2-29 クロエは…
【29】クロエは…
「2人ともすまなかった!特にロビ君、君には酷いことをしたと思ってる!」
クロエは両手を合わせて、精一杯、ロビンに謝った。ロビンはクロエのことに怒りも責めることもなければ、逆にパーティーとは何か、リーダーの決断とは何か、それよりもシルキーとクロエのことを、さらに大切な仲間としてもっと感じられるようになったことに素直な気持ちで感謝していた。
「クロエ…謝らないでくれよ。おかげで僕は大事なものを見つけられたんだから。」
「だったら少しは気が楽なんだけど…シル君、君は大丈夫かい?君にも辛い思いをさせてしまって…」
「ううん大丈夫…クロエこそ大丈夫?本当は嫌な役割だったんでしょ?」
「え?なんで知ってるの?」
「ううんなんとなく…いろいろ考えるとそうかもって思ってたから…登場の時から不自然だったし、特にわたしたち初対面なのに勇者だと言い当ててたから…わたしたちのことを初めから知ってるとしか思えなかったから。」
「あああれね、考えると、とても無理のある話だったんだけど…さすがトリプルAは、頭脳も明晰だね。でも、だから君はなんのためらいもなく魔法円に?」
2人は笑い出した。
「2人とも…どういうこと?なんのこと?全然わからない…」
「まあおいおい話すけど…ほんとにロビ君、君ってやつは盛大に察しが悪いなあ。逆に君はEランクだけのことはある。安心するよ。でもそこが君の超いいところだし、それ以上に今は君のことをとても尊敬してるよ。」
「うーん、やっぱりわからない、降参、シルキーわかってるなら教えてよ!」
「そうね、オーリン…じゃなくてゼクス学園長からなんて言われたの?」
「それは、自分の力で旅を完遂することと、もう一つ王都のフラッグさんに会うこと、この2つだよ。」
「だったらわかるでしょ?これが勇者のパーティーになれる本当の最終試験だったってこと!」
「え?」
えーーーーーーー!!!!
クロエ・アヤ・グレースは、試験官だった。
勇者になれることとパーティーを組むこと、ダンジョン制覇をすることで個人の卒業は確定するが、パーティーのリーダーの適性をはかるために、ダンジョン制覇の後、実は毎年慣習的にこのようなリーダーへの最終試験が行われているというのだ。
「でもクロエはすごいね、その年で試験官だなんて。」
「何言ってるロビ君。君たちの方がすごいよ!初めてのダンジョンで、魔王討伐を果たしたんだから!しかも学生がって!それはもう全世界に衝撃を与えたよ!」
「いやでもあれは学園長もいたし、先生たちも参加してて…パイシーズクラスの僕たちだけじゃなかったし。第一本当の魔王じゃないから。」
「いやいやそうなんだけど、君は世間を知らないようだから教えてあげるんだけど、レプリカの方が本物より強いんだよ!」
「え、そうなの?」
「そうだよ!倒した本人が言うんだから絶対に間違いない…ていうか人からそういう噂で聞いたんだけど。と、そんなこんなで、特にその時英雄が大活躍したって、しかもそれが学生だったと聞いたから、もう居ても立っても居られなくなってしまって。別の国からはるばるこの国にやってきたんだ。」
「クロエは外国人だったんだ!」
(だからか!だから執拗に名所巡りを!)
(あれ本気のヤツやったんかーい!)
「それでね、アルバートに来てすぐに、勇者学園に挨拶しがてら、この話を聞きに行ったの!」
「そしたら…」
「学園の入り口で道に迷ってると、親切な用務員さんとばったり。立ち話なんだけど、全部話を教えてくれて。面白かった!まるでかぶりつきで見てたみたいな、すごい臨場感と描写で、しかも話がめっちゃうまいの!思わず聞きいっちゃって!そしたら変な陰険そうなおば様が急に出て来て。オジーサンがなんだかんだで試験官にって言って、こんな話になったの!」
「へ、へえーーーその用務員さんの特徴は?」
「えーと、なんか優しそうなんだけど目は鋭くて、今時流行らない昔の賢者がよく被ってた風の帽子を被ってて、白ひげのオジーサン…」
「もういい…わかったからその人…」
「ちなみにその陰険そうなって…」
「シルキーさんそれ聞くのあえて?もーいーじゃん、わかるでしょ、専属キーワードあるんだから!」
「わたしは…何事もはっきりしないと気が済まない性格なのよ。それに万が一、ウィル先生かリブ先生かもしれないし…」
「あーそう?まあ僕は、絶対にあの方じゃないと、違うとは思えないけど…一応…ね」
「オウム頭みたいでぇー…」
はい確定!わかりましたあ!
「試験方法はそのおば様がすぐに考えてて…そういえばオジーサンが試験方法を聞いた途端、最初困った顔してたけど…まっ大丈夫じゃろうって、急に軽い感じになってたなあー」
ナゲタ!オーリン、アイツナゲヤガッタ!シバク、コンドアッタラ!
「それで言われたの。深々とお辞儀もして…良かったら…2人を…わしらの大事な生徒たちをよろしくお願いしますって…」
「そう、ありがとう教えてくれて。」
「それじゃあクロエはこれから故郷に帰るんだね。」
「なんで?」
「なんでって…だって勇者は国ごとの登録だから帰らないといけないじゃないか。」
「あーそういえばそうなんだけど、裏ワザがあるって知ったの最近!」
「へえどんな?」
「なんか別の国で、登録し直せばいいんだって!つまりはね、アルバートに居たければアルバートのパーティーに入ればいいんだって!びっくりでしょこの裏ワザ!」
「ちなみに誰から聞いたの?」
「聞きます?ロビンさんそれ?必要かなそのジョーホー!」
「うん、僕もシルキーパイセンを真似たい年頃なんで!」
「うーと、白ひげの…」
ハイケッテーーー!コンドアッタラ、オーリン、ゼッタイシバク!シバキマスワタシ!
「うん、だからあ…君たちのパーティーに入りたいんだ…一緒に大魔王を倒したい!僕も入れてよ!」
「…」
「ダメ…かな?やっぱり、あはは…だよね…君たちに悪いことしたもんね。」
せーの、僕の・わたしのパーティーにようこそクロエ!
「ありがとう!」




