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用心棒の出番です



 話していればなんとやら?

 

 ただいま、招かざる客多数ご来店です。


 いつものようにカランカランと軽快な音に笑顔で「いらっしゃいませ」って言ったのに、言い終わる前に怒鳴られた。「カゼロインスはどこだぁー!!」てな具合に。


 えー?


 これはもしかしてあれか?

 厄介事か?


 それしかないな。


「客じゃないならお帰りください」


 とりあえず笑顔で対応してみた。


「あぁ!? 舐めてんじゃねぇぞ、ガキ!! カゼロインスを出せっ!!」

「殺されてぇか!?」

「店、ぶっ壊されたくなけりゃ連れてこいっ!!」


 しまった。

 耳塞ぐのを忘れた……おかげで雑音がひどい音で脳を揺らす。


「えーっと……」


 どうお帰り願おうか?

 考えていたら一人がずかずかやってきて、ナイフを俺に向けてきた。


「おら、とっとと呼べ!」


 野蛮だなぁ。


「申し訳ないですけどー」


「早くしろっつってんだよ!!」


 カウンターを強く叩くおっさん。

 カウンターに置いてあった砂糖の瓶とかが、かちゃりと音をたてる。割るほどじゃない衝撃。


 だが、しかし。


 イラつく奴等だな。


 狩人も来る店だから物騒なモン持ってるのも構わねぇ。態度が少々悪いのも黙認してやる。

 だが、それは客ならの話だ。

 客じゃねぇ連中が偉そうにずかずかと何人も入ってきて、ナイフちらつかせやがって…… 


 ぷちっときた。


「いねぇよ」


 思わず声が低くなって答えた。


 一瞬怯むおっさんだったが、すぐさま唾を飛ばしながら叫ぶ。


「嘘つくんじゃねぇ!!」


「嘘じゃねぇ。ここは飲食店だ、汚ねぇ唾とか飛ばしてんじゃねぇよ。邪魔だからとっとと帰れ」


「……っ……なら、何処にいる!?」


 うるせぇ奴だな。


「餓鬼じゃねぇんだ、そんなもん知るか。用があるならてめぇらで探せよ」


 はっと笑って返す。

 いちいち把握してるわけねぇだろうが、馬鹿か?


「このっ……クソガキ!! てめぇがカゼロインスの弟だな!? 丁度いい、てめぇから痛い目に合ってもらうぜっ!!」


 あぁ?

 なにふざけた事抜かしてやがる?


 手に持っていた布巾を置き、相手してやろうかと思ったとき。


「おい、お前ら。邪魔だ、帰れ」


 バランが先に動いていた。

 すでにエプロンを外してある。いつの間に。


「なんだ、てめ」


 おっさんが反応するより先に、バランがナイフを持つ手を捻り上げ、膝蹴りで腹を攻撃する。

 すぐさまナイフは床に落ち、男自身も崩れた。


 え、弱すぎ。


「この店の用心棒だ」


 崩れて膝をついたおっさんを軽々と持ち上げ、入口あたりに溜まっていた連中に投げた。


 投げちゃったよ。

 単純な腕力だけで。


「うわぁ」

「うおっ」

「ぎゃあっ!」


 あ、一人下敷きになった。


「まだやるか?」


 両手の指をボキボキ鳴らして尋ねるバラン。

 おぉー、迫力がありますなぁ。


 やっぱ身長高いといいな。

 威圧感がさ、こう……格好いいよね。


「くっ…………くそ! 覚えてろっっ!!」


 あれ?

 逃げるんだ。


 俺としてはやってやらぁ! うわぁ、うごぉ、ぐぎゃーっていうのを想像してたんだけど。


「……どうする? 潰しておくか?」


 おぉう、物騒なセリフがきた。

 バランならあの程度、簡単にやっつけてくれそうだ。


「んー、いや。いいや。カインに恨み持ってる人なんて多すぎるし」


「そうか。じゃ、店内の片付けをしておこう」


 頷いて、奴らが荒らした入口付近を掃除し始める。

 じゃ、俺は店内にいるお客さんに簡単に謝罪してまわるかな。


 幸いにしてあんまりお客さんがいない時間帯でよかったな。

 謝罪しに行くと、みんな一様に引きつった笑顔を返したのはなんでだろう?


 物騒な場所にあるっていうのはみんな分かっていると思っていたんだが、違うのか。


「災難だったな」


 セドルスも若干顔が引きつっている。

 狩人が揉め事に動揺してどうするの?


「まったくだよ。お客さんに迷惑かけるような真似とか困る」


「今のってカゼロインスが原因だよな。よくあることなのか?」


「まぁ、日常茶飯事」


 最近は長くカインが不在だったのでご無沙汰ではあったけど。


「……大変だな」


「よく言われますよ」


 やれやれ、と肩をすくめてみせるとセドルスの表情も和らいだ。


「奴らの乱入にも驚いたが、マスターにも驚いた。凄むと怖いな。さすが黒い狼の弟だけあるって納得させられた」


「あはは……僕もまだ血気盛んな若者ですからね。つい、腹が立っちゃって。すみません」


 さっきのはちょっと切れるの早かったよな。

 バランがいることすっかり忘れて相手しそうになったし。

 反省反省。


 バランが戻ってきたのでお礼を言う。

 やはり短く「いや、仕事だからな」と答えるが初対面の時よりも幾分か表情が柔らかい。


 うんうん。

 やっぱ一人でやるより絶対雇って正解だよね!


「さっきみたいなのが日常茶飯事だっていうなら、実際のところマスターも結構強いよな。バランさんみたいな用心棒、必要なのか?」


「バランがいたらそれだけで牽制になるし、自分の身を守るってよりもこの店を守るならやっぱりいた方が心強いですよ。店としてはお客様を守らなくちゃ、ですしね? それより、セドルスさん。お仕事の時間はいいんですか?」


 結構長いあいだ駄弁っている。

 コーヒーもとっくに空になっている。


「あ。やっべ」


 慌てて立ち上がり精算を済ますと、走って店をあとにする。


 よくあんなで狩人としてやっていけてるなぁ。

 まぁ、知り合いだし無事をお祈りいたしますよ。





短くてすみません。

レインは育ちが悪いので、怒ると口調も悪くなっちゃうのは仕方ないですよね

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