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1-10 パーティー対決

地下ダンジョン第5から第6階層

【10】パーティー対決


第5階層 30時間経過。


「これで階層全部把握したな。」

「もう私たちの庭みたいね。」

オードリーがいう。

「でも、モンスターにとっては迷惑かも。」

シルキーが、冗談めかして、かぶせるように言った。もうチームとしては、互いに信頼しきっている。

「そうかもね…でもモンスターってどうして倒すと跡形もなく消えちゃうの?シルキー知ってる?」

「そうねえ。わたしが聞いたことがあるのは、モンスターは生き物じゃなくて、魔の物。魔力から産み出された物、つまり魔物だからと。だから、倒しても倒しても、魔物の元になる魔の力を帯びたものがなくならない限り、魔物は消えないと言われている。」

「だから、ダンジョン階層はとても広いのは広いんだけど、だとしても8組ものパーティーが、同時にダンジョンアタックしたら、すぐにも全滅させてしまっても不思議じゃない。でも、後から後からモンスターが現れるのは不思議だなって思っていたけれど…そういう意味だったんだね。」

ロビンが、最初は無色透明だったライタルストーンが、モンスター達を倒すたびに変色していくこの石の不思議を考えながら、感慨深げに言った。

(もしかしたら、この石は倒したモンスター達の魔力を吸収しているのかもしれない)


「と、考えてばかりいられない。そろそろゴールを目指そうか?」

「わたしは、いつでも準備できてる!オードリーは?」

「ロビン、シルキーがいれば、わたしは大丈夫!どこまでも行ける!」

「じゃあ行こう!」


オーーーーー!


第6階層


急に大型のモンスターが増え、強力になった。その中でも、最も強力なのが、大サソリだった。鋼鉄の強度を超える外骨格が、ロビンやオードリーの攻撃をほとんど寄せ付けず、オードリー最大の必殺技のハイジャンプアタックでも、かすり傷をつけることがやっとだった。第5階層でつけた自信が、脆くも崩れてしまいそうだった。

「オードリー!幻惑お願い!」笑顔のシルキーだ。

「僕が撹乱、シルキーが止めのフォーメーションだ!」必死な顔のロビンだ。

「わかったわ(仲間を信じる)!幻惑ダンス!」

第5階層で作り込まれた、無敵のフォーメーションが、凄まじい威力を発揮した。実際、シルキーの攻撃真空の刃エアアローでフィニッシュするものの、最短の時間で、大サソリの最も弱い腹部に打ち込むことができるため、パーティーの誰の負傷もなく、体力魔力も最小限に消費を抑えることができていた。それが証拠に、大サソリが5匹同時に現れても、3人はわずか5分で全滅させた。これには本人達も驚き、連携のとれたパーティーの力とは何かを肌で実感した。

そんな時だった。


「おい、もしかしてオードリー?オードリー・クリスタなのか?」

オードリーが振り返ると、そこには、8人のパーティーメンバーが立っていた。聖騎士のディーン・シャイニー…オードリーを最終評価の場で、いとも簡単にメンバーから切り捨てた男だった。

「ほうー。随分、姿が変わったな。それに良くここまでたどり着いたな。」

ディーンは、ニヤニヤしながら、オードリーの頭から足まで舐め回すように見ながら言った。オードリーは、その顔と視線が嫌で目をそらした。

「連れないなあ。俺とお前は恋人の仲だろう。そう邪険にするなよ。」

「だ、誰があんたなんかと!」


「やめろ!」

「誰だお前は?」

暗がりで姿が見えにくく、ディーンは目を凝らした。

「お前…ロビンか?」

「えっあの落ちこぼれの?」

「あいつがパーティーメンバーだってのか恥ずかしい!」

「ここまでよく来られたな。ビギナーズ風情がこれ以上進んだら確実に死ぬぞ!」

ディーンのメンバーの1人が、首を切るジェスチャーをして、他のメンバーを笑わせた。


「気がすんだか?」

「はっ?」

「気がすんだかと聞いたんだ。」

「何言ってんだお前!生意気だぞ!」

「オードリーは、僕のパーティーの大切な仲間だ!侮辱は許さない!」

「何を!」

「おっと待ってね!そのロビンも、オードリーも、わたしの大切な仲間よ。何か妙なそぶりをするなら、例え生徒でも容赦はしないわ!」

風をまとった、緑色の美しい髪のエルフが、全員が立っているところよりも高所から現れた。


しばらく、ディーンもシルキーの美しさに見とれた。他の者も同様だ。シルキーが高所からフワリと舞い降り、ロビンとオードリーの前に立ち、2人を護る構えをとった。

「いつでも何人でもかかってきなさい。あなた達が束になっても、私たちパーティーには絶対に敵わない!」

「何!」

2つのパーティーが睨みあいになった。

「まあ待てよ。」

止めたのは、ディーンだった。


「いいぜ、やろうぜ。パーティー対決をよ!」











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