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百合っと皇女の猫  作者: WAKA
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アリレリア 2

 数百年前、私のご先祖様は港で荷物の積み込みの仕事をしていた。家もなく住んでいたのはプレハブ小屋であったという。そこからのスタートだった。


 しかし、下積み時代で得た知恵と経験をもとに始めた海運会社が徐々に収益を得て、やがてヴェイン・ボークラークの名が世に知れ渡ることとなった。

一人の党員がこの会社に目をつけた。


 その人もご先祖様と同じで、出自は貧しい農村であったが努力を重ねて国の党員へと成りあがったらしい。互いにゼロから昇りつめたという経験があり、二人はすぐに交流を深めた。そして、党員はご先祖様にある計画を持ち掛ける。

 当時のセルシア国は国外での安全保障活動に力を入れていた。利益を得るため諸外国の経済に介入すべく奔走したが、国外の門は固く閉ざされ一筋縄ではいかなかった。しかし、海運会社として多くの情報を持つご先祖様の企業ならばそれが可能であった。

 党員の誘いに乗ったご先祖様は、海運会社の特性を生かして様々な分野で手助けをしたらしい。貿易業で培った航海の知識、対外国家における交渉力、これがセルシア国の軍事的戦略にまで大きく貢献。党員は目覚ましい出世を遂げ、懇意の仲であったご先祖様も国家の党へ引っ張り上げられて仲間入り。ヴェイン・ボークラーク家はセルシア国お抱えの大貴族となったのだ。



 大貴族として、生き方が決められたのもこの時だ。



『当家で生まれた者は国の機関に所属することが義務付けられています。人の上に立つ人物としては、できれば男児が好ましい。

 もし女児が生まれたら・・・・・・そうですね。いずれはどこかへ嫁いでもらいますが、血縁というパイプは如何な政治的理念も、果ては民族の信条すら揺るがす強力なカードとなる。対外国の党員と関係を持つのが良いでしょう。婿はこちらで選定しますので、そのつもりで』


 母がこの家に嫁いだ時、まずこう警告されたという。

 そうして生まれたのが私、フェリシア・ヴェイン・ボークラーク。

 女は道具扱い。家名を残すための器にすぎない。


 冗談じゃないわ。私の人生は私が決めたい、勝手に義務付けられてたまるもんか。

 証を立ててやる。

 女だって十分にこの世界で渡り合えることを証明してやる。

 前例がないのなら、私が最初の一人になってあげるわ。


 フェリシアの名を捨て、アリスとして生きるとそう決めた。


 そして、私を道具扱いした奴らを見返してあげるのよ。


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