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斧使いのおっさん冒険者ハーレム英雄譚 ~報われない人生が神話級の斧に出会って激変する話~  作者: いかぽん
第4部/第2章

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秘め事


「んっ……」


 アウローラは自宅のベッドの上で目を覚ます。


 寝室には木窓からは、夕日が斜めに射し込んでいる。

 昼寝の時間は終わりだ。


 だがアウローラは、ベッドの上で毛布をかぶったまま、もぞもぞとする。


「んんっ……こんなにゆっくりしてていいなんて、夢みたい……本当にいいのかな……」


 ずっとしっかり休んでいなかったから、すっかり忘れていた。

 ただベッドでごろごろするだけの時間が、こんなに幸せだったなんて。


「これでダグラスおじさまが、隣で寝ていてくれたら──って、バカバカ! 私ってば、何考えてますの!?」


 優しく抱きとめられ、頭をなでられたときのことを思い出す。

 たくましい胸板に顔を押し当てて、男の人の肌の匂いを嗅いでしまったあのとき。


「あの三人の女の子は、おじさまのお嫁さんだって言ってましたの。あの三人は、いつもあんな風におじさまになでなでしてもらってるのかな……いいなぁ……ひょっとしたら、それ以上のことも……」


 そこまで想像してしまって、顔を真っ赤にしてぶんぶんと頭を振るアウローラ。


 だがそれから少しの間、少女は毛布の下でもぞもぞとした。


 しばらくそうしていたとき──コンコン。

 家の扉がノックされた。


「──っ!?」


「おーい、アウローラ、帰ってきたぞ。体調はどんな具合だ?」


 ベッドの上でびくっと跳ねあがるアウローラの耳に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 ダグラスの声だ。


 昨日の今日で、この時間だ。

 任務が順調にいけば、帰ってきて当然の時間。


「……っ! ちょっ、ちょっ、ちょっと待っていただけますかしら! 今出ますわ!」


 アウローラは慌てて、ベッドから飛び出した。



 ***



 隣の都市で“竜神器十将”の一人、棍使いのネツァフを難なく打倒してきた俺。


 再び乗合馬車を使って、聖騎士の少女アウローラのいる都市へと戻ってきた。

 時刻は夕刻だ。


 俺はアウローラの様子を見ようと、まずは彼女の家を訪れる。


「おーい、アウローラ、帰ってきたぞ。体調はどんな具合だ?」


 家の扉をノックして、声をかける。

 ひょっとしたら寝ているかとも思ったが、わずかの間があってから少女の声が返ってきた。


「……っ! ちょっ、ちょっ、ちょっと待っていただけますかしら! 今出ますわ!」


 なんだか慌てた様子だ。

 中からバタバタと音がする。


「慌てなくていいぞ。ゆっくりでいいからな」


「は、はいですの……! ──ど、どうしよう、このままの格好で……き、きっと大丈夫ですわ!」


 少しして、家の扉が開く。

 扉の向こうから、寝間着姿の少女が恥ずかしそうに姿を現した。


「おっと悪い、寝てたか?」


「い、いえ、ちょうど起きたところでしたの。……任務、終わったんですの?」


「ああ。元凶の相手を倒して、もう悪さができないようにしてやったよ」


「さ、さすがダグラスおじさまですわ」


 そわそわした様子で、そう応じてくるアウローラ。


 アウローラの様子が、どこかぎこちない気がする。

 ほぼ三日間たっぷりと休んだはずだが、まだ体調が回復しきっていないのだろうか。


「ちょいと失礼」


 俺はアウローラのおでこに、自分の額を当ててみる。

 寝間着姿の少女は「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。


 俺は身を引いてから再び声をかける。


「悪い悪い、驚かせたか? ──熱はもうないみたいだが、まだ本調子じゃないなら、もう数日休むか?」


「い、いえ……体調は、もう万全ですの……」


 頬を赤く染め、もじもじとするアウローラ。


「そうか。何度も言っているが、無理はするなよ」


 俺はアウローラの頭を優しくなでる。

 寝間着姿の少女は少し戸惑いながらも、えへへっと嬉しそうにはにかんだ。


 それはそうと──


「……ところでエレン、お前はさっきから何をやっているんだ?」


 俺の隣では、エレンがくんくんと、何やらしきりに匂いを嗅いでいた。

 こいつときどき犬かと思うような動きをするよな。


「いやぁ、ちょっと気になることがあってね。……くんくん、くんくん……」


 エレンは匂いを嗅いでいって、やがてアウローラへと近づいていく。

 そしてついには、アウローラに急接近して、その匂いを嗅ぎ始めた。


「な……何をしているんですの、エレンさん……?」


「んー? いやね、匂いがしたんだよ」


「に、匂いって……何のですの……?」


 アウローラがそう聞くと、エレンはにやぁっと笑う。

 そして寝間着姿の少女の耳元に口を近付けて、何かをささやいた。


 するとアウローラは、びくっと跳ねあがる。

 彼女はこの世の終わりだというような恐怖に慄いた顔で、エレンを見る。


「ち、違いますわ……私は、そんなこと……」


「ふっふーん、違わないでしょ? ──いいのかなぁ、聖騎士が嘘をついて」


「ま、待って……お願い……おじさまには言わないで……」


「ふぅん、そういうこと」


 エレンが蛇のようにアウローラに絡みついていく。

 その姿はとても楽しそうだ。


 対するアウローラは、蛇に睨まれた蛙という様子。


「おいエレン。何だか知らんが、アウローラをあまり困らせるな」


「んふふっ、知らぬが花だねぇ。──ね、アウローラ?」


「ううっ……」


 相変わらず何だかよく分からないが、寝間着姿のアウローラは恥ずかしそうな様子で小さくなっていた。


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