お兄さんの話を聞いてみよう
かなり短いです。
正直、中途半端。長らく更新してなかったので、一旦投稿しました。
「人に聞かれると困る話、ですよね?」
ちらっとメイルーさんを見る。興味津々な顔つきではあったものの、彼が頷くのを見て小さく息をつく。残っているコーヒーを一気に飲み干し、席を立った。
「すみませんね」
「次回もクッキーかなにか付けてくれたら許します」
笑って店をあとにする彼女。
重ね重ねすみません。次回も何かご用意させていただきます。
「では、端の席へどうぞ。折角ですから何か淹れますよ? コーヒーでよろしいですか?」
「あぁ、悪ぃな」
指し示したカウンターの端の席へと腰を下ろす。
今はまだ客足が遠い時間帯で店内もあまり人がいないが、あらかじめ来客があった際には話を中断させてもらうことについて了承してもらう。バランはお使いで今は俺ひとりで回してるからね。
「では改めて。喫茶『渡り鳥』のマスターであるレイン=ラルヴァリルと申します。ご存知のようですが、通称黒い狼の狩人カゼロインスの義弟です」
彼の前にコーヒーを置きつつ、自己紹介。
彼は一瞬面食らった顔をしたが、すぐに表情を戻す。そして、
「ん、俺はゼノ。狩人だ」
と、自身も軽い自己紹介をしてくれた。
さて。
では本題に入りましょうか。
「あー……っと。何から話しゃいいか……」
ゼノは困ったような顔をしてガリガリと頭を掻く。
「実は僕もあなたにお聞きしたいことがあったんですよ。先に聞いていいですか?」
「ん? あ、あぁ。俺にか? 構わねぇが?」
さっぱり心当たりがないようで、さらに困惑した表情を見せる。
なーるほど。精霊が好みそうな人だねぇ。
「僕とギルドであった日、女の子を庇って狩人同士で喧嘩してらっしゃいましたよね? あの女の子って、親しいですか?」
聞いた瞬間、ゼノの表情が困惑から警戒に変わった。
目を細めて俺を見る。
わかり易すぎて苦笑してしまう。
「そう怖い顔をしないでくださいよ。別にナンパするつもりもありませんから」
「…………」
おぉ、冗談も通じないか。
これは彼の用事も彼女絡みかな?
「前にウチに来たとき、少し様子が変でしたのでお知り合いなら気にかけてもらおうかと思っただけですよ。ちょっとしたお節介です、睨まないでくださいよ」
へらり、と笑うと少しして視線の鋭さが和らいだ。
でもまだ警戒しているね。
まぁ、警戒を解かれてもと思うからこれくらいで丁度いいのかな。
「……様子が変ってのはどう変だったんだ?」
「ん~……怪しげな人と話してる間は、どことなく陰鬱というか。その後、かなりの時間ひとりでぼーっとしてましたね。あまりにもぼーっとしていたので声をかけたら、ちゃんと目も合わせるしはっきり話すしで普通の子っぽかったから気になってね」
「怪しげな奴ってなどんな奴だ?」
「見た目は商人風でしたね。でも、雰囲気は裏稼業っぽいかな?」
普通、ほとんど初対面の人にお客さんのことを話したりなんかはしない。
何となく彼には話しておいたほうがいいような気がするんだよね。それに多分、精霊から何らかの情報は得ていると思う。
「裏稼業?」
「流石に生業までは分かりません。実際、僕が思っているだけで真っ当な人かもしれませんし」
カインですら一応ギリギリ裏の人間ではありませんから。
もっともアレが裏稼業なのは間違いないだろうなと思っている。
考え込んでいるゼノをしばらくそっとしておく。
いや、ほらね?
お客さんが皆無じゃないからさ。さりげなく他のテーブルにも注意を払ったりしているんだよ。奥の人がそろそろ帰りそうな雰囲気だからね~……お、席を立った。やっぱり。
「ありがとうございます~」
お会計して、お皿を下げて洗って~っと。
まだ考え込んでいる様子のゼノ。仕方ないな。
「お兄さんの用事ってのも、彼女の事ではありませんか?」
「なんだってそう思う?」
「勘、ですかね?」
僅かな沈黙のあと、彼は頷いた。
用事は彼女のことらしい。とはいえ、俺のところにくる理由がまったくもってわからない。じっと待つと、やっと重い口が開いた。
「その子……ティティという名でな。彼女は厄介な事件に巻き込まれていて、助けてやりてぇんだ」
うわぉ、面倒事だ!
しかもティティって! 前にその子探してるおっちゃんがいたよっ!?
内心驚きつつ、平静を装って続きを促す。
「俺が無茶を言っているのは承知で、頼みがある。一緒に、レウムトークに行ってくれないか!?」
がばっと頭を下げられた!?
いやいやいや、ちょっと待とう。
なんてった?
「何でレウムトーク?」
とりあえずそれから聞いてみる。
もう訳わかんない。
何であんな山に行かなきゃならんの?
ゼノさんの口調がつかめない。
レインの口調も若干変化している気がする……汗




