結構ドキドキする
「皆、行っちゃったね。リュサールはどうする?」
私達は、仕事に戻ったネヒアとミヒリ、ロレッタをきつく拘束して、本部の拘留所に連れていった姉様とダーシルテルタ騎士団長を見送った。リュサールもとっくに帰ったと思ったが、何故か私の隣に居続けていた。
「……まだ貴女と居ます。最近、全然構ってくれなかったので」
「構ってないって……。一緒に出掛けたのに?」
「途中でどこかに走り出し、他の男に現を抜かされてデートなんて言えませんよ」
「デート……」
リュサールはふい、とそっぽを向いてしまい、視線を逸らされてしまった。どうやらあの日のことを、未だに根に持っているらしい。
「あれは仕方ないじゃん。ロレッタを放っておけなかったし。ま、今でも放っておけないけどね。弟のアルノくんだって、まだ保護出来てないと思うし」
「……ネヒアの件はどう説明するんですか」
「だから、あれはネヒアが路地裏で偶然助けてくれたんだって。待ち合わせしてたとかでも無いから」
「……分かりました。でも、次からはああいったことは辞めてくださいね。本当に心配したんですから」
「はいはい。盗みをする子供が居なかったらやらないよ。……この埋め合わせは、またいつかするからそれでどう?」
私の提案に、リュサールは頬を膨らまし、わたしのことを睨みつけてきた。
「分かりました。もうそれでいいです」
「……ねぇリュサール。さっきから何怒ってるの?」
「言ったじゃないですか。構ってくれないって。僕は貴女の夫となるのに」
「……それ、まだ言ってるの?」
あれから数週間経って、リュサールの考えも少しは変わったかもしれないと思ったが、そんなことは無かったらしい。恋愛なんて、ただ一瞬のまやかしにすぎないのに。リュサールだって、いつかはきっと、私に愛想を尽かすのに。
「ずっと言い続けますよ。そして、貴女が十八になるまでに必ず、僕は貴女に、僕のことを好きだと言わせてみせます」
「……言わないよ。リュサールのこと別に好きじゃないし」
「へぇ?デートの時は、僕の言動に一々胸を高鳴らせていたのに?」
「そ、それは……」
私に伸ばしてきたリュサールの手が、私の頬に優しく触れる。冷めた温度で、肌をなぞっていく。リュサールの顔を見れば、視線を向けたことを後悔するくらい、見惚れるほどの妖艶な笑みを浮かべていた。
「…………」
「どうかしましたか?言い訳があるなら聞きますよ」
「……いや、その、言い訳じゃなくて、リュサールって、本当に綺麗だよね。羨ましいくらい」
思った通りのことをつい口にしてしまった。環境のせいなのか、今世は何故か思ったことをすぐ口にしてしまう。箱入り娘は皆こうなのだろうか。世間知らず、なんて理由でもあるかもしれない。リュサールはそんな私の突然の素直な言葉に、少しだけ困った顔をした。
「……そうですね。リガルーファルに産まれてしまった男の宿命ですね。白髪とはいえ、僕も厳しく育てられたものですから」
「……ユエナちゃんも、その教育の一環だったんだよね」
「えぇ。……とても、辛かったです。自分を押し殺すのは。でも、それも、貴女と出会ったあの日から、全てが変わった。今まで散々な言われようだった僕の髪も綺麗と言ってくれて……。本当に、感謝しているんですよ。ありがとうございました」
「……別に。思ったことを言っただけだよ」
「えぇ。ですから僕も、思ったことを言っただけです。貴女は僕のことを綺麗と言いますが、ラディはすごく可愛いですよ」
「……そう」
急に言われたストレート過ぎる言葉に、ふい、と視線を逸らしてしまう。
「ふふ。僕の気持ち分かりました?案外、ストレートにものを言われるのって、結構ドキドキするんですよ」
「……それじゃ、今後はリュサールのこと綺麗だって思っても言わない」
「え〜……。それは少し寂しいですね。それより、どこか行きませんか?小腹も空いてきましたし、よければ何か作りますよ」
「なら、クッキーがいい」
私の発言に、リュサールは少し驚いたような顔を見せた。六年前、ユエナちゃんと最後に会った時に作ったものだ。
「分かりました。厨房、借りられるか聞きにいきましょうか」
リュサールと共に、厨房に向かう。厨房に居た料理長に事情を話せば、問題なく使わせてくれるとのことだった。構わないと言ったのに、さっさと片付けて、厨房に居たシェフも全員追い出してしまった。どうやら、料理長である彼女には、どうにも頭が上がらないらしい。
「ラディ様、ファイトです!厨房にあるのは全部勝手に使って頂いて問題ないですからね!」
ぱちん、と華麗にウィンクをして、最後に彼女も厨房を出ていった。
「……なんというか、王城で働く女性の方々は、色んな意味で逞しい方が多いですね」
「そうだね。わざわざ追い出さなくても良かったんだけどなぁ……」
「えぇ?皆居なくなったら、僕と2人っきりになれるのに?」
「そうだね。それが嫌なんだよ」
男、それも私に好き好き言ってくる奴と二人きりだなんて、少しも安心出来ない。身を守る為にも、誰かに居て欲しかった。
「えぇ?ラディはとっくに僕のことが好きだと思っていたのですが……違うんですか?」
「違います!何をどう思ったらそう勘違いするわけ!?確かに、綺麗だとも思うし、偶に心臓に悪いことしてくるけど、でも、その、恋愛的な好きでは無い!」
「……そうですか。残念です」
リュサールはあからさまにら悲しそうな表情を浮かべた。自意識過剰というか、あまりにも一方通行過ぎる。
「……クッキー、作りましょうか。材料あるか確認しますので、ラディも冷蔵庫の確認手伝ってください。お城の冷蔵庫は大きいので」
「あ、うん……」
随分としょんぼりしてしまったリュサールは、厨房に置かれていたエプロンを身につけ、長い髪を高く結びながらそう言った。急な冷静の対応に、こちらまで申し訳なく感じてしまう。少し、言い方を間違えてしまっただろうか。今になって考えれば、フッたと同意なことを言ってしまった気がする。
「…………」
口を開けようにも、どう言葉を掛ければいいか分からない。昔と変わらず、何故か手際が良いリュサールの指示に従って、私達はクッキー作りを始めた。
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作者の都合により、今後一日一本投稿とさせていただきます。申し訳ございません。毎日投稿にはなります。ご安心を




