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お兄さんの話を聞いてみた

これも短いー

もともと、前話と今回のを合わせて一話分の予定でした。

思った以上に時間がかかりすみませんー

 かつて、黒薔薇伯爵と呼ばれた人がいた。


 彼は一人の女性を愛し、自分の全てをその人に捧げた。けれど、女性は死に別れた婚約者だけを想い続けた。

 何故、私を見てくれない?

 何故、私の手を取らない?

 何故、私を受け入れない?


 伯爵は狂ったように荒れ、涙を流しながら女性に聞いた。


 女性は、ただ口を閉ざし……彼に背を向け去った。


 自分の元を去っていく彼女。

 それが許せなかった。


 伯爵は、涙を流しながら剣を抜いた。


 女性は立ち止まり、けれど振り向かずにただただ待った。


 伯爵が、その剣を自分に突き立てるのを。



 女性が亡くなってからは、伯爵はいつも喪服を身につけた。

 毎日、女性の墓に花を届けた。

 黒薔薇を。








「それが由来となってついた名前が、黒薔薇伯爵の庭」


「……安易すぎる……」


 ゼノがレウムトークになんの用事で行くのかと尋ねれば、その山に黒薔薇伯爵の屋敷があると返された。

 で、その黒薔薇伯爵の庭に用事があるのだと。


 ……で、その黒薔薇伯爵って何?


 と聞いてみたらこのような物語を聞かされたわけで。

 かなりどうでもいい話だったな。


 それはともかく。


「えーっと……その庭に行ってどうするの?」


「…………その前に確認してぇ。お前さん、『凍牢』と『ファルムクライ』を持っているかい?」


 対象物の時間を僅かに凍らせる『凍牢』は魔法具の中でも日用品に近い広く普及されたもの。飲食店では食料の保管に利用するので、もちろん俺も持っている。


 逆に、もうひとつの『ファルムクライ』は希少な魔法具だ。

 別名精霊の涙と言われるもので、見た目は水晶に近い。効果は一定範囲内の浄化。半永続的にそれが行われる。


「凍牢はともかく、ファルムクライですか」


「あるか?」


「…………まぁ、ありますけどね」


 わずかに目を見開くゼノ。

 おい……なんだよ、その反応。あると思ってたんじゃないのか?


「さすがカゼロインス。そんな希少なモンまであんのか……それ、カゼロインスから借りることはできるか?」


 あぁ、なるほど。

 カインなら何を持っていてもおかしくない、ってことね。俺じゃなくて。


「……それ、貸せば僕が一緒に行く必要ないんじゃないですか?」


「いや、俺ともうひとり。精霊術の使い手がいるんだ」


「精霊術の使い手、ね」


 ふむ。俺が精霊術の使い手ってバレてる。

 別段おかしくはない。精霊術使いは精霊を通して精霊術使いを見分けることは可能だしね。


 それはともかく、道具を貸せば別で精霊術使える奴がいれば俺は巻き込まれずに済むってことだよね?

 うーん、誰かいないかな?


「それで。その魔道具をどう使うんです?」


 とりあえず今は話を聞いてみるか。






 要約すると。


 ティティは黒薔薇伯爵の子孫であり、黒薔薇伯爵の庭に咲く花々の世話をしていたそうだ。

 まずここで俺はツッコミそうになった。

 大層な物語が残っている黒薔薇伯爵だが、もともと妻子持ちだったらしい……

 呆れて、しばらく空いた口が塞がらなかったよ。


 それはともかく。


 黒薔薇伯爵の直系の子孫はちゃんと王都に屋敷があるらしく、ティティは分家になるそうだ。まぁ、都会からかなり外れた山だしね。

 不便なところだけど、貴族社会が苦手なティティ達はこれ幸いと暮らしていたらしい。

 が、問題が起きた、と。


 黒薔薇伯爵の庭に咲く植物は、何の因果か毒が含まれるものが多い。

 その中でも黒薔薇伯爵の庭に咲く黒薔薇は一等毒味が強い。


 そんな黒薔薇の毒が、今話題の盗賊団が王都での略奪の際に使用した形跡がある、ということでティティ一家は重要参考人になっているそうだ。

 田舎の山に追いやられた田舎貴族が、成り上がるために盗賊団に協力したのではないかって感じで、なかなかの手酷い扱いみたいだね。


 疑いを晴らすために、解毒薬を手に入れるという話になったらしいけど。


 このへんについては、まぁ……一応口を噤んでおくかな。

 個人的には解毒薬を手に入れたからといって疑いが晴れるはずもないじゃないかと思うんだけど。


「とある情報だが、黒薔薇を浄化しただけで解毒薬になるってぇことだ」


「浄化しただけで、ねぇ?」


 きな臭い。


「やれることはやっていくしかねぇ。じゃねぇと、あいつが……」


 ぐっと拳を握り締める。

 追い込まれればどんな善人も何をするか分からない。その子の身は安全じゃないんだろう。


 ……さて。

 どうするかなぁ。


 正直言えば、ほぼ縁もゆかりもない子のためにそこまでする義理はない。


 自分の身に降りかかった火の粉を払えないなら、それはご愁傷様というレベルだ。

 身内に甘いけど、他人にはそれほど甘い性格じゃないからね、俺。


 とはいえ、今はカインとともに慈善活動中の身。

 ここまで聞いておいて何もしないなどという訳にもいかないだろう。

 ま、たまにはこういうのもいいか。うん。


「わかりましたよ。手を貸しましょう」


「……っ!?」


「とりあえず、バラン……うちの従業員が帰ってこないことには動けませんが」


「いつ帰ってくるんだっ!?」


 おぉ、すごい勢い。


「ん~……遅くても今日の夕方には戻ってきますよ」


一応、王政の国ですので貴族とかいるみたいです。

いい加減レイン達のいる国名とか地名とかどうしようかな、と思いつつ今回も名前出さずやり過ごしてみた(汗)

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