなる。


「あ、ごめんね。懐かしくって」


「ママ、お話してる途中すごく楽しそうだった!」


 話をしている時の自分の顔は、自分では見ることはできない。だけど、フィルちゃんは私が楽しそうだったという。

 自分の話なんて、誰にもしたことはなかったもんな……まあ、師匠の話はクラスメイトにしたことはあるけど。


 それでも、私が拾われてから、それから……のことは、誰にも話したことがない。わざわざ話すことでもなかったし。

 こんなことでもないと、話すことはなかっただろう。


「ママ、そのししょーって人のこと大好きなんだね!」


「! うん、大好き」


 私にとって、師匠は師匠以上に家族で……私にとって、大切な人。彼と過ごした日々は、なににも代えがたいきれいな思い出だ。

 師匠との思い出は、絶対に忘れることはない。……だけど。



『やあ……こんにちは、小さなお嬢さん』



 ……カインって名前の、エルフ。いや、ダークエルフ。


 ダークエルフと過去に会い、それを私は忘れていた。ダークエルフという印象的な出会いがあったら、忘れるはずがないのに。

 こうして、自分の過去を思い返すまで、まったく思い出すことはなかった。


 ダークエルフという特徴的な人物。それに、記憶を失う前の私を知っているという。

 普通なら、そんな人物忘れるはずもないんだけど。



『ここでのことは、ここを出たらしばらくの間忘れてしまうから。思い出すのが明日か、一年後か、それとも十年後か』



 ……こんなことを、言っていた。そんなの信じられないけど、実際に忘れていたのだから仕方ない。

 カインと名乗るダークエルフの存在。ただ、それを思い出してなにがどう変わるわけでもない。


 それより……なんで私、もっと重大なことを忘れていたんだろう。


「あの変な男……魔人、って言ってたよね」



『あー、気持ちいい……こんな晴れやかな気分は初めてだ……これが、"魔人"の力かぁー!?』



 私にとっては、こっちのほうが重要だ。だって、魔人って……ノマちゃんの今の状態を、そう呼んでいるのだから。


 例の"魔死事件"の一件で、ノマちゃんは"魔人"と呼ばれる身体になった。まあ、私たちがそう呼んだわけではないけど。

 なんにしても、身体の中の魔力が魔石の魔力と混ざり合った状態……だと言うのだ。


 これまで、ノマちゃんの身体に目立った異変はなかった。でも、あの男がノマちゃんと同じ"魔人"と呼ばれる存在だとしたら……


「ノマちゃんも、ああなっちゃう……?」


 背中から蜘蛛の足みたいなのが生えて、肌の色も変になって。魔物や魔獣よりも遥かに厄介な存在。

 ノマちゃんは確かに、事件以来身体の魔力が飛躍的に上昇した。でも……


 あんな風に、なっちゃうとしたら……


「ママー?」


「! な、なんでもないよ」


 いけないいけない。わからないことを考えて、悪いほうに向かっていた。

 私一人で考えても、どうしようもないことだ。これは、マーチさんに相談してみよう。


 ノマちゃんのことを調べてくれているあの人なら、なにかわかるかもしれない。


「! あ、もう授業も終わりか」


 そのタイミングで、授業終了を報せる鐘が鳴った。

 授業内容は組手で、筋肉痛がひどい私と幼いフィルちゃんは見学していたわけだ。


 結局、授業時間丸々話をしちゃってたな。


「ママのこといっぱい知れて、うれしかった!」


「ふふ、それはよかった」


 誰にも話したことのないことを、フィルちゃんには話した。まあフィルちゃんがどこまで理解しているのかはわからないけどね。


 彼女の頭を撫でながら、私は思い出したことを整理していた。

 ダークエルフに、"魔人"……無視できない二つのことが、私の身に降りかかっていたなんて。


 このタイミングで思い出したことに……なにか、意味はあったりするんだろうか。

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