1-15 再生
【15】 再生
「そろそろ良いだろう。」
ディーンは、自分の両手を合わせ、手の甲を天地上下にした。そして、それを少しずつ開いていく。すると両手の間に光の円柱が現れた。光の円柱がある程度の大きさで完成すると、ディーンが完全に手を離した。円柱はシャボン玉のように、フワフワと空中をただよった。
「それは何?」
ロビンが尋ねた。
「これ自体には特に意味はない。ただこうすると、初めて意味を持つものだがな。」
ディーンはそう説明しながら自分の足元の土を、一握りすくった。そしてその土に一旦魔力を込めると、円柱の上に落とし始めた。
ディーンの手からこぼれ落ちるのは、光の砂だった。
「砂時計か!」
「光のな。これは、ごく初歩の魔法の応用だ。誰にでもできる簡単な子どもだましだ。」
「ま、まあな。(一々勘に触る言い方だな、やっぱりこいつは好きにはなれん)」
セリイグが、そんなことを心に思いながら負け惜しみのように言った。
「この光の砂時計が、全てこぼれ落ちる時間を約30分と設定した。」
「それでどうするの?」
「シルキーとか言ったな。これから起こることをよく見ていろ。」
ディーン以外のパーティーメンバーが、巨大な石像ゴーレムに向かって、剣や弓、魔法などにより、あらゆる攻撃方法を駆使していた。
ゴーレムは、彼らの間断のない攻撃を受け続けた結果、既にその巨大な身体全体にあって、表面が崩れ落ち、大きくあちこちがひび割れ、今にも砕けそうだ。そして片膝をついて、反撃へと転じる余力もなく、大きな腕を十字に組んで、必死に防御のみに徹している状態だった。
「貴様たちは下がれ!」
ディーンが命じるとパーティーメンバーたちは、さっと後方へと下がった。それを確認するとディーンは、先程、光の円柱を作った要領で、今度はさらに魔力を込めて何かを創り出し始めた。
「ディーン様、あ、あれを!」
ディーンのパーティーメンバーの1人がそう叫ぶと、防御一辺倒だったゴーレムが、攻撃の雨が止んだことに気づき、これ幸いとでも言うように、再び勢いよく立ち上がった。そして、少し前かがみになると、まるで闘牛のように土を蹴り、両手を突き出してディーンへと向かって猛ダッシュをはじめた。ディーン1人を大将と見定めたのか、一点で押しつぶしにかかってきたのだ。
「ディーン様危ない!」
「止めだ!」
ディーンが、猪突するゴーレムに対して、まったく臆することもない態度でそう言うと、彼の手によって生み出されたばかりの聖なる光の槍を、全力で投擲のように放った。
光の槍は、突進してくるゴーレムの頭にめがけて文字通り一直線に飛び、ディーンの手前のほんの数メートルのところで、見事に直撃した。
そしてゴーレムが、それに遅れて咄嗟に両腕で防御したが、その両腕ごと衝撃波によって吹き飛ばし、槍の命中した頭も、木っ端微塵に破壊、粉砕した。
誰の目にも明らかに、恐ろしいまでの威力だった。
と同時に、石像のゴーレムは、そのまま完全に跡形も無く消滅した。
「おーーーーーーー!」
ディーンのパーティーメンバーが歓声をあげた。
「す、すげえ、すげえーなディーン・シャイニー!!!ほうーーーー!」
先ほどまで反感しかなかったセリイグでさえも、片手を頭上にあげ勝ちほこるディーンの姿に、歓声と拍手を送っている。
ロビンとシルキー、オードリーも互いに顔を見合わせて、賞賛を送った。
ディーンがくるりと振り返り、ロビンたちの元へと戻ってきた。汗ひとつ書いておらず余裕すら感じる。
セリイグは駆け寄り、ディーンに握手を求めるが、それを完全に無視してロビンたちの元へとやってきた。
「ここからだ、あれをよく見ていろ。」
ディーンが指差す方を見ると、ゴーレムを倒した空間に黒い靄が集まり始めているのがわかった。
「あれはなに…?」
オードリーが口を押さえながら言った。それはあまりに不自然な現象で、かつ禍々しいオーラを発している。オードリーは気分が急に悪くなった。
「まあ見ていろ。」
ディーンは薄く笑った。
空中に集まった黒い靄は、徐々に形を成し始めた。それも今しがたまで見ていたものに、徐々にだがその全体像、シルエットが見え始めた。
「まさか、あれって…そんなことって。」
「そうだ。あれはゴーレムだ!」




