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運命の人は男の子でした  作者: 甘語ゆうび
4章【図書館編】
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慕われる要素

 私達は、城の人達に稀有なものを見るような目で見られながらも、なんとか騎士団へと辿り着いた。


「ここだよ」

「へぇ〜。外にあるんスね」

「うん。でも、ここもお城の敷地内だよ。それじゃ、入ろっか」


 私は、騎士団の扉を開き、皆で中へと入っていった。


「たぁ!」


 騎士団に入った途端、木刀のぶつかる音と、騒がしい足音、それから勇ましい掛け声があちこちから聞こえてくる。


「わぁ⋯⋯。凄いッスね。こんな入ってすぐのとこに手合わせ出来る場所があるんスね」

「暑い⋯⋯。けど、ノアラはこういうの好きそうだよね」

「ん?まぁそうッスね。でも、フォルテも興味あるんじゃないんスか?人間と手合わせ出来る機会なんて、自分達にはそうそうないッスよ。混ざってきたらどうッスか?フォルテの実力なら、勝ち抜きしたって、余裕じゃないッスか?」

「⋯⋯⋯⋯どうだろうね」


 フォルテが変にノアラの話を誤魔化したこととほぼ同時に、手合わせを終えたらしい姉様が、私達に気付いた。彼女は対戦相手に頭を下げると、私達の方へと歩いてきた。


「ラディ。久しぶりだな」

「そうですね。城を出る時も、姉様とはちゃんと話せてなかったので⋯⋯大体一週間ぶり?ですかね」

「もうそんな経ったのか⋯⋯。昨日帰ってきていたとは聞いたが、いつ帰ってきたんだ?あまりにも遅かったし、顔も見せてくれなかったものだから、心配していたんだぞ」

「す、すみません⋯⋯」


 騎士団は城からも少し距離があって、移動がどうしても億劫に感じてしまう。それに、城からリガルーファルへの出発の日は忙しくて、姉様に会いにいく余裕も無かった。


(それに、姉様も忙しいみたいだったし⋯⋯)


「⋯⋯いや、無事に帰ってきてくれたなら、それでいいんだ。ところで、そちらのお二人は?会ったことは、無いよな?」

「え!?あ、は、はい!お初にお目にかかるッス⋯⋯じゃなくて!かかります!第一王女殿下。自分、や、私は葬儀屋兼リガルーファルのメイドのノアラ・コーレイン。お会い出来て光栄ッス⋯⋯!」

「あ、う、うちはフォルテ・ミリコフ。ノアラと同じで、葬儀屋兼リガルーファルのメイド。よろしく、お願いします⋯⋯」


 ノアラの急な丁寧な物言いに、私やリュサールだけでなく、フォルテまでもが驚きで上手く言葉が発せずにいる。この変わりようはなんなのだろうか。ノアラは、姉様に対してキラキラと憧れらしい眼差しを向けている。


「⋯⋯ねぇノアラ。なんかおかしくない?変なものでも食べた?」

「失礼ッスね!自分は、ただ単純に第一王女殿下をお慕いしているだけッスよ!」

「それは嬉しいことだが、私と君は、初対面なのだろう?私に、そんな慕われる要素は無いと思うのだが⋯⋯」

「とんでもない!貴方は、幼い頃に森で道に迷った自分を助けてくれたッス。自分にとっては、命の恩人ッスよ!」

「そうだったのか⋯⋯。ふむ⋯⋯。ならば、新しく友人となるのはどうだろうか。私は、あまり慕われるというようなことは好きじゃないんだ。私が騎士を志した理由はそんなものではないし、騎士である限り、民や同僚とは、ある程度はフラットに話したいと思っているんだ」


 朗らかに話す姉様に、ノアラは珍しく動揺を示していた。


「と、と、友達だなんて⋯⋯!でも、第一王女殿下がそういうなら⋯⋯」

「ノアラ、チョロい」

「チョロくないッス」


 ノアラ達のやり取りに苦笑を浮かべながらも、私はリュサールの方をちらりと観てから、姉様に向き合った。


「姉様、少しだけ、話があるんだけど、いい?リュサールとのことについてなんだけど」

「⋯⋯あぁ、構わない。執務室で話そう。部屋を掃除して私の部屋にしたんだ」

「分かりました。⋯⋯ノアラ達はどうする?」

「なら、自分達は騎士団の人達と手合わせでもしてるッス。いいッスか?」

「あぁ、問題は無いが⋯⋯。その、君達は、戦えるのか?ここの騎士達は、皆生半可な実力などではないぞ」

「問題ないッス!自分達は、人間相手に戦うことはあまり無いッスけど、だからこそ、いい経験になるッス。勝っても負けても怪我しても、自分達には経験値ッスよ」


 ノアラの言葉に、姉様は暫く悩んだ様子を見せたが、懐から一枚の小さな板を二枚取り出し、ノアラ達に差し出した。


「これはなに?」

「騎士団挑戦権。まぁ、騎士団の者と戦う為に必要な書類だとでも思ってくれ。それを騎士に見せたら、皆対戦を受けてくれるはずだ。快く受け入れてくれるかどうかは別だがな」

「へぇ⋯⋯。分かったッス。皆様が戻ってくる頃には、全員ぶっ飛ばせるよう、がんばるッス!」

「頑張るところの方向性おかしいだろ⋯⋯」


 リュサールが呆れるように、板を握るノアラを見つめる。


「大丈夫ッス。例え負けても、勝てるまでやれば全勝ッス」

「ゴリ押し過ぎない⋯⋯?」

「ふふ。君達は仲が良いのだな。羨ましい限りだ」


 姉様が微笑ましく見つめてくるせいで、どうにもいたたまれなくなってしまう。そんな気持ちを抱えたまま、私とリュサールは姉様に連れられて、執務室へと向かうのだった。

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