1-24 別れは…
【24】別れは…
「今年は魔王討伐を果たした、生徒全員を卒業生とする!」
ワーーーーーー、全校生徒の歓声が、アルバート王立勇者学園の大講堂を揺るがした。
「シルキー、ロビン、それじゃあ…」
ここは、勇者学園の正門の外。
道はどこまでも続いているように見える。外はポカポカと陽射しのやわらかい午後のひと時だった。
「オードリーほんとに行くの?」
「なによロビン。やっぱり美人のわたしと離れるのが、そんなにも惜しーわけ?」
「そう…ていうか、違うっていうか…やっぱりそうだよ!」
「優柔不断は相変わらずね。そんなことじゃ女の子にモテナイゾ!と冗談はそれくらいにして。でも、2人には悪いんだけど、わたし決めたの。わたしを守ってくれたディーンを、ディーン・シャイニーという人を元のディーンに戻す方法を探すために、このディーンと2人して旅に出ようって。」
ディーンは、最後にオードリーの身代わりとなった。そして魔神ギガントロプスに握り潰されかかったが、幸いにして一命を取り留めていた。
だが今の彼は以来言葉を発しない。
これからオードリーが旅立つために用意した、屋根のある荷馬車の荷台に寝たきりの状態になっていた。
「オードリーらしいよ。勇気と覚悟がある。だからこそ大丈夫だとわたしは信じてる。」
シルキーは本気でオードリーに言った。オードリーもうなづいた。
「だったら…だったら4人で行こうよ!それじゃあダメなのかい?」
「…ロビン…ロビンの言葉はほんとに嬉しいんだけれど…自分が自分だけで…違うね、やっぱりディーンと二人してやってみたいなって。」
「でも!」
ロビンの背中にそっとシルキーの手が触れた。
「ロビン、わたしたちはどんなに離れていても、同じパーティー、そう、いつまでもね。」
シルキーの言葉にオードリーの目には自然に温かいものが流れた。
「じゃあ行くね!」
「うん、また会お!絶対にどこかで!」
「ありがとシルキー、止めないでいてくれて!あなたはやっぱりわたしの親友よ!」
「あたりまえよ!わたしはあなたの何百倍もオネーさんなのよ!」
「だね!さよならシルキー。ロビンもついでに…またね…」
「つ、ついで?」
オードリーはそううそぶいた後、ふてくされているロビンに駆け寄り、その頬にキスをした。
「えっ?」
「はっ?」
「ばーか、何本気出してんのー!シルキーも!ヤキモチ妬かない妬かない、フフフフ…」
「だ、誰がーーーー(ロビンとシルキーが同時に声を揃えて言った)」
「さよならー」
「行ってしまったか。」
ロビンが振り返ると、そこにはいつの間にかゼクス学園長が立っていた。
「ロビン君よ、どうしてオードリー君は君たちと別れたかわかるか?」
「…はい…なんとなくですが…僕はまだ子どもではっきりとは言葉にできませんが…」
「感じておればそれでいいのじゃ。いずれはわかるときが必ずくる。あれで良かったのだと。」
「そうなのでしょうか…」
「うーん…まあそう深く考えるな。君は若い。それに別れは出会いの始まり…という。」
「そうなのオーリン…学園長。」
「そんな歌があるんじゃよ。ま、ラブソングだな…流行歌の歌詞じゃがな。」
「お、オホン。それより、シルキー君、ロビン君。二人パーティーではこの先心もとない。この人の元に行ってみないか?」
そういって、ゼクスは一通の封書を差し出した。
「その手紙を、その宛名の人物に渡すと良い。」
「フラッグ・フォン・スタイン様?」
「そうじゃ、行けばわかる。」
「場所はここから東の森を抜けた王都アルベルトン、そこにそやつはおる。」
本編をもって、第一章が完結です。皆様のおかげ様で第二章へと向かえます。ありがとうございました!




