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良いことをしました(客観とは相違)




 カランカラン


「いらっしゃいませー」


 翌日、通常開店。

 床は綺麗に掃除しました。バランが。


「おはようございます、マスター。アイスコーヒーをもらえますか」


「おはようございます、少々お待ちくださいね」


 毎度お馴染み、ギルド職員のメイルーさんは朝から爽やかです。

 俺もつられて爽やかな笑顔になるというものですよ。


「昨日の晩はすごかったですね」


「すごかった?」


 アイスコーヒーを出しつつ聞き返すと、メイルーさんは驚いた表情を見せる。


「え? マスター知らないんですかっ!?」


「何をです?」


「昨日、領主館が爆発したじゃないですかっ!?」


「あぁ、あれ」


 うん、確かに爆発音は結構辺りに響いてしまったかも……反省反省。

 俺の反応が気に入らないのか、メイルーさんは言葉をなくしてしまったようだ。

 しばらくたって、重々しくため息をつく。


「……はぁ……マスターってそういえば黒い狼の身内だった……」


 何で頭を抱えているのかな?


「ちなみに聞きますけど、昨夜のいきなりの爆発に驚いたりはしなかったんですか?」


 そう言われてもねぇ……爆発させた当事者だし。

 けど、これを言うとまた面倒っぽいからな。嘘は言わないって方針でいいか。


「うーん、流石に僕も予想外のことは驚きますよ?」


「マスターの予想外がどの程度のことなのか判別できませんよ!」


 あれ、怒られた?

 これは予想外の範囲なんだけどな。まぁ、それはいいとして。


「まぁまぁ。で、何があったか知ってるんですか?」


 彼女は曲がりなりにもギルド職員。

 すでに昨夜の件はギルドも調査しているだろうし、どう処理されているのか気になるところなんだよね。


 メイルーさんはコーヒーを一口飲むと、真剣な表情になった。

 そうしていると歴とした成人女性だね。


「それがまだ特定に至っていないそうで……領主様の方は完全に沈黙を貫いていらっしゃいますし。大規模な爆発の上、けが人は多数、謎も多い事件なのですが幸い死人はいません。ですが逆に調査も難航します……犠牲者は皆領主様側の人間で、詳細を知らないか沈黙を貫くばかり。犯人の目星は全く掴めていないんですよ」


 ん、上出来。

 俺の仕業とばれたところで痛くも痒くもないしね。煩わしいから現状は大歓迎だけど。


「それにしても一体何が目的だったのか……破壊はされていますが、盗られたものはなく領主様も多少の怪我はあれど無事。マスターはどう思います?」


「一般人には分かりかねますねぇ」


「ちょっとは考えましょうよっ!? はぁ~~~~、もう! このあとも現場調査に聞き込み、通常営業と大忙しですよぉ……やんなるなぁ」


 おっと、仕事を増やしてしまったか。

 これはどうもすみませんね。


「まぁまぁ。よければクッキー食べます? 疲れには甘いものがいいですよ? 特別にサービスしておきます。内緒ですよ。」


「うわーん、マスター大好きっ!!」


 謝罪のつもりでクッキーを差し出す。

 いや、ほんとにごめんね。口に出せないから親切な人と思われるのに若干思うところがないわけではないのです……


 検使官をシメたあと、ちょっと眠ってもらいまして。

 で、皆様が寝静まっているころに彼らを担いで領主様をご訪問。正面から扉をノックしても出てきてくれないだろうから、まず検使官Bを領主様の寝室がある窓へ突撃させましたよ。

 もちろん本人はおねんねしておりますので、そこは上手く精霊術で風とか使って操りました。えっへん。

 まぁ、検使官Bも窓ガラスの破片でカスリ傷くらいは負ったでしょうが、たいしたものじゃないだろうからそのまま放置していきました。


 当然、領主館内は大騒ぎ。


 いっきに灯りがあちこちに点いてドタバタと笑わせてもらいましたよ!


