ちゃんと話すよ
「それで?結局、五締メとかフェマが金髪の理由とか、兄様の目的とか、色々なんなんですか?」
あの後、地下室から上がってきて、フェマとは一時の別れとなった。そして、兄様の私室に戻ってきた私達は、兄様を詰めているところだった。
「はいはい。分かった。ちゃんと話すよ。まずなに?五締メ?」
「はい」
「五締メは、サピエント学院で成績優秀な、上位五名の生徒だよ。生徒会とは別物ね。その人達が今、学院からの命令で、全員学院休んでこっちにいるの。そういや、学生なのにどうやって働いているんだ、ともさっき聞かれたね」
「聞きましたね。そんなこと」
「五締メは、試験を受けてないよ。だから当然だけど、正式に雇ってるわけじゃないんだ。なんだろうな。研修期間、って言ったらいいかな。一部の仕事が制限されていて、基本的な仕事しか出来ないんだ。元々は、生徒会に所属している生徒だったら、申請すれば今の五締メみたいに研修生になることも出来るんだよ。ちなみにナナリーはそれ。生徒会で書記やってるんだって。他の生徒会所属の生徒は今は居ない。その代わりなのかは知らないけど、何故か五締メが全員来たってわけ。しかも衣食住こっちが提供しろとか本当にふざけてるよね!」
「あ、はい⋯⋯」
半ば愚痴になってしまった話を聞き流して、次の話へと移った。
「それじゃ、フェマが金髪の理由は?てか、人工エルフって結局なんなんですか」
「え?言ったじゃん。俺が造ったから人口エルフ。終わり。次は?」
「いや終わってない終わってない。フェマが金髪の理由は?」
「え?知らない。エルフって、髪色そんなに重要じゃないっぽいよ。だからセラーネ師匠とかネヒアも、こっちじゃ罪人の末裔だけど、向こうじゃ何も無いらしいよ。ま、フェマから聞いた話だから、事実は分からないけどね。だから、フェマは金髪だけど、王族じゃないってこと。分かった?」
「⋯⋯多分分かりました。それじゃ、兄様の目的はなんなんです?最終的になにをどうしたいんですか?」
兄様はうーん、と悩んだ仕草を見せて、アルノを手招きして呼び寄せた。
「最終的には、図書館の権利奪還と、サピエント学院の学院長の目的を暴くこと。あのくそばば⋯⋯じゃなかった。学院長が急にこんなことを言ってくるなんておかしいからね。あの人、昔から俺のことを嫌ってはいたけど、こんなに頭の悪いことする人じゃなかったからね〜。一応頭は良いし。ということでスパイとして、アルノとフェマを学院に送り付けるつもり〜」
「え?」
アルノの方をちらりと見るが、彼は私と目が合うと、にこりと微笑んだ。
「はい。ただ、僕の学力だと、学院に入ることだなんてとても難しいので、ランカ様の名前を使っての入学ルートだと思いますけど⋯⋯」
「いやぁ?ロレッタはともかく、アルノの学力なら問題無いと思うけどなぁ。フェマも語彙力は無いけど、知能自体は高いしね。あぁただ、今回はスパイとしての潜入ってことで呑気に試験を受けてる余裕が無いから、特別に体験入学って制度を取ってもらったんだ。でも、試験はどうしても必要だってことで、最低限の試験だけは受けることになったんだ。ちなみに俺の要望で採点は即日で返してもらうことになってるよ〜。やったー」
「へぇ。てか、ロレッタはともかくって、そんな言い方⋯⋯。って、あ!そういえば、ロレッタはどうしたんですか?帰ってきて、まだ会ってないんですけど⋯⋯」
「ロレッタはミヒリのとこで徹底的に教育することにした。あの子は学力以前に問題児だからね。魔力もずば抜けてるから、実践演習だと確実にトップになれるし、それだけで入学は出来るくらいの実力があるんだけどね〜⋯⋯。ま、今回は正式な入学じゃないけど」
「へぇ⋯⋯」
思った以上に、色んなことに考えを巡らせていたことに驚きが止まらない。どうして歴史に名を残せるような実力があるのに、こんなに女たらしなのだろうか。
(それさえ直れば、完璧なのに⋯⋯)
「あ、ラディも入学したかったら言っていいよ」
「いや、結構です⋯⋯」
「うん。良かった。ラディは無理だろうから」
「⋯⋯兄様、そういう素直になんでも言う癖、直した方がいいですよ。他の女性達にもそういったことを言うんですか?」
「え?言うわけないじゃん。女の子は丁寧に扱わないと、すぐ怒っちゃうから」
「⋯⋯アルノ、こういう大人にはなっちゃダメだよ?」
眉を顰めながらアルノの方を向くと、アルノはきょとん、と首を傾げた。
「なんでですか?僕は、ランカ様のことをとても尊敬していますよ。発想力が凄いですし、なんでもかんでも、自分で作ろうとする実行力があります。僕は、そういった即断即決みたいなこと出来ないので、凄いなって思ってますよ」
「え〜。褒めすぎだよ〜」
なんて言いながらアルノの肩を引き寄せて抱きしめ、あからさまに照れる兄様に対して苦笑を浮かべてしまう。
「あ、そういえば、俺も聞きたかったんだけど、リュサール達はどこに行ったの?お城であちこち自由に行き来できる場所なんて無いと思うけど」
「リュサール達は、庭園で待っててもらってます。私一人で図書館に来た方がいいかなって」
「なるほど。確かにそれはそうだ。庭園なら、他に人が来ることも少ないし、仮に誰か来ても、彼なら上手く切り抜けるだろうし、いい判断だね」
「国司書!!助けてくださーい!」
話が一段落したところに、そんな情けない男性の声が響きわたる。その人は、ドアを開けて、部屋に飛び込んできた。
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