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百合っと皇女の猫  作者: WAKA
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アリレリア 4

最初はアウレリア、次にアリスと視点が変わります。


アリレリアはここで一区切りです! ようやく全ての主人公たちのカップリングを書けましたので、今後はちょっと遊びで色々と書いていきたいと思います!

 もう誰でもいいって、そう思っていたのに。

 

 王子はこの城には幽霊が出るなどと言って、国へ戻ってしまった。臆病な王子を追い出したのは幽霊ではない。わたくしには心当たりがある。

 その人物は、昼の二時に自室で惰眠を貪っていた。

 部屋着のままうつ伏せでソファに寝ころがり、組んだ腕に頬を乗せてのお昼寝。窓から差し込むうららかな陽ざしに温められて気持ちよさそうに眠っている。

 寝顔が見られるチャンスだったから。起こさないようにそっと近づいて、覗き込んでみる。残念ながら整った綺麗な顔は、銀色の髪に隠れて半分しか見えない。


――綺麗な横顔


 艶やかな頬を指でつっつきたくなる。アリスはわたくしを起こすとき、いつもそんなふうにしているからお返しに。

 

 小さい頃はよく一緒に眠ってもらった。幼いわたくしに、あの部屋は暗くて広すぎた。一人で眠るのが恐い時、アリスを呼んだ。呼べばすぐに駆けつけてくれた。アリスが側にいてくれれば、安心して眠ることができた。


「アリス」


 呼びかけても起きる気配がない。


「王子を追い出したのはあなたなのでしょう? ねえ、どうして。なぜですの?」


 王子と過ごしていた時は、少しも楽しくなかった。そんな気持ちを見破られてしまったのかしら。

でも、だからって・・・・・・わたくしの気持ちを拒絶しておいて、わたくしを守るようなことをするなんて。あなたが何を考えているのか、わかりませんの。


 吐息の音が聞こえない程、静かに眠っている。くびれたわき腹が上下していて、規則正しく息を吸って吐き出しているのが伺える。


「わたくしのことは放っておいてくれればいいのに、助けるような真似をして。それなのに、わたくしが一番欲しい言葉をくれない」


 傍にいてくれるのに、好きになってはいけないなんて。それがどれだけ残酷なことか。


「あ」


 そこで、はたと思いついた。


――今なら


 膝を屈めて、そっと頬を寄せてみる。


 こんなことをすれば余計に辛くなるのはわかっていた。でも、どうしようもなかった。


「っふ」


 今までずっと、これだけはしないようにと戒めてきた。けど、一度心に決めれば、驚くほど簡単にすることができた。


 アリスとわたくしの唇が重なる。


 初めての口づけは、とても柔らかくて甘い味がした。


 きゅぅん、と胸の奥から生まれた疼きが体中を痺れさせる。愛しい人との口づけは、これほどまでに感情を締め付けるものなのか。


とても耐えられない――


「あれ」


 目頭が熱くなっていく。

 だめ、ここで泣いてしまうわけにはいかない。

 立ち上がろうとすると、服の袖を引っ張られた。


 アリスがわたくしを見ていた。


「アリ、ス」


 全身に冷気が走った。一体いつから起きていたのだろう。

 アリスは何も言わず、じっとこちらを見つめていた。

 わたくしはどんな顔をしているんだろう。最初はぼんやりとしていたアリスの目が驚きに見開かれて、今は心配そうにこちらを見て表情を曇らせている。きっと、ひどい顔をしているんだ。


「なんで泣くの?」


 アリスが言った。


「だって、わたくし――」


「・・・・・・あんた、私にキスしたわね?」


 ドキっと心臓が跳ねる。

 ぽろぽろと涙が零れ始めた。


「これは、違いますの。ただ、その」


 取り繕おうとすればするほど、涙の勢いは増していく。涙声になっている自分がみすぼらしい。アリスの前では綺麗な姿でいようと思っていたのに、もうそれも無理。

 キスをしたこともばれてしまった。どうしよう。もうキスをする前には戻ることができない。


・・・・・・・・・・


 アウレリアは涙を拭いもせずに、肩を震わせて泣いた。

 本当にこの子は小さなころからよく泣く。

 そして、その涙を止めるのはいつも私の役目だった。


「こっちに来なさい」


 アウレリアの手を掴み、こちらへ引き寄せて抱きしめた。ぎゅっと抱きしめてあげるのはいつぐらいぶりだろう。この子の肩は小さくて、我儘で気が強いけど脆いところもあって、なんだか色々と面倒くさいけど――愛おしい。


