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1-17 計画

【17】計画


「遅い!何をモタモタしているのか?」

唐突に現れたのは、ジェミニクラスのゲミであった。そして、この突然の来訪者の後ろに、ロックズが影のように付き従っていた。

「ゲ、ゲミ!」

「ゲミではない、ゲミ先生といえセリイグ。」

「ロックズお前!早く扉を開けて、パイシーズ…いやライタルストーンをここに持ってくるんだ!」

セリイグがロックズの腕を掴みにかかろうとした時、ゲミがセリイグの足を蹴って転ばせた。


「今より、この俺より後ろに行くことは許さん。もし、このルールを無視するなら、こうなる。よく見ておけ!」

ゲミはそういうと、腰に帯びている長剣を素早く抜き、地面を舐めさせられたセリイグの太ももを貫いた。


ギャーーーーー

セリイグの叫びが広がった。


「先生何を!?」

慌ててロビンが、セリイグに駆け寄ろうとした。だが、ディーンがその進路を遮り、その上、光の魔法でロビンを大きく弾いた。ロビンの体は5メートルほど高く空中へと吹き飛ばされ、地面へと転がった。

「先生…いや、ゲミ卿、少しやりすぎでは?」

太ももを傷つけられ、傷口を押さえて、うめいているセリイグを見ながら、ディーンは無感情に言った。

「お前が生温い故、少しばかり手を加えただけのこと。それにその程度の傷で人が死ぬようなことはない。それより、その名を学園内では口に出すなと再々言ったであろう。」

「申し訳ありません、サー。」

「まあ良い。それより…」


ゲミがそう言いかけたとき、一陣の風を伴って、光の少女が彼らの頭上を越えて行った。


「動かないで。いま手当してあげます。」

シルキーが、すぐさまセリイグの傷口へと治癒の魔法をかけた。

すると、みるみるうちに傷口は塞がった。セリイグの表情は和らぎ、安堵とともに意識を無くした。

それと同時、シルキーに続くようにロビンが、疾風の魔法を自らとオードリーにもかけ、ゲミとディーンの両側からそれぞれ駆け抜けた。そして、意識のないセリイグを抱き抱えているシルキーを護るように陣取った。


ロビン達が、ゲミ達と対峙したちょうどそのとき、ふたたびゴーレムが再生された。

巨大なゴーレムが、なぜかゲミを標的と定め、襲いかかってきた。


しかしゲミは少しも慌てる様子はない。

ディーンは光の槍を自ら生成して戦うが、ゲミは、彼の背中に背負っていた体ほどもある大きな戦斧を構えた。実体のある武器だ。そしてそれを軽々と振り上げたかと思うと、一気に袈裟懸けに斬りつけた。何の衝撃もない。だが、巨大なゴーレムはなぜか立ち止まり、次の瞬間、ゴーレムの真後ろの地面と壁に亀裂が入った。

そして、その直後、ゴーレムはその戦斧の軌跡の通り、真っ二つに割れた。

大きな轟音とともに、ゴーレムの巨躯は瓦礫のように崩れ去った。


「さすがはサー、お見事な腕前で。一撃で仕留められるとは…」

「世辞はいい。お前もこの程度はできよう。」

「及ばずながら。」

「それよりもハイエルフか…この場にあっては少々厄介な存在…だが、俺には到底敵わぬがな。」

「ハイエルフ?シルキーが?」

「そうだ、先ほどの治癒の魔法。あれはハイヒール。治癒の高等魔法…あれが証拠よ。あれを使えるものは、学園内ではウィルか…あの学園長ぐらいだ。こいつが一番の曲者、難敵だ。俺の正体を知っているのか?とにかく、お前たちがダンジョンにアタックした後に、あのハイエルフが突然現れのだ。あやつの存在で、全ての計画が狂ってしまった。急がねばならん。で、そんなことより、もう既に全員を支配下に収めたのだろうな?」

「申し訳ありません、それがまだ。」

その瞬間、ゲミは手の甲で、ディーンの顔を平手打ちした。

「手ぬるいな。やはりまだ学生気分か。そんなレベルでは、我が国のナイトになど到底届かぬわ。」

「す、すみません。」

「まあいい。」


ゲミは、ロビンたちと他の生徒たち全員の中間に進み出た。

「ここにいる生徒全員、よく聞け!今から全員、このディーン・シャイニーのパーティーに入るのだ。一切の口答えは許さん!抵抗する者は、容赦しない。俺とディーン・シャイニー2人のうち好きな方を選べ。ゴーレムのような末路が待っている。だが、素直に従うものには危害は加えぬ。逆に厚遇しよう。そしてこの部屋からも無事に出してやろう。」

「厚遇とは、どういう意味ですか?先生は教師ではないのですか?」

怯えながらも恐る恐るセリイグのパーティーメンバーのクレアが聞いた。

「俺は教師などではない。ある国に使えている王族直下の騎士団が1つ、その団長よ。俺はある特命を帯び3年前から教師にやつして、勇者を集めていた。今までは、これで5組24名を我が国元へと送った。今回はディーン・シャイニーから、この話を持ちかけてきてな…それにゼクスが俺の動向に気づいた疑いがある。そろそろこの国とも潮時だ。」

「わたしたちを軍人に…ということですか?そ、そんな…」

「当然だ。お前たちは自分の存在意義を知らんのか?お前たちは人間兵器だ。軍隊こそ有効価値がある。冒険者になるなど無価値無用だ。これからは、そのように再度、徹底して教育し直すから何も心配などいらん。また、参加を希望する者には、贅沢な暮らしを約束しよう。」

全員が静かになった。


「まあ…と言って素直に応じることは今までもない。ロックズ!」

「は、はい、ここに!」

ロックズはもみ手で現れた。

「外の生徒全員を連れてこい。今から全員をリパーテイーする。パーティーを組み替えるのに、ライタルストーンとパーティーリーダーがいなければどうにもならん。次にゴーレムが再生されたら、もう一度俺が仕留める。その間にお前は生徒全員を引き入れよ。ここでリパーティーをし、我が国元へと全員で向かう。時間がない急げよ。ディーン・シャイニー、お前もその段取りを遂行せよ。それができた暁には、先の約束の通り、我が主に、ナイトの叙勲を進言しよう。良いな。」

「はっ!」


ゴーレムが再生され、そしてふたたび、ゲミが戦斧をふるい倒した。しかしここで奇妙なことが起こっていた。先に倒したゴーレムが消滅せず残骸が残ったまま、新たなゴーレムが形成されたのだ。ロビンだけが、違和感を感じていた。

「よし、行け!」

ゲミの指示で、ディーンとロックズが扉へと駆けた。ロックズが扉の封印を解除して、ディーンが部屋から出ようとしたそのときだった。


「おーと待ちな、このときを待ってたぜ!」

現れたのはフィッシャー、そして、シープス、リブ、ウィルの教師達だった。






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