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朱に交われず、赤くなる  作者: なおさん
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口は見た目ほどにものを言わない

ついにここから物語が動き出します!まずは主人公の紹介と、これから起こる重大事件の発端を書いてみました。前回より長くしたのでじっくりお読みください。

時に救って感謝され、時にねじ伏せて恨まれる。目的を持たぬ彼はただ言われるがままに仕事をしていく。それが彼にとっての常識となってしまっており、今更そんな生活に疑問を抱くことも無い。自分がしたことで誰が更生しようが、誰が破滅しようが、そんなことは彼にとっては知る由もない余談に過ぎない。だが、止まりかけていた歯車が動き出すのはいつも突然であり、人の転機も突発的に訪れる…それこそが彼がこれまで無視してきたことを無視できなくなるきっかけとなるのである…



ルーベル紀1421年 10月01日

ズバシッ! その音が響くと同時に倒れゆく男たち。しばらくは動けない状態にされた男たちをしり目に、その男たちを切りつけた赤髪の17、8歳程の少年は先程の音を響かせる原因となった刀を鞘に収め、その場をあとにした。人通りの多い大通りに出てようやく安堵の息をもらした少年は、大きな伸びを1つすると、ちょうど目に止まった目前のコンビニに歩を進めた。

「はあっ、マジだっっっる。たかが事務所から金パクられた程度で大袈裟に始末したがんじゃねーよ。こちとら薄給なのにどれだけ命はらされると思ってんだよ」

蓄積した疲労のあまり、そんな愚痴のような独り言をこぼす。そんな言葉に反応するものがいるはずもなく………いや、いた。その人物はコンビニの自動ドアの手前までやってきていざ入店しようと試みた少年の首根っこを掴んでそのままコンビニの裏路地まで引っ張ってった。少年の抵抗も功をなさず、ズルズルとやられるがままに連れていかれてしまい、その人物が引っ張り終わると、掴んでいたその手を少年の耳に掴み変え、鼓膜が激震するかのような勢いで

「こんのっ大馬鹿モンがっ!始末だの命はるだのと物騒なこと呟く帯刀した不良少年がよくもこんな人目に付くところでなんの警戒もせずに息抜きできるねっ!よく言い聞かせてんだろ!しっぽは簡単に飛びでんだから自ら断つことになる前にその要因たる己をまずは滅しろってねっっ!てゆーか仕事の最中にオメェは何1人で終わった感じの空気出してウヤムヤにして強引に締めようとしてんだゴラァ!」

と言い放った。 やけに威勢がいいその人物は言いたいことだけ言うと掴んでいた手を話して少年を適当に突き飛ばした。

「意識が…揺らぐ…耳が…イカれる……こ、この、…殺人…不協和音…発生…クソ女が…」

「んだとテメェゴルァァー!その口はんーな戯言生むために動かしてんのかゴルァァー!」

少年に生意気を言われた口調の荒いその人物は以外にも整った顔立ちをしていた。若干ピンクがかった銀髪に深緑のワンピースを身につけているその人物は少年よりも1歳ぐらいほどは年上だろうか、背丈は少年よりも少し高く、凛としている少女だった。よく目を凝らしてみると、その少女も刀を一本、腰からぶら下げていた。この少女を知らぬ人物ならばさっきの暴言を発したなどとは到底信じられないほどの清楚なイメージの容姿だったが、口は見た目ほどにものを言わなかったようだ。

「…しっかし姉御までわざわざ動かされるほどの規模になっていようとは」

「確かに、いくら奪われた現金の奪還を兼ねた復讐だからってここまで動員する必要はなかったと思う。」

2人は今回の案件の顛末にどうも腑に落ちないところがあるらしく、ひっそりとした路地裏で考え込むのであった。


ここは人類領の都市の一つ、デキム街。世界はあの事件をきっかけに分裂し、それぞれの5つの種族が統括する領土が生まれた。その中の一つである人間たちによる領域を俗に人類領と呼んだ。ここはそんな人類領の中でも特に治安の悪さで評がある街、デキム街。様々な犯罪組織がこの街に根城を構えており、中には敵対種族が人類を殲滅するための拠点の支部を築いているという噂まで出回っている。

先程の2人の少年少女らは、長らくこの街の中でで『人斬り』と呼ばれる活動をしていた。その活動内容は、報酬さえ用意されればいかなる人物でさえも、そのアジトに単身で乗り込んででも斬り捨てる、というものだった。仕事の内容が内容なだけに、恨みを買うことも少なくはなく、多くの『人斬り』はかつて斬った奴の部下やら仲間やらからの怨恨で殺されてしまった。そのため、現状では裏社会で生きる者達の知る中では『人斬り』に該当する人物はこの少年少女二人しかいない。

少年の名はアレスト・カリヤ。幼少期に、刀1本だけを持って記憶を失った状態でこの街をさまよっていた所を『人斬り』の一人に発見され、以降はその人物にこの街での生き方を教わって『人斬り』として生きてきた。それをこの街での生活の基準だと考え込んでしまっていたアレストは、もはやこの生き方になんの疑問を持つことも無く、ただ生きるために自分がしたいと思ってやっている訳でもないこの仕事を全うしていた。当時のアレストの若さ故の認識であったと言える。