「アウレリア」


「はい」


「私は怒っているのよ」


 彼女の両頬を、力を込めて掴む。


「アウレリアのことは大切に育ててきたのに。それなのに誰でもいいなんて、自分を貶めるような真似をして」


「だって・・・・・・」


「だってじゃないわまったく。そんなだから襲われそうになるのよ。あのね、私が見張ってなかったら、あの王子はあんたの部屋に夜這いに行くところだったのよ」


「よばっ!?」


「性欲猿にあんたを汚されてたまるもんですか。私は間違ったことはしていないわ」


「・・・・・・助けてくれたんですの?」


「ええ」


「わたくしのために、ですの?」


「アウレリアのためよ。いつだって私はそうしてきたのに・・・・・・気づくのが遅れてしまったわ」


 細いうなじに手を回し、強引に顔を引き寄せた。


「あんたが誰といるのかは、今後は私が決めるわ」


 驚いたのかビクっとアウレリアの体が跳ね、それで唇の狙いが逸れた。そっとキスをしたつもりだったのに、互いの歯がガチッと当たってしまった。

 むすっとした視線を向けると、頬を薄紅に染めたアウレリアがオロオロし始めた。


「あの、ごめんなさ。驚いてしまって」


「そういえば、アウレリアはキスしたことなかったわね」


「さっきのが、初めてで」


「なら教えてあげる」


「っきゃ」


 手首を引っ張って、壁側にドンと押し付けた。


「だから、動いてはだめ」


 羞恥に俯くアウレリアの頬を持ち上げ、そっと唇を重ねた。小さくて柔らかなはずの唇は固く強張っていたけど、優しく挟み込むように愛撫してあげたらやがて柔らかみを取り戻した。

 キスをしながら肩をさすったり、頬をぷにっと摘まんでみたり。色々と悪戯をするたび、アウレリアの体は小さく震える。


「きもちい?」


 アウレリアの首筋にキスをする。

 彼女からは薔薇の香りがする。高貴で美しく、とても香しい。キスだけでは物足りなくなって、舌先で首を舐め上げてみた。


「ひゃうっ」


 可愛らしい悲鳴が漏れた口へ、再び唇を移動させる。


「あぁ、んっ、はうっ」


 ちゅぴっ、と唇が重なる音の合間に、アウレリアの小さな声が漏れる。そろそろ苦しくなってきたのかしら?

