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斧使いのおっさん冒険者ハーレム英雄譚 ~報われない人生が神話級の斧に出会って激変する話~  作者: いかぽん
第1章

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魔獣との再戦、さらなる能力

 モンスターの「ランク」というのは、そのモンスターの強さをざっくりと表す指標である。


 Bランクのモンスターは、並みの兵士やFランクの一般冒険者が討伐しようとするなら、最低でも二十人から三十人はかき集めないと戦ってはいけないとされる相手だ。


 だが俺は、そいつの前に一人で立っていながら、まったく負ける気がしなかった。


 聖斧ロンバルディアを肩に担ぎ、Bランクモンスターであるキマイラに向かって、特に気負うことなく歩み寄っていく。


 こちらに気付いたキマイラは、しかし、すぐに襲い掛かってこようとはしなかった。

 今の俺を、警戒すべき相手だと本能的に察知したのかもしれない。


 キマイラは、俺が一定の間合いまで近付いたところで──


 ──ゴォオオオオオッ!

 ドラゴンの口から、あの灼熱の炎を吐き出してきた。


 今の俺の身体能力なら、それをよけるのは容易いと思った。


 だが俺はあえて、その炎に向かって自ら突撃した。

 直感的に、その炎が俺を大きく害せる気がしなかったから、今の自分の能力を知っておきたいと思ってそうした。


 キマイラの炎が、俺の全身を呑み込む。

 半分回避をして左半身を焼かれたあの時とは違う。全身だ。


 俺の全身を覆う闘気が、キマイラの炎とせめぎ合う。

 やがて炎が過ぎ去った。


「なるほどな。こんなもんか」


 結果、まったくの無傷とはいかなかった。

 それなりの熱さが俺の全身を襲ったし、多少の火傷もした。


 だがそれだけだ。

 死ぬや生きるやの重傷を負ったわけではない。


 またそうして受けたダメージも、聖斧ロンバルディアの【治癒能力】によって、さっそく治癒され始めていた。


 炎を突破した俺は、そのままキマイラのもとまで駆けていく。

 魔獣はうろたえているようにも見えた。


「──うぉおおおおおっ!」


 俺は斧の間合いに入ると、その手に持った聖斧ロンバルディアを振り上げ、振り下ろした。


 ──ズゴォンッ!


 斧は城門を打つ破城槌のごとき轟音をあげて、キマイラの三つの頭部のうちのドラゴンの頭に命中。


 闘気と竜鱗による防御を容易くぶち抜いて、その脳天から頭部の半ば以上までをカチ割った。


「はっ、斧自体もすげぇ威力だな!」


 俺が斧を引き抜くと、キマイラは一度よろよろとふらついた。


 指一本分も刃が食い込まなかったときと比べると数倍、いやそれを遥かに上回る攻撃力だ。

 身体能力の向上だけでなく、斧自身の威力も当然のように凄まじい。


 ドラゴンの頭部は、もはや完全に死んでいる。

 だが残り二つの頭部は健在で、まだ死に体ではなかった。


「──ガルゥウウウウウッ!」


「おっと!」


 怯んだと見せかけて再び襲い掛かってきたキマイラの攻撃を、俺は素早く横手に跳んで回避。

 そして──


「──おらぁっ!」


 俺は無防備なキマイラの胴体側面に、再び聖斧ロンバルディアを渾身の力で叩きつけた。


 圧倒的暴力の衝突を示す轟音が、再び鳴り響く。

 聖斧の刃は、キマイラの胴体に根元近くまで食い込んでいた。


 俺が斧を引き抜くと、ぶしゅうううっと鮮血が噴き出す。

 俺は後方に跳んで、返り血を回避する。


 ふらついたキマイラは、やがてよろよろと横倒れになった。

 そしてびくびくと痙攣したかと思うと、ついには力尽きて動かなくなる。


「……ふぅ」


 戦いを終えた俺は、新たな相棒となった斧を肩に担ぐ。

 聖斧ロンバルディアが、俺に思念を送ってくる。


『見事じゃな。さすがは我が見込んだ男じゃ』


「そりゃどうも。けどほとんどお前の力だろ。俺の実力じゃない」


『そうでもないと思うがの。おぬしが鍛練に熱心でない怠け者で、あらかじめ闘気の扱い方を学んでいない男であれば、この結果はなかったじゃろ』


「まあ……それはそうかもしれないが」


『それにたゆまず鍛え上げられた肉体も、おぬしの努力の賜物じゃ。才覚に腐らず己にできることを最大限やるというのは、誰にでもできることではない。おぬしは少々、自らのことを過小評価するきらいがある。我が選んだ男なのじゃ、もっと自信を持て』


「お、おう」


 めちゃくちゃ褒められた。

 今までやってきたことが無駄ではなかったと評価されたのだから、悪い気分ではなかった。


「……ていうかロンバルディア、お前さっきから『我が選んだ』ってずっと言っているが、もしお前を最初に手に取ったのが俺じゃなかったら、どうしていたんだ?」


『さあの。そいつ次第じゃが……もしおぬしが我のことを、誰にでも股を開く尻軽だと思っておるのなら、温厚な我もさすがに怒るぞ。我はおぬしじゃからこそ、我が身のすべてを捧げたのじゃ。見くびるなよ』


