フォローに奔走する
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さて。
俺はごくりと唾を飲み込み、勇気を振り絞って彼女の様子を伺う。
「……ひぅっ……」
ごめんなさい申し訳ありません誠にウチの愚兄がやらかしちまって面目次第もございません！！
思わずそう叫び土下座しそうになったよ。
俺はもう涙目ですよ。
空気が澱んでる。同じ店内にいるのにこの澱みよう。なんでやねんって突っ込むのもはばかれる負のオーラ。
表情が見えない。怒ってるのか悲しんでいるのか絶望しているのかわからない。どれも嫌だ。
ちらり、とバランを伺い見る。
冷や汗を出して首を横に振られた。
顔が引きつってもいる。お前でも無理か、うん、無理だよね。
どうしよう。
声すら掛けづらい。だが放置していたら寿命が縮む。
さぁ、勇気を出すんだ。今こそ俺は勇者になる！！
「…………レニーさん？」
ピクリ、と肩が揺れる。
聞こえてはいるようだ。だが、顔を上げない。伏せたままでも顔を上げられても怖い。
「い、今の話って」
「カインはいまどこにいる？」
俺の言葉を遮っての質問。
声が平淡だ。
俺は怖いのでレニーのことはカインに丸投げしたい。そもそもカインのせいなのだ。問題はない。
そういうわけでさらっとカインの居場所を教えた。
「ゼナンザの街にいるみたいだね？」
「そうか」
ゆらり、と立ち上がるさまはこう言っちゃなんだが幽霊みたいだ。
お勘定のことを言い出すこともできずにふらりふらりとした足取りで出て行くレニーの背を見送る。
頑張れ？
「…………いいのか、行かせて？」
「止めれるの？」
「いや」
「でしょ？」
流石にカインが殺されることはないでしょう。
ゼナンザは王都からほど近い街だ。あの街でレニーがカイン相手に暴れたら面倒だなぁ……最悪の場合、この店は閉店だなぁ。
遠い目をしつつ、作業を再開することにする。
心構えはしておくけど、今はまだ何も起こっていない。心配しすぎるのも馬鹿らしい。
こういうときは切り替えが大事だ。
いつも通り、通常運転。晩になったらちょっと様子を見ようかね。
うん、様子を見に来なければよかったなぁ。
どうしようか。
本当にフラフラと一つどころに留まらない義兄だな。
カインの気配はすでに次の町である。
ゼナンザにはおらず、レニーはカインのいないゼナンザの街を彷徨っている、と。見つかるわけないよ。でも、声をかけづらい。
諦めて家に帰ってくれないかなぁ？
どうせすぐに誤報だってわかるだろうし。
……誤報、だよね？
しゃーない、直接カインのところに行くか。
さっさと移動を開始し、早々とカインのところへたどり着く。
真夜中の出来事である。
俺、明日起きれるかな？ 不安だぁ。
「どうした？」
珍しく宿に泊まっていたカイン。窓から入る前に声をかけられた。
せめて窓開けてから言ってよー
「ちょっとね」
返事しつつ窓を開け……鍵が掛かっているだと！？
間抜けにガタガタっと音を鳴らしてみると、ちゃんと開けてくれた。どうも。
「なんか、面白い話を聞いたんだけど？」
「？」
いい大人が首を傾げるな。
「カインから王女様に求婚したとか寄越せと脅したとかどうとか。知ってる？」
パチリ、パチリと瞬き二回。
それから眉間に皺が寄ってこてんと首を傾げる。
どうやらよく分からないようだ。
できれば言葉で答えてほしい。
「それならいいけど、ただレニーがその謎の噂を聞いてご立腹でさ。解決するまでは下手に動かないほうがいいかもよ？」
更に眉間に皺を刻みムっとした表情になる。
うぅん、気持ちはわかるけどさ。
「駄目だよ、いきなり王宮に行ったりするのも。話が余計こじれるからね。心当たりがないならそのまま大人しくしといて。むしろ、別の国に行って適当に稼いできてよ。そのほうがレニーもただの噂だって理解して落ち着いてくれるし」
「……」
「レニーは俺が宥めとくから。落ち着いてから話して。お願いだから。二人が喧嘩してアルテナまで宥めるのは嫌だよ？」
「……はぁ。わかった」
そう言いつつ全然納得してない顔してるじゃないか。
本当に大丈夫だろうな？
「おとなしくしててよ？」
あぁーあ。もしかしなくても余計なことしたかも。
このまま俺が言わなきゃ知らないまま適当にフラフラ旅を続けてたかもしれない。いや、でも途中で噂話くらいは耳に入ってたかも。
なんでか知らないけど、カインって変なところで情報通だったりするんだよな。常識を知らないくせに。解せぬ。
まぁ、仕方ない。
なるようになれ、だよね。
あんまりフォロー出来てないよっ