 唇を離すと、アウレリアは緊張が解けたように呼吸をした。


「苦しかった?」


 髪を撫でてあげながら聞いてみたが、答える余裕はないらしい。

ふと視線を下げると、先ほど舐めた首筋の部分に金色の髪が張り付いてしまった。指先でそれを拭って、ふっと息を吹きかけると、アウレリアはまた小さく震えた。


 感度がいいというか。感じやすい子。


「ずっと私とこういうことしたかったの?」


 アウレリアは俯きがちに、コクンと頷く。素直だ。モジモジと体を捩るのが可愛らしい。


「アリスは?」


「ん?」


「わたくしと、こういうことをしたかったんですの?」


「そうねぇ・・・・・・よくわからないけど」


「っ!? わからないって!」


「でも、どこぞのバカがあんたの手に口づけたのを見た時は吐きそうになったわ」


 再び頬を包み、強引に唇を重ねる。


「んむっ」


 最初は驚いていたアウレリアも、今はゆったりと唇を開いてくれるようになった。

 二度目のキスは、舌を入れてあげた。

 甘い。

 この子の唾液はとても甘い。

 頬も、肩も、何もかもが柔らかい。弾力のある肌は手に吸い付いてくるようだ。

 胸はどうなのか、直接触って確かめたくなった。

 そっと、彼女の胸に手を回す。胸、というか。年齢が年齢なだけに、そこまでご立派なものではないけれど。


「あっ、まっ、待ってくださいな」


 私の視線から逃れるため、顔を背けていたアウレリアが急にこちらを見た。耳たぶまで真っ赤に染まっている。


「そこは――」


「くすぐったい?」


「恥ずかしいですわ」


「なら何万倍も気持ちよくしてあげる。そうしたら、恥ずかしさなんてどこかへ行ってしまうわ」


「あうっ!」


 胸元をたくし上げると、彼女の胸が露わになった。

 ぷるん、と柔らかく、それでいて突起は綺麗なアーモンドの花の色。さすがは国の頂点に立つ皇女。肌の質も、美しさも群を抜いている。

 軽く指先で弾くと、アウレリアの小さな悲鳴が漏れた。


「アリス」


「なに?」


 アウレリアは、私の背に手を回して痛いくらいに抱きしめてくる。


「どこにも行かないで。一人にしないでください」


「行かないわ」


「一緒にいて。わたくしを必要としてください」


 バカな子。

 もう私はとっくに、あんたの虜になっているのに。

 透明な液体を絡め合えば、彼女の甲高い嬌声が生まれる。その声はとても美しい。身を捩ったり、弓なりに反ったりする体も美しい。白くて小さな体は、名高い彫刻家の作品のようだ。


「アウレリア」


「アリス」


 互いに絡み合い、もつれ合って、一つになりたい。

 抱き留めた薔薇の花びらからは、世にも香しい一滴の水が生まれる。その温い水は私たちの体に溶けて、やがては鼓動の源となる。


「いいですわ」


 アウレリアは静かに上着を脱ぎ始めた。


「アリスにもらってほしいんですの。ずっとこの日を夢見てきたから」


 私に全てを捧げる覚悟の瞳。その決意の輝きを、いつまでも保存しておきたいと思った。

 いいわアウレリア。あんたがその気なら、私だって。


「アウレリア、あんたは私だけのもの」


 コンコン

 

 ノックの音が響いた。あれだけ熱のこもった吐息を漏らしていた私たちは、一瞬で現実に戻される。


 ガチャリ


「失礼します。アウレリア様、お借りしていた本を返しに――え!?」


 ピア・フローリオ。ソニアが大事にしている子がいきなり現れた。

 このタイミングで、なんて間の悪い。


「・・・・・・」


 ピアは完全に固まっている。わざとじゃない、とか。やってしまった、とか。どうかお許しを、とか。色々と混ざった感じの表情をして、口をぱくぱくと動かしている。


「ピ、ピピピ、ピア」


 アウレリアもまた顔を真っ青にしている。上半身をさらけ出した所を見られたのだから、それはそうか。

 仕方ないわね。


「ねえピア」


「ははっ! はいっ!」


私は目に力を込める。


「あなたは本を返しに来ただけで、部屋には誰もいなかった」


「私は、本を返しに来ただけ。部屋には誰もいない」


「机の上に置いて、すぐに立ち去りなさい」


「机の上に置いて、すぐに立ち去ります」


 ピアはトコトコと歩いて、机の上に本を置くと、何事もなかったかのように部屋を後にした。

 どうやらうまくいった。

 私の“力”は、心が不安定というか、信念が失われている相手であれば、少しだけ操ることができる。見なかったことにするのが、お互いのためだ。


「あの、アリス? 今のは?」


「ああ、心配らないわ。覚えてないだろうから安心しなさい」


 ほっとお互いに息を吐く。

 そして互いに笑みを零した。


「まったく、何をしているのかしら私たち」


「本当ですわね」


「続きはまた今度ね」 


 アウレリアをぎゅっと抱きしめて、彼女の香りをいっぱいに吸い込んだ。


「ええ。また今度」


 アウレリアは嬉しそうに呟いた。


ちょっとだけ控えめなアリスでした。次回からはもっともっと激しくさせます!

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