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百合っと皇女の猫  作者: WAKA
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立場逆転

タイトル通りです!


アヤメ ・・・ 皇女です

クリステル ・・・ アヤメの付き人です

ふわふわと柔らかい春の日差し。

部屋に流れる空気の中に、草花の芽吹いた香りが含まれている。鳴く鳥達も心はずんでいるようだ。


桜花国の春。


クリステルが小気味良い鼻歌を口ずさみつつ、皇女アヤメの部屋を掃除していた。

ヴェルガ国から桜花国へ派遣され、皇女の付き人としてアヤメの身の回りの世話を任されている。

春の息吹きたるそよ風が、クリステルの髪を揺らす。


頭の上で結んだ金色の髪が、黒いメイド服と白のエプロン、カチューシャと相まって輝いている。


桜花国からは着物が支給されてていたが、裾が足に絡まって何度も転んだため、見かねたアヤメがヴェルガ国からメイド服を取り寄せた。「頼むから怪我しないでくれよ?」と心配そうに頬を撫でてもらえたのが嬉しくて、メイド服を纏ったクリステルは上機嫌なのである。



「あれ、クリステルいたのか」


スッと引き戸が開き、アヤメが入ってきた。


「アヤメ様」


クリステルは慌てて頭を下げる。


「ん? 私の部屋を掃除してくれていたのか?」

「はい」

「そうか、いつもすまないな」


耳元にかかる黒髪をかきあげ、アヤメは微笑んだ。


「アヤメ様、学校の方は?」

「先生が体調を崩されてな、今日は自習だそうだ。ならば部屋でやろうと思ってな」


アヤメは皇女といえど16歳、母の強い勧めで高校に通っている。


「この服なかなか動きやすくていいな」


ブレザーの下にワイシャツ。首もとにリボン。更にプリーツスカートを纏うという、桜花の皇女らしからぬ洋装である。

メイド服を見たアヤメが「動きやすそうだな」と指をくわえていたので、クリステルが思考を重ねて作り上げたのがこの制服であった。


作ってあげたら、とても喜んでくれた。

気苦労ばかりで、ふせった表情の多かったアヤメが微笑むのは嬉しかった。


「学び舎の正式な制服にしようか検討してみよう」


くるりと回ればスカートが舞い上がり、桃色に染まった太股が露になる。


「アヤメ様、スカートを履いている時そのように動かれては」


慌てたクリステルがアヤメを止める。

桜花国の皇女、下着は黒などと噂が立つのはよろしくない。


「ん? いいだろう」

「よ、よくありませんよ。人に見られたらどうするんですか」


 小さな拳を握りしめ、唇を噛んで抗議する。


「普段は大人しいのに、こういう時は怒るんだな」


 微笑むアヤメに言われてしまう。

 ぐっとこらえると、恥ずかしさで視界がぼやけてくる。

 アヤメのことが好きだからむきになってしまうのは間違っているだろうか。 


「なぁ、クリステル。ソファに座ってくれないか」

「え?」

「ソファだ――座りなさい」


命令口調は、クリステルに固辞させないためである。

よくわからないまま腰かけると、すぐさまアヤメが隣に腰かける。

驚いて身を引こうとする間もなく、肩に頭を乗せられてしまった。サラサラとなびく黒髪が、ふわりと舞って肩に降りてきた。これでは逃げられない。


「あ、あのあの、アヤメ様」


アヤメとの距離が一気に縮まり、体温も香りも、全てが近くて濃いものになる。


「来たばかりの頃は青白い顔をしていたが」


頬を染めるクリステルの頭を撫でる。


「痩せほそっていた体も見違えたな。綺麗だぞクリステル」


握りしめていた手を優しく包まれた。

カアッとクリステルはますます顔を赤くする。


「勉強するって」

「そう思っていたが、クリステルがいてくれたから。少し休むことにする。しばらく肩を貸してくれないか」