少女の名は無い。本人ですらも知らないのだからおそらく本当に無いのであろう。少女も元は捨てられていた赤ん坊で、『人斬り』にアレストよりも数年前に拾われたのだ。アレストは、自身の名だけは覚えていたからこそ、その名前を名乗ってはいるが、捨てられていた赤ん坊だった少女が自身の名前を知るはずもなく、少女を拾った『人斬り』すらも名を与えなかった。人を斬ることを生業とはしているものの、行き場のないものを目にすればほっとけないという、仕事に見合わず無駄にお人好しな性格だったその『人斬り』は捨て子の面倒を見ることになってしまったものの、自身が今までそうであったように『人斬り』としての生き方しか知らなかった。故に、彼女を見殺しにしないためにはこの街での生き方を教えて、自分と同じ『人斬り』としての生き方に適応させていくしかなかったのだ。名前を付けなかったのは、これが恨みを買う仕事であると分かっていたからこそ、敵に覚えられるような名を残さずに少しでも長く生きながらえて欲しいとの願いのもとでのことだった。これは自分の勝手な良心で彼女の人生を狂わせてしまうことへのせめてもの『人斬り』にとっての償いでもあったのだ。まあ、名前がなかったことで周囲の者達からは勝手に『ノーネイム』と呼ばれているのだが。


そんな身勝手な社会の中で生きてきた二人はいがみ合いながらも、アレストはノーネイムを姉弟子として、ノーネイムはアレストを世話がやけるがちょっと可愛げのある弟弟子として互いに支え合って『人斬り』の生き残りとして必死に生きてきたのだ。この生き方に慣れているからこそ、今回の仕事にはどうしても二人には解せない部分が存在した。

とある暴力団事務所に何者かが裏口の鍵を壊して侵入し、現金を奪っていったので取り返した上で始末して欲しい、という依頼内容だったが、自分たちと同じ依頼を受けたという暴力団仲間やら殺し屋やらが数十組をゆうに超えていた。察するに依頼をしてきた暴力団事務所は知り合いの組織や、下部組織などを総動員して現金強奪犯を始末しようとしているのだったと二人は考えた。この街での奪い合いなんかは日常茶飯事であるため、どこかに依頼を出せばその日中にも解決することはあるのだ。だからこそ、この当たり前となりつつある仕事にこの人数は多すぎだろうと、どうしても疑問に思うのである。なんならアレスト1人でも何とかなれるぐらいの程度の話であった。

至らない点はまだ他にもあった。さきほどアレストが斬った男たちの行動が異常だった。金を奪ったのだから早く逃げればいいものを、フラフラとした足取りで道を塞ぐかのように横に並んでノロノロと走っていたからである。あっという間に倒されたはいいものの、誰も札束1つ所持していなかった。しかもこんなことは何度も続いた。依頼主から犯人の居場所が特定出来たと知らされる度にそこに向かわされてはあの男たちと同じ行動をとる男たちに遭遇し、同じ流れの繰り返し。アレストが自分で犯人を捜索しても良かったのだが、倒し終わっては強制的に次の場所に向かうように指示される。しかも反対してもそこへ行かないと報酬を支払わないどころか自分の首も斬るというのだった。そんな理不尽を突きつけられ続けたためうっかり職務放棄しそうになっていたところをノーネイムに怒られたところだったのだ。

「もう気づいてはいるんでしょうけど、こいつらの他に主犯が存在してそいつを逃がすために邪魔をしているにすぎないのよ」

「それだったら今回こんなに大勢でとっ捕まえようとしてんのも頷けっけど依頼主はそれが最初からわかっていたのか?」

アレストがそんな疑問を口にした次の瞬間、

ドガガガガーン!二人のいる場所から数百メートル先のビルが大きな音と煙をあげてまるで地面に沈んでいくかのように倒壊し始めた。

「えっ、はっ?こんな真昼間っからテロでも起きたってか!?」

「ま、まさかあの場所って……………………………やっぱり!」

ノーネイムは今倒壊しているビルに見覚えがあったようで、スマートフォンを取り出して何やら調べてみると驚きの声を上げた。

「あそこはこれからあたしらが向かうはずだったところよ!」

「てーこたぁ、依頼主はあそこに俺たちを向かわせようとしたってか?」

「ええ、既に私ら以外の同業者共はみんなあそこに向かわされたようね。」

「なら奴らはあれに巻き込まれちまって………ん?待てよ?邪魔をする男ども…俺らを誘導する連絡…大勢の同業者…なるほど、嵌められたっつーわけか」

「その認識で間違いないと思うわ。私らに依頼を出したそいつはこの街の実力者を潰すことが目的だったっつーわけね。」

そう、アレストの転機はこの事件から始まった…


この事件を経てアレストはどんな運命をたどるのか?今回の話は序章の前編と言った感じになっておりますので今後にもご期待ください!

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