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運命の人は男の子でした【完結済】  作者: 甘語ゆうび
三章【リガルーファル家編】

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貴女にとって

「ふぁ〜⋯⋯」


いつも通り、ノアラとフォルテに起こされて朝食を摂ったが、今日は今までより眠気が取れなくて、いまだに眠い。昨日、ノアラと喋りすぎたせいだろうか。


「殿下、眠そうだね。欠伸までしちゃって」

「そっ、そうッスね」


フォルテの言葉に、ノアラの声が一瞬裏返る。夜更かしさせた側からしたら、はらはらなんて言葉では足りないだろう。そんな冷や汗を垂らすノアラを見て、フォルテは何かを疑うように、ノアラを見つめた。


「⋯⋯ノアラ、うちになにか隠してる?」

「なっ、なんでそうなるんスか?」

「ノアラ、気付いてないと思うけど、うちに何か隠す時って、声が裏返るんだよ。知ってた?」

「うっ⋯⋯」


白状したように呻き声を上げたノアラを見て、フォルテはため息を吐き、ノアラから離れた。


「ま、追求はしないけど。どうせうちがどんだけ詰めたってノアラは話さないし。昔からそうだよね」

「そうッスか?」

「そうだよ。⋯⋯さて殿下、今日はどうするの?夜には帰るんでしょ?」

「うん。あ、そういえば、このドレスってどうしたらいいの?」


ここに来た時から着せられていた真っ黒なドレスとも、今日でお別れだろう。


「あぁ、それなら、帰る前の着替えられる時に渡してくれればいいよ」

「そっか」

「⋯⋯それ、初めて着せた時にも言ったッスけど、ベラリヤでの黒いドレスって、リガルーファルの花嫁って印象が強いんスよ。でも、殿下の場合は白色のウェディングドレスな気もするッスね」

「え?なんで?」

「だって、リュサール様は綺麗な白髪じゃないッスか。黒色のウェディングドレスが出来た起源って、黒髪であるリガルーファルの夫の色に染まるってところから来てるみたいッスよ。だから、それだったら黒より白じゃないッスか?」

「そういうもの?」


私が頭に疑問符を浮かべていると、前の方からメイドさんが走ってきたのが見えた。


「殿下!ようやく見つけました⋯⋯」

「え、さ、探してました?」

「はい。リュサール様からの伝言です。『見せたいものがあるから僕の部屋に来てください』とのことです」

「え?でも私リュサールの部屋がどこにあるのか知らない⋯⋯」

「なら、うちらが案内するよ。多分、その想定なんでしょ」

「本当ッスか?⋯⋯あ、伝言助かったッス。あとのことは自分達でやるから、ここは任せてほしいッス」


ノアラの言葉に、メイドさんはお辞儀をして、背を向けて歩き出していった。


「⋯⋯要件があるなら、自分で言いにくればいいのに」

「事情があるんだよ、多分」

「事情とかなんでもいいッスけど、さっさと行かないとあの人多分めっちゃ怒るッスから、早いとこ行くッスよ」


***


二人に連れていかれるまま、薄暗い廊下を歩いていき、ある部屋の扉の前で止まる。


「それじゃ、自分達はこれで」

「え?一緒に来てくれないの?」

「だってあの人、うちらが居たら絶対絞め殺すじゃん。やだよ」

「えぇ⋯⋯。そんなことしないと思うけど」


二人の中で、リュサールは一体どんな印象なのだろう。そんな聞けもしないことを考えている間に、二人はいつの間にか遠くの方へと行ってしまっていた。

私はそんな二人から目を離し、目の前の扉へと向ける。そして、一回深呼吸をして、扉をノックした。


「リュサール?ラディです。その、入っていい?」


そう言うが、ドアの向こうからはなにも返答が無い。


「あれ?居ないのかな?」


開けていいのかどうか悩んでいると、ドアノブが回される音がする。ちゃんと居ると安堵したのも束の間、勢いよくドアが開かれたと思ったら、抱きしめられ、部屋の方向へと引っ張られた。


「ちょ!?」


私が部屋に入った瞬間、ドアがバタンと閉まる音がした。その音を聞いたと同時に、私と、私を抱きしめたその人はバランスは崩し、床に倒れてしまった。


「あはは。ごめんなさい。バランス崩しちゃいました」

「リュサール、何やって⋯⋯」


起き上がった私は、文句の一つでも言ってやろうとリュサールの方を見つめたが、彼の服装を見て、言葉に詰まってしまった。彼が着ているその服は、以前に二人で街に出掛けた時に購入したものだ。


「その、服⋯⋯」

「⋯⋯覚えてます?あの時、貴女がユエナを見たいって言った時に買った服です」

「あぁ、そういえば、リュサールが持ってたね」


あの時は、ユエナちゃんに会いたい一心で、リュサールに無茶なお願いをしてしまったが、今はもう不要になったものだろう。


「えぇ。見たがってたから、貴女が帰らないうちに見せないとじゃないです?」

「⋯⋯うん」


確かに、少し前の私なら大いに喜んで、成長したユエナちゃんに会えたと思っただろう。しかし、今の私では、どれだけ彼女に近い服を着た彼を見たって、リュサールにしか見えない。


「⋯⋯ラディ。今の貴女にとって、ユエナってなんですか?」

「え?」

「この服を買いに行った時、僕とユエナを重ねていた貴女だったら、今の僕の姿を見れば、抱きつく程に喜んでいたでしょう。でも、ユエナではなく、僕を好きだと言ってくれた貴女は、僕の姿を見て逆に落ち込んでいる。なら、貴女にとって、ユエナってなんなんですか?」

「それは⋯⋯」


かつて運命だと思ったあの子は、もう運命ではないのだろうか。

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