1-8 ダンジョン試験
パーティー組み式の後、勇者たちの最終試験の場、王立勇者学園の地下ダンジョンへと物語は展開します。
【8】ダンジョン試験!
「待った?」
「ううん待ってないよオードリー。その服似合ってる。かわいい。」
「そ、そう?こういう服着たことなくて。かえってハズイんだけど…」
「そうなの?でもいいよ。」
「シルキーから言われると自信出る。それに、リブ&ウィルコンビの先生たちが準備手伝ってくれたから。」
「だったら完璧ね!」
「でもフィッシャーが、あっちの服の方が、俺の好みだとか言ってたし…」
「あの人、スケベだものね。」
「で、でも優しいとこあるし…」
「おーい、ごめんごめん。」
「遅いぞリーダー!」
「ごめんオードリー。」
「最初から遅刻?」
「ごめんね、フィッシャー先生とシープス先生に捕まってて。」
「おい、ロビン・クルソンよ。」
「何ですか、フィッシャー先生。」
「いや、クルソン。フィッシャー元先生な。」
「シープス先生!」
「何ですか?フィッシャー元、先生。」
「まぁいい。ロビン。お前さんはどっちがいいんだ?」
「えっ何のことですか?」
「何じゃないだろう、この坊ちゃんは。あんな超絶美少女を2人はべらせて!お前さんは何の英雄を目指してるんだ?ハーレムか、ハーレムじゃあないだろうな?成り行きとはいえ、なんちゅうラッキーボーイなんだ。」
おちゃらけていたフィッシャーが急に真顔になった。
「それよりも大事なことは、パーティーとはチームワークだ。多分、卒業ダンジョンは、あのハイエルフの嬢ちゃんがいりゃー何の問題もなくクリアだ。」
シープスが「それは…」と割りこもうとしたのを、フィッシャーは制止した。
「嬢ちゃんは、俺の見立てでもダブルS以上の実力がある。そんな実力者がいたら、ここいらじゃ無敵だ。多分、それに合わせて、お前さんもオードリー・クリスタも、すぐにレベルアップするだろう。でもそれじゃダメだ。パーティーはそれだと腐っちまう。」
「そうだ、ロビン。元先生の言う通り、チームワークによって、どんなに優れた人材がいるパーティーも実力が出せずマイナスにもなるし、もちろん逆に2倍にも3倍にもなる。それを忘れないように。お前なら大丈夫だ。」
「元先生って…あんた、意外に腹黒だな。」
「先生方!フィッシャー先生もお元気で!」
「またな。卒業したらどこかで会おう。冒険は楽しいぞ!」
「元先生の教え忘れるな。」
「あんたなあ!」
シープスは頭の後ろ手にして、下手な口笛を吹いた。
「頑張れよ!」
「はい!」
ダンジョンは全部で7階層。
演習は3階層までだった。
学園の地下にあるダンジョンは、全体で総合D難度、ただしラストモンスターはC難度の評価であった。パーティーがDクラスだとギリギリクリアできるが、それ以下だと全滅のリスクすらある。それ故に、Eクラスが組み直しをさせられる基準が最初から設けられていたのだ。
既に、先に先行した仮勇者たちパーティーは、おそらく、第1組あたりは、早くて最下層にたどり着くかつかないかだ。ロビンたちを含めて8組が時間差で、ダンジョンクリアを目指す。もちろん後に潜行するパーティーは、モンスターの数が減って安全にはなるが、やはり経験値やモンスターから得られるアイテムが少なくなる。
パーティーにとっても初仕事であり、軍資金作りにもなる場でもあり、また、世間からの評価、第一印象が決まる場でもあった。特にラストモンスターを狩ったパーティーには、民間のスポンサーがつき、1年間は、ギルドとスポンサーからも報酬が得られた。ロビンたちを別にして、そんな出世コースを、どのパーティーも狙っていた。
「あっという間に5階層にやってきたねロビン。」
「うんそうだね、オードリー…」
やはりトリプルAであるシルキーの実力は桁外れだった。第3階層までだけでなく、それ以上の第4、第5階層に入っても、少しシルキーが戦うだけで、モンスターたちがその強さに恐怖して逃げ出してしまうのだ。
「作戦会議よ、ロビン!」
「お、おう!」
「シルキーさん?」
「えっ?なに改まって、オードリーちゃん。」
あーとオードリーが上を向き、目に手を当てた。まさしく緊張感などない。そして、悪気もない。それが見てとれた。
「あなたは強い!めちゃくちゃ強い!我らの希望の星!ほんとに安心!ありがとう!」
横で、ロビンが正座していて、うんうんと深くうなずいた。
「ヒーローよ、いいえ女だから…ヒロインか。どちらでもいいけれど、間違いなくあなたはヒロインよ!ところで、今のまでの力は、どれくらいの実力を使ってるの?」
「えっ?特にモンスターが弱すぎるから…まだ全然。あんまり卒業試験って意味わからないなあって。」
(なっなるほど!)2人の心の声。
「でも!そーではないのです!わたしも、ロビンさんも、戦いたいのです。でないと、シルキーさんに、いつまでもオンブにダッコ、全く追いつけないので。でも、私たちが弱いことは、ちゃんと自覚があってわかってる。だから危なくなったら助けて。」
「はい、わかりました。」
「まずは僕から行きますよ!オードリーさん!」
「はい、ロビンさん!次はわたしが行きますよ!」
「チッガーウ!そっちじゃなくない?」
「オイ!オッセオッセーヨ!」
「ウッ、ウワー!」
「死ぬのかな、このまま僕たち(わたしたち)死ぬのかな?」
「はい!タスケマス!」
「あ、ありがとうシルキー!怖かったよぅ!」
「ヨシヨシ…」
仲の良いパーティーの初仕事だった。