初めこそ驚いてしまったが、今はアヤメに抱きしめてもらいたくて身を寄せてみる。


「私は構いませんが――」


言いかけたクリステルがアヤメの膝に傷があるのを見つけた。


「アヤメ様、傷が」

「ん? あぁ、問題ないよ」

「問題ありますよ、薬箱を取ってきます」


クリステルは急いで立ち上がると、棚の上にある薬箱まで駆けた。

アヤメの所へ戻ると、指でちょいちょいと隣に座ることを促される。消毒液と絆創膏を手に腰かけると、再びアヤメがもたれ掛かってきた。


「やったのは誰ですか」


ごくり、と喉をならして聞く。


「知らない奴だったよ。返り討ちにしてやったぞ」


アヤメの言葉に怒りや不安は混じっていなかった。

こうなることを受け入れているような、半ば諦めているといったふうである。


クリステルの肩にぞわりとしたものが走る。

あまりの怒りで、体が震える。


クリステルの紺碧の双眸が赤く変色していくと、家具がカタカタと揺れ始め、ついで部屋全体が揺れ出した。


「クリステル」


アヤメはそっとクリステルの肩に手を回して抱き締めた。


「いい」

「けど――」

「いいんだ。だから気を鎮めてほしい。怒っているクリステルは見たくない・・・・・・クリステルは怒ると周りを滅茶苦茶にしてしまうじゃないか、私の部屋でそれは困るぞ」

 

 アヤメが頬をすり合わせると、クリステルはきゅっと身を硬くした。

 強ばっていた表情が戻り、それと同時にすっと瞳の光が萎んでいく。

 

 部屋の揺れが収まる。

 

「それでいい、もともと君はこんなふうに力を使うのを嫌がっていたんだ。送り主は何もわかっていなかったんだな」

「・・・・・・嫌ですけど、アヤメ様のためなら私は」

「駄目だ」


アヤメの手が頬に伸びる。

火照った頬を優しく触れられ、そっと唇を重ねられる。


ふにっとした軟らかな唇の感触。


言葉が浮かぶ唇を押さえられては何も言えない。それに、優しく体を撫でられると、怒りが削がれてしまった。



アヤメは唇を重ねるのを止めた。


そしてクリステルの瞳を見た。

目に涙の膜を張る、その紺碧の瞳を。


アヤメが指先でクリステルの脇腹をつついた。


「きゃっ」

「ふふ、くすぐったかったか?」

「アヤメ様、あまりからかわれては」


首に手を回され、胸元に抱き締められる。

 柔らかく温かい。

 この方はいつも私のことを優しく包み込んでくれる。


「私の味方になってくれたんだろう? ならどんな奴が来ようとかまわない。二人で追い返してやろう」

「アヤメ様」

「大丈夫だ、私はクリステルを信頼している。ヴェルガ人であるとか、命令で来たとかそういうことは考えるな・・・・・・あっ」


クリステルの頬を包んだアヤメは目を輝かせていた。


「なあクリステル、私が心配なら一緒に学校へ行こう!」

「学校へ、ですか?」

「そうだ、楽しいぞ」


表情豊かに学校でのイベントを語るアヤメは、暗殺者に狙われていることなど微塵も気にしていない様子であった。


すとん、とアヤメはクリステルの膝元に頭を乗せる。


少しいたずらっぽく微笑むアヤメを目て、クリステルの心が温かくなった。


一緒にいられれば大丈夫だ、とその瞳は語っていた。


その無限の信頼を向けられると、とてもむず痒い感情に襲われるのだ。


再びそっと唇を重ねた。


会話が途切れた、ちょっとした瞬間の間を埋めるように唇をついばむ。


「変かな、女の子同士で」


やや紅潮したアヤメが、しおらしく呟く。


こうゆう時のこの人はずるいとクリステルは思う。

いつも力強くて、目を離した隙に豪快なことをするのに。

ふとした瞬間、か弱い女の子になってしまう。


「私はアヤメ様が好きです」


頬を包んで、瞳を閉じた彼女にもう一度だけ口づける。


本編こんな感じでもいけたかな~という妄想でした!


続きません!

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