あなたにとっては些細なもの。
何をすれば良くなるのか、どうしたら良く見えるのか、それをアピールするためにはどうすればいいのか。
私にはその答えが出せなかった。私にはそれが難問だった。
「どうしたらよくなるのかなぁ」
それはふとこぼした疑問。
常に頭の中にあったものだから、ついつい口から出てしまった。
「なにをよくしたいの?」
隣にいたあなたは抑揚のない言葉づかいで返す。私は独り言が聞こえていたことを恥ながらも答えの出ていない問題を告げた。
「何もないところに何かものを足してより良くしたいの」
教師に与えられたアバウトな課題をおおまかに口にするとあなたは雑だと笑った。
「何もないなら好きなものをおけばいいじゃない」
もっともな意見だけど、それだと不十分。
「椅子がないから椅子を置くだけじゃなくて、それをおいたことで座る以上の何かをうみ出さなきゃいけないの」
へー。というあなたの興味なさげな言葉を聞きながら、私は焦燥に刈られる。口に出してしまったことでより一層危機感が生まれてしまったのだ。
「で、その何かっていうのはどんなものなの?」
え、何か?えっと......
「先生は、自然の景色とかコミュニケーションとかいってたよ?」
「あー......そういうことね」
どういうことでしょうか?
「そこを使った人がまた使いたいと思えるような魅力を提示しろってことか」
みりょく...。
「なるほど!」
「居心地のいい、お気に入りになるような空間になるために必要なものを考えるなんて大変だね」
ああ、ちっぽけだった。
私がうだうだ悩んでいたことはあなたの一言ですまされてしまったのだから。
きっとあなたはそんなこと知らずに無意識に言ったんだろうけど、それもふまえてちっぽけなんだ。
私の知識から抜け落ちたピースをきっちりと嵌め込んでしまって、それ以上のものを私にくれる。
やっぱりあなたは最高だ。
私はいつもあなたに助けられてばかりだよ。
読んでくださりありがとうございます。