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運命の人は男の子でした  作者: 甘語ゆうび
4章【図書館編】
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魔力汚染

「国司書ー!!助けてくださーい!」


 扉を壊しそうな程の勢いで開けられる。その轟音に驚き、咄嗟に扉の方へと目を向けてしまう。そこには、走ってきたのか、息を切らしていた孔雀の羽のような緑の髪色をした青年が立っていた。


「エミット。そんなに急いでどうしたの?また本棚が燃えたりでもした?」

「あ、いえ。それは大丈夫なんです。でも、図書員の魔力がまた暴走しちゃったんです。おれ達だけじゃどうにも出来ないから、国司書に来て欲しいんです!」

「分かった。すぐ行く。ラディは、アルノを連れてリュサールのところに戻って。他になにか聞きたいことがあれば、アルノに聞くといいよ。大体の事情は知ってる。俺は現場に向かわなきゃいけないみたいだからさ」

「分かりました。それじゃ、私はこれで。行こっか、アルノ」

「はい」


 私は、アルノの手を引いて、騒動が起こった図書館を後にしようとした。しかし、入口付近に待機していた図書員に突然声を掛けられた。


「ちょっと、そこの人。今は図書館から出るのは禁止ですよ」

「え?」


 図書員の制服を着た女性にそう言われ、足を止める。


「あの、すみません。私、図書員じゃないし、今起きてる騒動とは関係ないと思うんですけど⋯⋯」

「そうですよ!この方はこの国の第二王女ですよ!ただの図書員であるあなたに、止める権利は無いと思います!」

「黙りなさい。問題児ロレッタ・ブリッソンの弟。⋯⋯殿下、関係無いというなら、少々身体検査をしても宜しいでしょうか」

「え?し、身体検査⋯⋯?」


 突然の言葉に、身体を震わせて目を逸らしてしまう。それを察したのか、アルノが握っていた手をぎゅっと強く握ってくれた。


「あぁ、難しいことは何もしません。ただ、魔力探知を使った検査にご協力頂きたいのです」

「魔力探知?なんでまた⋯⋯」

「最近、魔力の中に異物が入り込み、そのせいで暴走する人が多いのです。今起こっている騒動もそれです。そして、この現象は周りの者にも広がります。なので、この図書館に居る人は全員、魔力が穢れている可能性がある、ということです。ご理解頂けましたか?」

「は、はい⋯⋯」

「でしたら、そのまま大人しくしていてください。アルノ、貴方も殿下の後に検査しますからね」

「分かってますよ」


 少し頬を膨らませ、拗ねたような口調でそっぽを向くアルノに、図書員の女性は肩を落とす。


「はぁ。では殿下。魔力探知の方させていただきます」

「あ、はい」


 女性の方に身体を向け、アルノと繋いでいた手を離す。図書員は目を閉じ、私の手を握った。


「⋯⋯っ!」

「⋯⋯?」


 図書員が目をかっぴらいたかと思えば、何かの呪文を急ぎ早に空に描く。


「魔力汚染者発見!!重度の症状!至急騎士団への連行求む!」

「え?え?」


 疑問を口にする暇もなく、図書館入口の扉が開かれ、騎士達が雪崩のように怒涛の勢いで侵入してくる。


「ちょ、ちょちょちょっと待って!魔力汚染?どういうことですか!?いつ私がそんなものになったっていうんですか!?」

「話は騎士に頼みます。私は国司書にこのことを報告してきますので、これで失礼します」

「え?ちょっと!?」


 図書員さんを引き止めようとするも、彼女は私を無視してさっさと歩いていってしまった。


「ラディ様!」

「退け!」

「くっ⋯⋯」


 アルノが私へと手を伸ばしてくれたが、私がそれに気付いた時には、アルノは騎士によって地面へと寝かせられてしまっていた。


「アルノ!!」

「殿下、正式に魔力汚染症状検査を行わなくてはいけないため、一緒に騎士団まで来ていただきます。もし何かしらの罪状が発覚した場合、罪人として裁かれることになるでしょう」

「え?ちょ、私が罪人?なにわけ分かんないこと言っているんですか!!」


 私は駄目人間だが、罪を犯す勇気なんて少しもない。何故、魔力が他の人と違うというだけで、罪人扱いまでされなくてはいけないのだろうか。


「こんな、理不尽にも程があります!勝手に決めつけないでください!」


『そうだ、理不尽だろう。恨めしいだろう』


(は?)


 どこかから声が聞こえる。この場に居る人達ではない。頭の中から聞こえる。内側から、声が響く感覚がする。


『怒りを顕にしろ。この者達を理不尽だと嘆くのだ。お前が、この者達を呪うのだ』


(は?何言って⋯⋯。私は別にそこまでは思ってない⋯⋯)


 視界がぼやけて、身体が言うことを聞かなくなる。地に足が付いているのかどうかも分からない。浮遊感すら覚えたような気持ちだ。


「殿下、騎士団に参りましょう。話はそちらで聞きます」

「う、あ⋯⋯」


『さぁ、我の力を使え。お前の魂ならば、我の力を存分に扱える』


(うるさい⋯⋯)


 誰か分からない相手に、好き放題言われるなんて癪だ。図書員達に向いていた怒りはわかの分からない内側にいる何者かに向けられている。


(誰なの⋯⋯。勝手に、話しかけてきて⋯⋯)


「⋯⋯殿下?大丈夫ですか?」

「もしかして、汚染が進んでいるんじゃ⋯⋯」


 騎士達が不安がる声が聞こえてくる。一番不安なのは私なのに。


「うぅ⋯⋯」


 頭の声がうるさい。鳴り響いて止まない。


「はーい、そこまでだよ」


 パチン、という指を鳴らす音と同時に、そんな女性の声が聞こえてくる。それと同時に、私の意識は手放されてしまった。

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