 で、領主様が寝室から広間へ移動したので、今度は広間の窓ガラスからシャノンとバルトウスを放り込みました。

 かなり驚いているところに、さらに驚きをと思いまして。ちょっとロウソクの炎を巨大にしてみたり、水差しや花瓶を浮かせて躍らせてみたり。まぁ、実際には中に入っている水を使っただけだけどね。

 まぁ、それでも領主館内にいた人達の中には腰を抜かす人もいたなぁ。


 で、パニックになっているところでこっそり領主の背後に忍び寄り、あっさり首元にナイフを突きつけれました。

 護衛さんはまったく職務を全うできてなかった。


 ボロボロになった検使官Aを見せつければ怯えること怯えること。


 思わず嗜虐趣味が目覚めてしまうところだったよ、危ない危ない。

 ちょっと脅迫まがいになったけど、犯人をカゼロインスに仕立てようとしたことを謝罪させた上で撤回させて。さらに、犯人ではないという証拠まで作らせて、と。それでも、カインに擦り付けようとした罪は重いわけなので、領主館が壊れるくらいのことはさせていただきましたよ。修理するにしろ立て直すにしろ、多額が必要になるよねー


 しかも、俺のイタズラのせいで領主様は呪われていると使用人に思われちゃったし。

 肥やした私腹はみっともないから、ちょうど良かったんじゃないかな。

 大出費と世間体で痩せれるよ。うん、俺はわりといいことをしたんじゃない?


「そういえば、今日バランさんはお休みですか?」


 いつもならある姿が見えなくて、店内をきょろきょろするメイルーさん。

 そんな必死に探さなくても、あの体格でこの広いとは言い難い店内に隠れるのは至難の技ですよ。


「バランにはお使いに行ってもらっているんですよ」


「そっか。お使いか」


 何のお使いかまでは言わないけどね。などと思っていると、


 カランカラン


 といつもの音が鳴り響く。お客様のご来店かな?


「いらっしゃいませー」

 

 声を出しながら目を向けると、どこかで見た顔。


 どこか野性的な顔立ち。うん、間違いない。この前ギルドであった口の悪い親切なお兄さんだ。

 しっかりと目があったね。

 うん?

 じっと見られているね?


「お好きな席にどうぞ」


 へらりと笑って言ってみる。


「………」


 無言でまっすぐカウンター越しの真向かいへ。

 うん?


「お前さん…………前にギルドで会ったな。まさかここの店主はお前さんか?」


「えぇ、まぁ。店主は僕になりますが」


「…………」


 じぃーっと見るね。

 何だろう?


「あ、あの。ゼノさんはマスターに何か用事があるんですか?」


 見かねたらしいメイルーさんが声をかけてくれた。

 心優しい女性、最高ですね!


「あ? お嬢は俺のこと知ってんのか?」


 はい、相変わらず口が悪いね!

 というか、今メイルーさんのことをお嬢。お嬢って!? どんなチョイス!?


「は、はぁ。あの、私は一応ギルド職員ですので……」


 ほらぁ、メイルーさんも若干引いているじゃないですか。

 一体どこでどう育ったらそんな変な言葉遣いになるのやら。


「じゃあ、この目の前にいる奴が何者かもわかってるってことか?」


 え? 俺?


「……カゼロインスの身内だということ、でしょうか?」


「わぉ。メイルーさん、人の情報だだ漏らしだね」


「え、あっ! ご、ごめんなさい……」


「いいけど。隠しているわけでもないし。ええっと、それで……お兄さんは僕に何か用事が? それとも、喫茶店のお客様でいらっしゃるので?」


 お兄さんは再び俺に視線を戻すと「用事だ」と一言。


 ふむ。

 先日といい、今日といい……俺にもモテ期が到来か、なんてね。




少し短い、かな?


せっかくのレイン君無双が……どうするべきか悩みましたが、現状喫茶店メインの話なので省略。期待された方はすみません。

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