ヤンキーの命は最後
壁から手が突き出て壁に穴が出来た。
まるで壁から手が生えているような異様な光景に、
澤田も犬もさっきまでの険悪さも忘れそれを凝視している。
澤田は手に汗すら握っていた。
動かない二人をよそに、その手は開いたり握ったりして壁からの脱出を試みる。
しかし諦めたのか、手は動かなくなる。
しかし不思議なことに手を抜こうとする際にできたひびの進行は止まるどころか速くなっていく。
大きく広がっていくひびは巨大な蜘蛛の巣のようになり、
ーーー弾けた。
壁の、破片から岩のような大きさまで大小の石つぶてが澤田に襲いかかる。
澤田は慌てて回避しようとするが数が多すぎて意味をなさない。
結局、右足と左手と胴体に大きな負傷を負った。
「ぐぐぐッ」
石つぶての勢いに吹き飛び倒れてしまった澤田は歯をくいしばって痛みを抑える。
思わず足を手で押さえるが骨に鈍痛が走る。どうやら足にもひびができたようだ。
「よう。大丈夫か、坊ちゃん」
不意に上から馴れ馴れしい声が聞こえて、澤田は慌ててバッと顔を上げる。
そこにいたのはさっきの人攫いと同じ服を着ている化け物だった。
何故なら、息を飲んだ澤田を見下しニヤニヤと笑っているように見えるそいつの顔には、
骨しかなかったからだ。
そして澤田はもう一つ気づいた。
ーーー自分が今日ここで死ぬことを。