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魔王様とお友達  作者: 湯野瀬 蒼
3/3

歓迎会

 100人は余裕で入れると思われる食堂。そこには魔王とクロノとオレという3人しか座っていない。給仕をしているのは先ほど紹介されたルシフさんただ1人である。

 そんな中、豪華なコース料理が次々と運ばれてくる。

 オードブルはフォアグラのテリーヌ。フォアグラはこの世界でも珍味とされているらしい。フォアグラに適した生物の数が非常に少なく、繁殖プロジェクトが行われていると言っていたのはクロノだったか。

 スープはコーンクリームスープ。舌触りがインスタントに比べとてもなめらかで、味も濃厚だった。コーンは糖度が高いものを厳選したと魔王はどや顔をしていたのが印象的だ。

 次に白身魚のポワレ。白ワインで蒸した魚はふっくらとしていて、口に入れるたびに彩り豊かな野菜で作られたソースと魚がハーモニーを奏でた。

 グラニテとか言われたものはグレープフルーツのシャーベットみたいであった。ちなみに、グラニテとは口直しとして出されることの多いシャーベット状のものであり、次の料理を十二分に楽しむために、さっぱりとしたものにしていると教えてくれたのは給仕をしていたルシフさんだった。

 次に肉料理。鴨肉の赤ワイン仕立てと呼ばれたそれは、歯ごたえがあるがお肉の脂っこさがなく、いくらでも食べられるようだった。

 デザートはフルーツ盛り合わせであり、オレンジやイチゴ、りんごなどが飾りつけられていた。


 食事の最中、魔王たちとの会話はかなり弾んだ。ただ友達がほしかったという魔王のわがままがわかった時のことを思い浮かべながら、


「……魔王、嘘つくの下手すぎだろ。」


「っ!? ゲホゲホッゲホッな、なに、を!? 」


「ち、父上、大丈夫ですか……? 」


 といったやり取りをしたりもした。なお、今現在のことである。

 咳き込む魔王をクロノが少し心配そうに見つめる。

 クロノに大丈夫と伝えた魔王は咳払いをして、ジロリとこちらをにらんでくる。

 いくら友達になったとはいえども、やはり魔王は独特な迫力ある。睨まれると怖いな……。


「はぁ、今までも吐いた嘘がすぐバレてしまう……。 やはり我は嘘が下手くそなのだな! ルシフに至っては一瞬でバレてしまうしな! まあ、そんな嘘をつくなどという姑息な手を使わんのでもやりたいことは出来るから問題は無いのだがな!」


 テーブルに一度視線を落としてから、開き直ったかのように言い切った。言い切りましたよこのお方。


 食事の途中で、魔族の現状や他国との関係をさっくりと教わった。魔族は昔から実力主義であり、下剋上はよく起こるが、それは上の者に力が無いだけであるために統治者の不始末という扱いになる。魔王に関しては戴冠式の際に、身に宿した圧倒的な魔力と圧倒的上位者ということを知らしめるために、反逆者どころか近づくものもいないのだという。

 また、外交に関しては人間が魔族に対してよい感情を持っておらず、魔族も人間を弱い生き物と見下しているところがあり、人間との外交はないのだそうだ。魔族同士はどうなっているのかと質問したら、魔族に属するすべての種族はすでに統治下であり、外交なんてものは存在しないという。

 そのような状態ならば、嘘をつく機会や、必要性はないのだろうな。言い方からして思ったこと、やりたいことをそのまま言えば通るのだろうから。


「そっか……。まぁ、だったら安心だな。」


 と魔王に向かって笑みを浮かべてやった。


 魔王は不思議そうな顔をし、

 代わりにクロノが「何でですか?」と聞いた。


「だって、魔王やクロノはいつも本音を話してくれるんだろ?

 だとしたら、騙そうとしないだろうし、裏切られることも無さそうだからな。」


 友達になるなら最高の友達になれそうじゃないか?と、オレはとびっきりの笑顔で言い切った。


「……そう言うものなのか?」


 オレの言葉を聞き魔王はよくわからない、という表情を浮かべる。 やはり今まで他者と関わっていないとわからないよな。


 しかし、人間世界で過ごしていたオレの周りでは嘘やお世辞などは日常茶飯事であった。そんな中でもストレートに物事を言いつのってきた人はいたのだが。……その一人である高校からの後輩はオレが消えたらどうするのだろうか。2年前、炭酸を一気飲みして「僕は先輩のことが大好きなんで! どこまでもついていきます! 」と宣言していたのを今でも覚えている。

 まあ、いろんな人間がいるからこそ素直な物言いをする人物が輝いて見える。魔王もクロノも、人間とこれから関わることがあれば少しでも理解に近づくのではないかな。



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