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寿命一年戦記  作者: フーカ
ファンタジー編
6/13

最強X2vs最強

 強大な魔物と凶悪な賊が蔓延る森「ボス」

クインツェと朱音は、その森の中を堂々と歩いて突き進んでいた。

朱音達が歩んできた道には、多くの魔物と賊が倒れている。


「いやー、どいつもこいつも手ごたえがないね。もっとわくわく出来るような戦いがしたいのにさー。

 そう思わないか、クインツェ」

「いやいや、朱音さんが強すぎるんですよ。もうこの世界に朱音さんと対等に戦える生物はいないですね」

「やっぱり? 私強すぎるもんなー。あっはっはっは」


 朱音の圧倒的な力を目の当たりにしたクインツェは、金魚のフンの如く朱音に付いて行く事を決めた。

朱音さえいれば、何も怖くはない。あとは読死本を集めて呪いを解いたら、朱音も元の世界に返して

平和な生活を送ろうとクインツェは考えていた。


 だが、クインツェは重大な事をすっかり忘れていた。


 森を歩き始めてから数時間後。奥の方から獣の咆哮が複数響いてくる。その咆哮はすぐ様止み、代わりに足音が聞こえてきた。


「また賊でしょうかね。朱音さん、宜しくお願いします」

「あぁ、任せておけ」


 クインツェは朱音の背後に隠れ、二つの人影を見つめる。朱音さん相手に哀れな賊達だ、などと思いながら哀れみの眼差しで人影を見ていたクインツェであったが、その表情はみるみる変化して行く事になった。何故なら、その二人は――。


「あ、あ、あ、あ……朱音さん。ま、ま、ま、まずいです」

「は? 何が?」

「あ、あの二人は……こ、国家軍の……つ、ツートップですよっ!」


 朱音達の前に姿を現したのは、英雄兵キリヤと一級兵士ナンバー1の称号を持つ女、レイアであった。


「ふーん……、つまりこの世界で一番強い奴と二番目に強い奴って事だろ? こりゃ、楽しめそうじゃん」

「た、戦うつもりですか!? 今までの相手とは次元が違うんです! に、逃げないと!」


 やる気満々の朱音の様を見て、クインツェは相手の恐ろしさが全くわかっていないと嘆く。


「逃げてどうする? 私は逃げられても、あんたは捕まるよ。最強の二人なんだろ? そんな二人から逃げられるか~?」

「うっ……そ、それは……」

「という訳で、ここは戦うしかないって事だ。まぁ、私の夢だから私が勝つに決まってるって。安心しろ」


 クインツェはもう期待するしかなかった。朱音が世界最強の二人すらをも凌駕する力を読死本から与えられている事を。


「やーどうも。国家軍最強のお二人さん」


 朱音は二人に近づき、軽く挨拶をする。キリヤとレイアは歩みを止め、朱音を見据える。キリヤは冷たい眼差しで、レイアは睨みつけるように。


「貴様がクルデルタを一撃で倒した女だな? 情報と姿が一致する。間違いないな?」


 レイアが言葉を紡ぐ。その問いに朱音は――。


「あぁ、そうだけどー? あんたらも私とやるんでしょ? かかってきなよ。遊んであげるから」


 今まで戦ってきた相手は、どれも朱音の足元にも及ばない相手ばかりだった。それが故に、朱音はどんな相手でも舐めてかかる癖がついていた。自分は絶対に誰にも負けない強者であると自負していた。


「そうか。ならば、お手合わせ願おうか」


 レイアが構える。武器は何も持ってはいない。


「なぁ、武器とか使わないの?」

「貴様も持っていないではないか」

「へぇ……いいね」


 レイアと朱音は戦闘体勢に入る。空気がピリピリと張り詰める。レイアは朱音と対峙しただけで、朱音がクルデルタを一撃で倒したという話が本当であったのだと理解する。


 お互いが間合いを少しずつ詰めて行く。そして機を図ると、地面を蹴って走り出す。その刹那――。


「キリヤっ!」

「うおっ!」


 キリヤが剣を朱音に向かって突き出した。それはレイアと朱音の一対一の勝負を汚す行為。それがレイアには許せなかった。不意を突いたキリヤの剣は朱音の顔面に奔る。それを朱音はギリギリの所で避け、後方に飛び退き距離を開けた。


「キリヤっ! 私と奴の勝負の邪魔をするとは何事――」

「黙れ。二人でかからなければ、死ぬぞ」

「な……に……? それは一体――!?」


 レイアはキリヤの額から一筋の汗が流れるのを見た。いつも無表情で眉一つ動かさず、常に堂々としていた最強の戦士が朱音を前にして緊張している。


「おいっ! そこの白髪のロンゲ男! 卑怯だぞっ! ったく、マジKYだなお前はっ!」


 朱音は怒りを露にし、キリヤを指差して怒鳴る。肩を軽く回し、朱音は二人に向けて言い放つ。


「そんな卑怯な事するなら、もう二人いっぺんにかかってこいよ! めんどくさいっ!」


 木の陰に隠れていたクインツェはそんな朱音の発言を聞いて、もう終わったと覚悟した。



 更に数時間後、大森林「ボス」をようやく抜けて、国家軍本拠地「ペイズ」へとやって来たクインツェと朱音。

「腹減ったー! 早速飯にしようぜ、クインツェ。この世界の飯がどんなのか楽しみだ」

「……はは、貴女という人は……自分がどれだけすごい事をしたか自覚してないのですね」



 ――大森林「ボス」の中間では、この世界で最強と謳われている二人の戦士が倒れていた。

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