1-2 勇者学園の最終試験
前編から、時は流れて数百年。主人公ロビン・クルソンの時代へ。
【2】 勇者学園の最終試験
大きな大理石の柱、壁画や天井画、彫刻の装飾などが、あちこちに散りばめられていて、誰の目にも長い歴史とその格式の高さを感じさせている。この大講堂には、約600人を超える勇者学園の生徒や教師たちが集まっていた。
様々なエキスパートジョブの装束を着た生徒たちが、それぞれのクラス別に分かれて整列している。
だが、その一部の集団だけ、さらにその一角で、まとまりなく立っていた。
「それでは静粛に!」
少し金切声気味に、生徒たちの会話を遮ったのは、セインデリア王立12学校のひとつ、アルバート王立勇者学校エリザベート教頭である。大きな宝石をあしらった、色つきのガラスに金の縁のメガネが、厳格さを際立たせ、さらに陰険さを絵に描いたように雰囲気を常に漂わせている。生徒の間では、学園長を差し置いて、アルバートの影の支配者、陰湿なフィクサーとさえ噂されていた。だがこと魔法学に関しては、この学園で右に出る者がない、国内外においても最高峰の勇者であった。
「何か、今日も荒れてない?あのオウム頭のエリーちゃん」
「しっ!聞こえたらヤバイよ!」
「こんな遠くの小さな声聞こえるわけないよ・・・」
「そこ!アリースの女子生徒2人!今何といったの?」
2人は顔を見合わせる。だが、まさか自分たちのことではない、と思ったが、人の列の頭にさっと身を隠した。
「無駄ですよ。アリースクラスのケリーとイシタ。人に聞こえないと思って、陰口をたたくのは勇者たる前に、レディーとして、はしたない事ですよ。」
「エリザベート教頭!これは大変申し訳ございませんでした。」
「アリース担任シープス先生。この者たちには重い罰を与えるように。」
「は、はい!」
エリザベート教頭は、満足気に、まるで自分の目の届かないところに行ってちょうだいといわんばかりに、手を払うような身振りをした。2人の女子生徒は、担任のシープスに連れられて講堂を出て行った。2人とも青い顔をして、今にも崩れそうな重い足取りだった。
上級生の生徒たちや担任の教師たちの何人から、蔑むような失笑が広がった。この学校では、優秀であること、規律こそを尊ぶからだ。
今日は、この勇者学校の最高学年パイシーズクラスの生徒たち48名が、この学校の地下にあるダンジョン最下層へと取り組む卒業試験の日である。卒業試験の前に、生徒たち自身が互いに相手を選び、最終パーティーを組み、教頭をはじめ、12人いる各クラス担任教師の評価を受けるセレモニーだった。
パーティー構成の攻守のバランス、戦略性、独創性、結晶性などの総合力などから、AからEクラスの評価を受けるのだ。ただ特に優秀と認められればトリプルA、逆に即退学を意味するFの評価が設けられている。
「あなたたちは、この世界に12ある王立勇者学園の中でも、最高のアルバート王国立勇者学園の誉れある生徒です!まず、胸を張り、そして死も厭わぬ戦士として、この学園を卒業するのです。魔王や大魔王を恐れてはなりません。また、他国の勇者学園の卒業生よりも、高い結果を必ず出すと信じています!あなたたちは、選ばれた勇者なのですから!」
語尾に特徴があり、時折、金切声になるため、生徒たちはうつむき、拳を握って耐えている。ただ耳を押さえてはならない。なぜなら無礼千万との如く、あの教頭に睨まれてしまうからだ。
話はいつも長い。どこかの国の戦争を鼓舞する大臣のような内容であった。
もちろん、まだ幼い下級生たちの中から、倒れる者は続出する。
「ではこれよりパーティーの組み式に移ります。生徒たちは、自ら互いにパーティーを組むように。」
やっと教頭の長い話が終わって、いよいよ組み式となった。
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