ヤンキーの目はかわいい子を入れたら痛い
袋は意外にもなんの抵抗もなく開いた。
少し疑問を抱きつつも、恐る恐る中をのぞく。
次の瞬間、澤田の目にあるものが飛び込んできた。
隠喩ではなくて物が澤田の目に向かって飛び込んできたのだ。
澤田の目はそれと体当たりする。
もちろん大ダメージ。
「ギャァァアアア!!」
澤田は状況も忘れて叫んでしまった。
そしてその物はそのまま顔にくっつき、澤田は息ができなくなる。
引き剥がそうとその物を掴むが全然顔から離れる気配がない。
「ウガァァア!」
澤田はのたうち回りそれを引き剥がそうとする。
壁に叩きつけたり、殴ったりとしているとそいつは小さな悲鳴を出しながらようやく顔から離れる。
自由の身となった澤田は体勢を崩したまま、さっきまでくっついていた者を見る。
全身が緑色で染められた毛皮で包まれ、顔は黒い真珠が二つ、線対称でくっついている。真ん丸の体から短い四肢が突起しており、先端の小さい爪がなんとも愛らしい。
簡単に言えば緑の真ん丸な犬というイメージだ。
もっと言うとス○モの犬バージョンだ。
犬は澤田に3メートルほど飛ばされていたが直ぐに体勢を立て直しギロリと澤田を睨んできた。
牙をむき出しにし、完全に澤田に敵意を向けている。
対する澤田は、
まだ中二で短気だとはいえ、徐々に大人に成長して犬のイタズラぐらいへでもないと感じてほしい澤田は、
完全にブチギレていた。
犬の比ではないくらい牙をむき出しにして、目は釣りあがり、逆立つ髪は更に逆立つ。
その形相、まさに鬼。
姿勢はとても低めで、手は大きく広げられて、前の方に配置されてある。なんの武術や技術も感じられず、ただただ暴力が感じられた。
しかし大の大人も尻尾を丸めて逃げるであろうその恐怖に小さな犬は物怖じせず足を前に出す。
澤田も負けじと足を出し、距離を詰めていく。
ケンカの始まりだッ!
そう締めくくりたいところではありますが…。
ドゴォォォォォッン!!!
突如、横の壁が全体に亀裂を走らせた。蜘蛛の巣のように広がる亀裂の中心には握り締められた腕があった。
どうやら乱入者のようです。