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2-38 勇者のパーティー

【38】 勇者のパーティー


「さあ行きましょう!私たちがいてもルードヴィッヒ様にご迷惑となります!」


ロビンたちは、クルスに促され、馬車へと全員乗り込んだ。全員が乗車したと確認するようにオルフェンブルーは一声いななき、馬車はゆっくりと走り出した。


「待て!あれを止めよ!」

イスタがそう言うと、ルードヴィッヒがそれを制した。

「いや、止めてはならぬ!あれは我らの希望、そのまま行かせよ!」

「ええい、ルードヴィッヒ!この反逆者が!」

イスタは抜刀し、ルードヴィッヒへと剣を振り上げて襲いかかってきた。やむなくルードヴィッヒも抜刀し応戦した。

空はガルーダの群れが覆い尽くして黒く染まり、その下で、団長と副団長が切り結んでいる。


幹部たちは皆この状況に混乱したが、そのうちの冷静な者が

「まずはガルーダを退治することが先決だ!とにかく応援を呼べ!それとお前たちは団長と副団長をお諌めしろ!いまそのような場合でないことはお二人にもわかるはず。わたしたちはあの勇者のパーティーを止めてくる!すべての乱れの原因、Eランクの勇者など得体が知れんからな!」と叫んだ。


「これ、誰が手綱を握るんだ!」

クロエがそういうとロビンに全員の視線が集中した。

「や、やってみるよ!」

ロビンは荷馬車から御者座へと移り手綱を握った。とても早いスピードだ。風が流れる。だが不思議なことに馬車であるのに全く振動がなかった。


ガルーダが数羽飛来して、馬車に向かって、鋭く巨大な一本足で襲いかかってきた。

「こっちだ!」

ロビンが右に曲がろうとして手綱を引き絞ったが、馬車は左に曲がり、そしてガルーダの攻撃をすんででかわした。ガルーダの一羽がそのまま地面に激突して動かなくなった。さらに攻撃は続く。

「今度はこっちだ!」

ふたたびロビンが今度は左に曲がろうと、手綱を引きしぼると、ロビンの手綱捌きを無視して馬車は右へと曲がった。ガルーダのうち二羽がそれによって巨大な身体をぶつけ合い、墜落した。


「だーーー難しい!どうしたらいいんだ!全然言うことを聞いてくれない。」

「ロビン、ちょっと代わって!」

シルキーが荷馬車から御者座へと乗移り、ロビンの隣へと座った。そしてロビンから手綱を貰うと静かに目を閉じた。

「この子…」

「シルキー?」

「しっ!」

「この子、風を感じてる。それもただ感じてるだけじゃない…わたしと同じような力持ってる。」

「わかったわ!ロビンは荷馬車に戻ってガルーダを!わたしが手綱を!」

「わかった!」


シルキーが手綱を握った瞬間、一気に馬車はスピードを増した。

「わわっ!」

その弾みでロビンが馬車から振り落とされそうになり、咄嗟に荷馬車のルーフを掴んだ。あまりのスピードで振り落とされそうだ。ロビンは身体強化のスキル魔法を唱えて、必死にしがみついている。オリハルコンのおかげなのか、一回のスキル魔法で、以前の3回分の力が出ているのではないかとロビンは感じた。そうでなければ間に合わず、転がり落ちていただろう。

だがガルーダが、格好の標的となったロビンに目掛けて、狙いを定めて垂直に滑空してきた。

「うわー!!!」

ロビンがもうだめだと咄嗟に思った時だった。まるで目に見えない壁でもあるかのようにガルーダの鋭く長い鉤爪が弾かれた。


「ロビ君大丈夫?今のうちに中へ!」

クロエが手を差し伸べてくれて、ロビンはなんとか荷馬車へと転がるように入ることができた。

「イテテテ、クロエありがと…」

ロビンが中に入ると、クルスが両手を組んで祈りを捧げていた。

身体の全身ががうっすら光って見える。

ロビンはそれを見ていると、とても安らかで、それでいて張り詰めた緊張感が緩み、あたたかく勇気が出る気持ちに不思議となってきた。


「ウルティマの神官、それも最高位になるとあらゆる攻撃から護る絶対防御の盾を発動できるというわ。」

「クロエが、なんでそんな自信満々に言うの?」

「別にいいでしょ?それなら僕たちもそろそろ活躍しないとね!さっきこれを見つけたのよ!」

クロエはそういうと、荷馬車の中にあるレバーを指差して、思い切って引いた。するとシェードがゆっくりと開放され最後は上空の無数のガルーダたちを、直接視認できるようになった。



