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 ハルカは枕もとに置いたスマホの着信音で目を覚ました。

 窓のカーテンの隙間から明るい光が差し込んでいる。


 スマホの画面を見ると母の名前が表示されている。


 心配して連絡を寄越したらしい。


「あ、お母さん、おあよう」

「おあようじゃないでしょ!友達の家に泊まるとか言ってから連絡ないし心配したのよ!」

「ごめん〜」

「まったくもう。8時過ぎてるんだから、電話の一本も…」


 ガミガミと騒ぐスマホから顔を遠ざけながら隣のベッドを見ると、マヤはまだ爆睡していた。


「…ルカ!ハルカ!聞いてるの?」

「うん。聞いてるよ」

「もう電車動いてるっていうから気をつけて帰ってきなさいね!」


 電話を切り、時刻を見ると8時15分だ。


「マヤさん、マヤさん、起きて、ください」


「……ん、んん」


「あまり長居しちゃうと鳴海くんに迷惑かけちゃうから」




 なんとかマヤを起こそうとしていると、ドアがノックされた。

 ドアの向こうから声がした。



「おはよう。起きてる?」


「あ、鳴海くん、おはよう」


「うん。悪いんだけど9時半には出るから、それまでに用意してもらえる?」


「わかった!ちょっと時間ちょうだい!マヤさん起こすから!」


「準備もあるだろうから……9時にリビング出てきてくれれば大丈夫。よろしくね」




 ハルカはマヤを叩き起こした。


 使用したベッドを整え、顔を洗い歯を磨いて着替えて化粧して……、2人がリビングに顔を出すとざっくりとした白のタートルネックニットにグレーの太めのパンツ姿のアキがソファに座ってテレビを見ていた。


『……昨日夕方からの雪により鉄道の一部路線では運行を一時中止していましたが、午前7時50分に全ての路線が通常運行を再開いたしました。続いてのニュースは青木ヶ原動物園のレッサーパンダ、ロッタンくんのニュースです。二足歩行が可愛いロッタンくんですが、新しい技を覚えたんです〜ローキックができるようになって、更に大人気に……』


「あ、おはよう。テーブルにベーコンエッグとトーストあるから。コーヒーはインスタントだけど、飲む?」


 2人を見たアキが手にしたカップを少し持ち上げた。

 もう朝食を済ませたようだ。


「おはようございます。朝食まで、本当にありがとう。コーヒーもいただくね」


「桂木さんには前期試験の過去問回してもらったしね。お礼になっていれば良いんだけど」


 ……マヤが無言だ。





「うん?マヤさん、調子悪い?」


「……アキちゃん……私、ココの子になりたい……」


 20代中盤・彼氏なし・オーバーワーク気味な一人暮らしのOLの心の何かに触れてしまったらしい。




「あんた、とっとと帰ってくれ」




 ハルカはアキに「ココに住む」などと絡むマヤを無視してテーブルについた。


 スティックタイプのコーヒーをマグに入れて電子ケトルのお湯を注ぐ。

 スプーンでかき混ぜて一口飲むと目が覚める気がした。


「いただきます」


フォークを手に取った。


ベーコンエッグは塩胡椒だけだったが、カリカリに焼かれたベーコンは十分に美味しかった。

トーストは焼き立てではなかったもののほんのり暖かい。

噛むとバターの香りが口の中に広がった。



カフェオレがいいと騒ぐマヤのコーヒーにアキが牛乳を注いだ。



2人は空になった食器を前に手を合わせた。


「「ご馳走様でした」」

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