1-12 世界の構造
【12】世界の構造
「おい、何してんだって言ってんだろう!おいっ何とかしろよ他のパーティーの奴、誰でもいい、早く扉を開けろ!」
「チクショー、どんな攻撃しても無理なもんは無理だ!この扉は壊せねー。」
「テメー殺すぞ、ロックズ!いい加減にしろ!早く鍵を開けろ、何意地を張ってんだ!」
「もう!いい加減にしてよ!何がしたいのよ!」
最終第7階層のラストモンスターの部屋の前…
30名ほどの生徒たちが立ち止まっていた…正確には足止めされていた。
「だからー何回も言ってんだろう。無理だってラスモンの扉を攻撃したって。絶対に破壊なんかできねーよ。それに元々この扉には鍵なんてない。扉の鍵を作る、どんな扉の鍵をも開閉する、それが俺の盗賊のエキスパート・スキル魔法の専門だ。」
「そんなこと、一々説明くれなくてもわかってんだよ!黙って早く、この鍵を開けろっつてんだろ!」
「よーし、そんなら、お前が鍵をあけるまで1発づつ殴るからな。後で謝ってもオセーぞ!」
「待ってセリイグ、それは乱暴よ!私たちは勇者なのよ!」
「そうよクレアの言う通りよ!やめなさいよセリイグ、ディーンが来たら説明して開けてくれると言ってるんだから待ちましょうよ。」
「本気で言ってるのか、お前ら。こんな狭い1つのところに止まってると、この階層のモンスターが大挙して大群で押し寄せてきたとき、防ぎようがねーぞ!今は合同チームのように全員で対応できるからいいが。いくらD難度のダンジョンといった低級ダンジョンでも、ラストモンスターはC難度。このあたりには、C難度のモンスターが出現してもおかしくない…そしたら」
「で、出た!リッチーだ!リッチーが、ワーウルフとゴブリンを使役した混成の…」
パルマンが、細長く曲がりくねった最終回廊を、息急き切って走ってきた。セリイグたちは、息切れしてしゃがみ込んだ、パルマンに駆け寄った。
「お、おいパルマン!何かの間違いじゃないのか?リッチーといったらアンデッドマスターに近いモンスターだぞ!C難度…下手すりゃB難度じゃないか?」
「数は?パルマン、モンスターの数はどうなの?」
「どんどん増えてる。なんせリッチーは、それが奴お得意、低級モンスターのたちの支配と統率の魔法だからな。いまはざっと50ぐらいだ。だが倒しても倒してもキリがない。どんどん集めてる。」
「だろうな。リッチーを倒さない限り、もしくは、ラストモンスターを倒さない限りずっとエンドレスだ。おいロックズ!お前もまだ死にたくなだろ!お前が扉を開けてくれたら俺のパーティーで、ラストモンスターのほうだったら倒せる!だから早く開けろ!」
「何してるの?セリイグの言う通りよ、あなたも危険なのよ!」
だがロックズは、目をつぶり頭を抱えて座り込み、震え始めた。
「どうしたロックズ?」
「だ、ダメなんだ!」
セリイグとクレア、ベイル、マイアの4人は顔を見合わせた。
「一体何がダメなんだよ?」
「そんなことをしたらディーン様に殺される、どうしたらいいんだ!?」
「ディーン様?おいおいロックズ、ディーンは同級生だぞ。いくら何でも、様とか殺されるとか…」
「おーい、みんな助っ人だ!」
「ウーハイどうした?」
「リッチーたち全員を、ディーンたちパーティーが全滅させてくれたよ。しかも一瞬だよ一瞬。さすが今年のトリプルAだけのことはあるよ。これで俺たち全員助かったよ…と、どうしたんだロックズは?」
そこへリッチーを倒し、得意満面のディーンたちパーティーを先頭に、他の生徒たちを伴って現れた。いまやラストモンスターの部屋の前に、ダンジョンにアタックしたバイシーズクラスの生徒全員が集まった。
「ロックズ。」
「はいディーン様!このように全員足止めしました!」
先ほどの怯えは嘘のようになくなったロックズが立ち上がり、ディーンに報告した。セリイグたちは、それが主人に駆け寄る、まるで犬のように見えて呆れた。
「よくやったロックズ、これでお前は俺のパーティーの幹部だ。」
「ありがたき幸せ!へへへへ。」
「ディーン何の話よ。」
ディーンたちパーティーと一緒にきたオードリーが尋ねた。ロビン、シルキーもいる。
「ふっ待ってろ。いま全員に説明してやるから。」
そう言うと、ディーンは少し高い岩場の上に立った。全員を見下ろしている。すると、ディーンのパーティーメンバーとロックズも、その岩場の前に全員整列した。異様な光景だ。
「パイシーズ諸君、俺の…いや私の話を聞け。そして従え!」
「何だ?なにいってんだディーン。おかしくなったのか?」
セリイグが腕組みしながら言った。
「黙れセリイグ!ディーン様の尊いお言葉を聞け!拝聴せよ!」
幹部に取り立てられたばかりのロックズが叫んだ。先ほどの怯えぶりが嘘のようだ。
セリイグは、クレアの顔を見た。クレアは抵抗するだけ時間の浪費とばかりに、首を横に振るので、セリイグは両手を広げて、やれやれとため息をついた。
「よーし貴様たちは、今から全員、私の部下になれ!」
「なっ?おい何言ってんだ!冗談もたいがいにしろ、もう許さんぞ!」
一旦収めたはずのセリイグだったが、怒りを露わにして、ディーン目掛けて走った。だが、ディーンのパーティーメンバー数名に、瞬く間に地面へと組み付されてしまった。
「おっと全員動くな。別にやりあおうってわけじゃない。まず私の話を…いまから私がこの世界の構造について教えてやる。いわゆる学校では教えてくれない話だ。話だけなら聞いても損ではあるまい。おい、セリイグを放してやれ。」
「テテテテテ…」
「大丈夫かセリイグ!」
ロビン、オードリー、そしてシルキーが駆け寄った。セリイグは、いまや壇上と化した岩場の上から見下ろすディーン・シャイニーを敵意を向けて睨んでいる。
「すまなかったなセリイグ。手荒いまねはよせと部下には言ってあったのだが…私への強い忠誠心ゆえのこと、許せよ。」
「この世界は大魔王がなくてはならいんだ!」
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