ロビンたちを追いかける騎士たち。その視点から。

「は、早い!」

「なんだあのスピードは!スレイニプルが馬車に追いつけないなんて!」

「あっ危ない少年が落ちる!ガルーダが!!危ない!」

「なんだ?少年は確かにガルーダに襲われたはずだが?」

「まるで無傷だ、どうなっている?」

「今度はなんだ?シェードが開いていく。なんと!あれではガルーダにどうぞ餌食にしてくれといってるようなものではないか!」



「やっぱり!多分こうなると思ったんだ!」

「これって…」

「すごいクロエどうやったのそれ!随分見晴らしが良くなってる!でも!これで戦いやすくなったわね!」

「でしょう!攻撃は任せて、あんな魔獣たちはすぐに蹴ちらすから。シル君の調子はどう?」

「わたしの方も、オルフェンブルーと風で会話できるようになったわ。手綱は任せて!」

「じゃあさーてやりますか!」

「クロエ、馬車のスピード落とそうか?狙えないでしょう?」

「シル君、誰にそんなことを言ってるの?僕はクロエ・アヤ・グレース。弓の勇者だよ。」


クロエは、もらい受けたばかりのオリハルコンのクロスボウガンを構えた。

「ボウガンてのは初めてだけど…まっ大丈夫でしょ!」

クロエは右手を目の高さに上げると、電気の筋が空と地に走りスパークしている。まるで小さな雷のようだ。クロエはそれをあらためて握り直すと一本の光る矢へと変わった。そして、そのままオリハルコンのボウガンへと装填した。

「ひいふうみー…うーんとたくさんだなあ。全部は無理かな?」

そういいながら、クロエは慎重に片目で見定めると、

「地の弓!」と言って引き金を引いた。


矢はまるで地上から空に向かって雷が落ちるように放射状に広がり、ガルーダ10数羽を見事に刺し貫いていた。

「良し!」

これはクロエが最初に盗賊団に使った技でその応用に見えた。

「良しってクロエ…なんともないみたいだよ。こっちに向かってくるみたいだし!」

クロエは、ロビンにまあまあと手をかざした。

そして「天の弓!」と言ってふたたび雷の矢を上空に発射すると、矢は一旦垂直に空を一閃し上空で割れて、ガルーダへと刺さっている光の地の矢に[落雷]した。ガルーダは全身感電し、黒焦げになって落下した。

「これは地の矢が一度刺さったら、どこにいようと天の矢が追跡して、必ず雷を落とす技さ。」


「だから、地の弓!そして…天の弓!」

と次々に矢を射て、クロエは、およそ数分間で30羽程度のガルーダを打ち落としてしまつた。

「すごいねクロエ…あっ危ない!」

後方を振り向いたシルキーが、そういうと横一線に手を振った。



ふたたび騎士たちの視点だ。

「なんだあのスキル魔法は?光の矢が放たれてガルーダへと突き刺さったかと思ったら、時間差で黒焦げになって落ちていったぞ、一体どんなスキル魔法を使ったんだ!」

「お、おい!」

「ガ、ガルーダ!う、うわーーーー!」

騎士たちが目を閉じた時、ガルーダは彼らの直上で真っ二つに切り裂かれた。シルキーのエアアローだった。


去りゆく馬車を見送る騎士たちが言った。

「何がEランクだ。あれでEランクなわけがない。」



「あれは、まぎれもなく魔王でさえも倒せる勇者のパーティーだ!」










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