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百合っと皇女の猫  作者: WAKA
13/36

アヤルリ 6

 その夜、ルリは当たり前のような顔をして私の布団に潜り込んできた。


「何をしているんだ?」


 微笑みながら縋りついている彼女は、心なしか少しだけ震えているようだった。


「アヤメちゃんはさ、あたしのこと好き?」

「――好きだが」

「ふふ、ほんとかな」

「もういいから、自分の布団へ戻れ」

「いいでしょ。ねえ、口づけの練習しない?」

「練習?」


 私の腕を抱く力を強め、ぐいっと顔を寄せてきた。


「そ、アヤメちゃん奥手そうだから・・・・・・今のままじゃ好きな人ができた時に口づけもできないよ」

「大きなお世話だ」

「だからさ、あたしとしてみよう? ね?」


 余裕のある微笑みをしていながら、手が小刻みに震えている。彼女が抱いている私の腕には、胸の鼓動が伝わってくる。

 心細さと緊張が混じっているのがバレバレだった。

 私はそっと彼女の頭を撫でてやる。


「どうしたんだ、らしくないな」


 落ち着きのある私の言葉に全てを察したのか、ルリは丸くなってきゅぅん、と声を上げた。


「何か不安なのか?」


 ふるふる、と頭を振る。


「誰にも言わないから。思うことがあるなら言ってみろ」


 ルリを慈しみ、頭を撫でていてやると、彼女はそっと漏らした。


「あたし、どうしてこういう言い方しかできないんだろ。練習だ、なんて」

「私は気にしていない」

「あのね、あたし――アヤメちゃんのことが・・・・・・好き、なんだと思う」


 そう言ったルリの手に力が漲った。

 私を決して離さないというように、痛いくらいに腕を抱きしめる。痛みのあまり目を細めた時、顔を上げたルリと目が合った。瞳が何を求めているのか、はっきりと伝わってきた。

 お願いだから、離れていかないで。そう言っていた。


「ルリ」


 私が微笑むと、彼女は俯いて泣き出してしまった。


 っひっひ、と時折肩を揺らすその泣き方は、しっとりとしていて、敵意をむき出しにしていた面影はまるでなかった。

 本当はとてもか弱い子なのだとわかった。

 背中を優しくさすってやると、ルリの手の力が少しだけ緩んだ。


「アヤメちゃん、今はこうしていてくれるけど、いつか男の人と結ばれてどっかへ行っちゃう」

「行かないよ」

「嫌だよ、せっかく、アヤメちゃんのことわかってきたのに。あたしだって、人のこと好きになれるんだってわかってきたのに」

「ルリ!」


 彼女の頬を包んで持ち上げる。

 大きな声を出してしまったから、驚いた顔でキョトンとしていた。


「行かない」


 私は微笑んでそう言った。

 ルリの小さな体を抱きしめて、背中をさすってやる。


「だから、もう泣くな」

「・・・・・・うそ」

「――お前、ここでそういうことを言うか?」

「だって証拠を見せてくれないと」

「証拠と言っても」

「これ」


 ルリは私の頬を包み、唇をそっと合わせてきた。

 触れ合ったのはほんの一瞬で、すぐにルリは顔を放した。

 私の顔は熱を帯びていて、真っ赤であることがわかったが、ルリの顔もかなり赤みを帯びていた。

 ルリは唇の端をペロッと舐めて、恥ずかしそうに微笑む。


「甘い」


 涙に滲んだ声でルリは言った。


 まったく、警戒心剝き出しかと思えば急にこんなふうに甘えてきて。本当によくわからない子だ。

 私はルリを抱き寄せて、静かに目を閉じた。


ルリすっごく大好きです。

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