「そ、そうか」


 手にした人間の本質を見抜く能力でもあるのか分からないが、思っていたよりロンバルディアからの信頼が重かった。


『あとわが主よ、もう一つ朗報じゃ』


「ん、朗報?」


『うむ。今の魔獣との戦闘に勝利したことで、我の(レベル)が一段向上し、【カリスマ】のスキルを獲得したぞ』


「【カリスマ】……? 何だそれは」


『ちょっとした好感度上昇スキルじゃな。ルックスが特に良くなくとも、イケメンのように人から好かれるようになる。特に異性には効果抜群じゃ。もっとも常時発動型(パッシブ)のスキルじゃから、特におぬしが意識すべきことはないがの』


 ううむ……説明を聞いても、いろいろと分からない部分があるな。


 そもそもロンバルディアの言う「スキル」とは何だとか、そういう基本的なところからよく分からない。


 まあ、おそらく「スキル」というのは、俺がロンバルディアから与えられる特殊な能力のことなのだろうが。

 ロンバルディアのやつ、当たり前のように俺が知らない専門用語を使うからな。


 あと(レベル)だとか常時発動型(パッシブ)だとかいうのも分かるような分からないような言葉だが、まあだいたい想像がつくのでいいことにしよう。


 で、スキル【カリスマ】か……。

 なんか人の心を操るような怪しげな能力にも聞こえるが、いいのかそれ?


 相変わらず、聖斧を自称するロンバルディアの倫理基準がよくわからない。


「ちなみにその【カリスマ】のスキルってのは、使わないでおくことはできないのか?」


『うむ。常時発動型(パッシブ)のスキルじゃから、切ることはできんの(嘘じゃけど)。それに我とおぬしとはすでに魔法的な繋がりを持っておるから、我を一時的に手放したとしても、よほどの距離や時間を離さぬ限り、効果は継続するぞ』


「ん……? 今、妙な雑音のような思念が混ざらなかったか? なんて言った?」


『あー、いや、何でもない。気のせいじゃろ』


 何かを誤魔化すような思念会話を送ってくるロンバルディア。

 怪しい……が、まあいいか。


 効果を切れないのであれば仕方がない。

 そのためにロンバルディアを破壊したりするのは、さすがにあり得ないしな。


 それはともあれだ。


「さて、キマイラを倒したのはいいとして……この扉はどうやって開けたものか」


 次なる課題は、この部屋に閉じ込められた状態から、どうやって脱出するかだ。


 シーフの獣人ミィナが扉を開いた仕掛けがどこかにあるはずだが、俺はそれがどこにある、どんな仕掛けなのかを見ていない。


 キマイラを撃破した以上、この場所に危険はないのだからゆっくり探せばいいという話ではあるのだが、それにしても、シーフの専門技術がないと見つけられないような代物だったらお手上げである。


 そう思っていると、またロンバルディアが、どうということはないというように言う。


『扉が開かぬから、部屋から出られぬと? なに、問題はない。扉が開かぬなら、その横の石壁をぶち破ればよかろう』


「あー、なるほどな」


 確かにこの聖斧の威力なら、それも造作のないことだろう。


 俺は部屋に置きっぱなしだった荷物を背負うと、ロンバルディアを何度か振るって石壁を切り崩し、部屋の外へと出た。


 そして遺跡の出口に向かって歩いていく。


「古代遺跡の壁を魔法でぶち抜いたら、壁と壁の間に毒ガスが詰まってた、なんて逸話も聞いたことがあるが、さすがにそんなことはなかったか」


『……それは我も考えておらなんだ。とんでもないことを考える人間がおるものじゃな。ちなみに、もしそれがあったらどうするつもりだったんじゃ?』


「そのとき考える。毒ガスの代わりに、火薬なり何なりが仕込まれている可能性だってある。決め打ちなんざできねぇよ。──ていうか、そんなわずかの可能性まで考えて尻込みしていたら、冒険者なんてやっていられねぇ。こんなダンジョン、一歩も動けねぇよ」


『なるほどの。ある程度は命知らずでなければ、冒険者稼業など勤まらんということか』


「そこは『命知らず』じゃなくて『勇敢』と言ってくれ」


『うむ、では「豪放」と言っておこう。我は男らしい主は好みじゃぞ?』


「そいつは光栄だ」


 知性ある斧インテリジェンスアックス相手にそんな軽口をたたきながら帰路を進み、やがて俺は遺跡の外へと出た。


 だがそこで俺はとんでもないものを目撃し、慌てて隠れることとなる。


「ふぐぅーっ! ふぐぐぅううううっ!」


「ふふふ……ミィナ、私たちに逆らった、あなたが悪いのですよ。冒険者は仲間とは仲良くしなければいけません。さもないと、こういう目に遭うのですからね」


 その三つの人影は、遺跡の出口から少し離れた場所にあった。


 獣人の少女ミィナが、その身体をロープで木に縛りつけられ、口には猿轡(さるぐつわ)が噛まされている。


 その前には、神官の男と、魔法使いの男の姿。

 魔法使いは短剣を手にしており、ミィナの衣服がずたずたに引き裂かれ、少女は白い肌をあらわにされていた。


 あれがどういうことなのかは、だいたい想像がつく。


『なあ、わが主よ。邪悪というのは、ああいうののことを言うんではないかの? 我はとても不愉快なんじゃが、あの下郎二人、ぶった切ってくれんか』


「ああ、不愉快なのはまったく同感だ。だがロンバルディア、あんなやつらの血でお前を穢すこともないだろ」


 俺はあらためて遺跡から出ていくと、強姦未遂の現場までずんずんと向かっていった。


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