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1-19 予兆

【19】予兆


「でかしたお前たち!!凄いぞ、俺は本当に今教師になって良かった!そう思って感動してるよ!」

他の生徒たちも、リブ、ウィル、シープスも、ロビンたちを惜しみなく賞賛した。

「先生…あ、ありがとう!でも、先生が教えてくれたおかげです。」

ロビンが、照れながらシルキーとオードリーを見た。2人とも笑顔が輝いていた。

「うん、3人ともすごかった!あんな素晴らしいコンビネーション、私は見たことがないわ。もう立派な勇者のパーティーね。」

リブが、助け出したディーンを抱き抱えながら言った。そしてその横で、ウィルが、切り離されたディーンの手を懸命に治癒している。命に別条はなく、どうやらなんとか左手は繋がりそうだが、しかし2度とスキル魔法が使えない状態とわかった。


「何言ってんだロビン。このフィッシャー元先生は、ナンパの方法を言っただけで、お前が頑張ったんだぞ。それにシルキー、あなたを最初に助けたのはロビンだし、オードリーも2人がいたからこそ、ここまでやってこれたんだろう?」

「そうです!」

「はい、2人は最高の仲間よ!」

3人は固い握手をした。


「あっ思い出したシープス先生!あんたなあ!俺をなんで殴った!」

「えっ?ま、まあ、咄嗟に思いついたんですけれど、どうでしたあの作戦!我ながら良い演出だと思ったんですがね。」

「な?なんで…」

「いいえ、シープス先生凄かったですねえ!ゲミ先生は完全に信じてましたもんね!」

ウィルは場を和ませるために、ハイヒールの魔法を使いながら冗談を合わせた。

「ちょ、ちょっと待てよ!」


アハハハハ!


「それにクレア、あなたが一番頑張ったわね!あなたの勇気は、素晴らしかったわ!」

クレアは、堪えていた、いままでの感情を噴きださせて、泣きながらリブへと抱きついた。その涙の雫が、ちょうど意識の戻ったばかりのディーンの血の気のない青白い顔の上へと、ポタポタと流れ落ちた。


「リブ先生の言う通り、クレアお前が一番スゲーよ!なっパルマン!」

「えっ?あーああそうそう!セリイグの言う通り…クレアちゃん凄いよ!」

「なんだよパルマン…なんかわざとらしい言い方だな。それじゃクレアが頑張ってねーみたいに聞こえるぞ!」

「い、いやあ、そんなことないさあ。クレアが一番だよ、ねっロビン君?」

「あっうん。僕もそう思ってるよ。」

「だ、だよね。頑張ったのが一番で、みんなが元気になるのが二番かな?いやいや、とにかくめでたしめでたし!」

少しづつだが、セリイグとロビンから距離を開けて、パルマンが後ずさりしている。

「どうしたのパルマン君?」

「い、いやあなんでも何でも無いっす!」

「何だよパルマン、その変な喋り方?あっそうだ、俺たちの預けたライタ…」

「アーーーーーー!」

「えっおい何だよ急に大声出して、びっくりするだろが!」

「だっ、だって…」

「パルマン君、僕の預けたライタル…」

「オホンオホン、ゲホゲホ…」

「ど、どうしたのパルマン君。こんなときに風邪?大丈夫?ウィル先生に言ってあげようか?」

「いいや大丈夫…死んでも大丈夫だしん」

「お前なあ、いい加減変な喋り方やめろよなあ…全く困った奴だ。でもロビン、パルマンは昔からスゲーいい奴でさ。こいつは、本当に頼りになる奴で、頼んだことはきっちりこなす奴さ!」

「へえー信頼してるんだねセリイグ君は。」

「たりめーよ!俺はこいつのことは何が何でも護るし、こいつの信頼も受け取ってる!特に誰かさんと違ってひねくれてないからなぁ。」

セリイグは、ディーンに聴こえるように大声で言った。

「せ、セリイグ、それは言い過ぎだよ。シャイニー君は今はたいへんなんだから。」

「んなこと分かってるんだよ!だったら元気になって、また嫌味なことでも言いやがれってんだ!俺はいつでも待ってるからよ!お、俺はお前のこと、す、スゲーやつだって思ってんだから…」

最後の方は、セリイグが急に声が小さくなったためにほとんど聞こえなかった。だが、側にいたロビンとパルマンは、彼の余所余所しいまでの優しさを感じて、互いの顔をみて、クスリと笑った。

左手に痛みは残るものの、ディーンは回復した左手を握ってみて、一筋の涙をこぼした。


「よーしお前ら全員のライタルストーンを集めるんだ。この部屋には今魔力が充満しきって高まっている。ライタルストーン全部で8つあると思うが、この魔力全体を吸収しきるのに足りるかどうか?微妙だが、まっ大丈夫だろ。」

「えっ?」

「えってなんですかリブ先生?」

「い、いえ、その言い回しだと、フィッシャー先生は持ってきてないのですか?」

「はっ?何を?」

「まさか?シープス先生は?」

シープスはやれやれと手を広げた。

「持ってきてないよね、やっぱり。」

「ウィル先生は?」

「いえ、わたしは念のために持って行こうと思ったんですが、エリザベート教頭が、ゼクス学園長からフィッシャー先生に直接指示されていたから、あなたは必要ないから持っていかなくていい…とおっしゃられて!す、すみません、わたしのミスです!」

ウィルは深々と頭を下げた。


「だから何なんだよ!」

「だーかーらーあなたがライタルストーンを持ってきてないよねって話です!」

「えっ?アーーーーーー、いやいやいやいや、ゼクスの爺さん…じゃない、学園長が良かったら持っていくといい、と気軽な感じで渡されたから、俺もそれに合わせて気軽に受け取ってるから、部屋にうっかり置き忘れて…でも集合場所に着いた時、思い出して、忘れものした!って言って取りに行こうとしたら、シープス先生とリブ先生が、そんなものは大したものじゃない!生徒の命とどっちが大事か!と聞かれて、そりゃあもちろん生徒だ!と答えたら…」

「あ、あの時のアレね…」

シープスとリブが回想し、落ち込んだ。

「そして、わたしが、じゃあそれは忘れてしまって、すぐに出発しましょう!って言って、出発となった。そういうことですかあフィッシャー先生…」

ウィルが泣きそうな顔をしている。


一方、リブとシープスはコメカミをおさえている。

(アホだ!やっぱりアホな子だ。あと3発ぐらい殴っても良かったんじゃね?)

(ちょっとでも、カッコイイと思った私はバカだったわ。ときめいて損した。)

「ど、どうしたんですか先生方。ま、まあ無いものは…仕方がないじゃないですかー。アハハハハ…」


「先生たち、なんか、もめてんな。」

「うん何だろう?」

「ロビン、フィッシャー先生が、ライタルストーンを持ってこいって。」

「分かったオードリー。じゃあパルマン君、預けたライタルストーン返してくれる?」

「おい、俺のもだパルマン。」

「どうしたの?」

「どうしたパルマン?何してる、早くしろよ。」


「う、うわああああーーーーー。」

「何だ!どうしたロックズ!何があった?」

「ふ、フィッシャー先生…これどーしたら…」

フィッシャーがロックズに駆け寄ると、その手の中には、粉々に砕け散った石のかけらがあった。


「ラ、ライタルストーンが壊れた…」










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