誤解
「誰が面倒臭い男ですか」
振り返ると髪の毛をタオルで拭く湯上がりのアキが立っていた。
下はスエットのパンツを履いているものの、上は何も着ていない。
細身の印象があるアキだが、腹筋がきれいに割れている。
大胸筋も厚みがあって、きちんと鍛えているのがわかる。
そのまま寝室に入るとTシャツを着てから出てきた。
思わぬ光景に、マヤとハルカは目が離せなかった。
「……アキちゃん、良い身体してるわね」
「……うん」
「おっさんか。洗面台に使い捨ての歯ブラシ出しておいたから、歯磨きしてとっとと寝てください」
アキはタオルをテーブルに置くと、キッチンへ歩いていった。
水を流す音とかちゃかちゃと食器が擦れる音がしている。
食洗機に食器を入れているようだ。
少しすると微かな機械音が響いてきた。
2人が洗面台に行くとホテルのアメニティにあるような個包装された歯ブラシが2つ置いてあった。
客間のことと言い歯ブラシといい来客が少なくないのだろう。
大人しく歯磨きをしてリビングに戻ると、アキはローテーブルに置いたノートパソコンで作業をしているところだった。
真剣な表情で画面を見つめている。
「色々ありがと〜」
「鳴海くんはまだ寝ないの?」
「レポート、キリが良いところまで書いてから寝るよ。もう1時過ぎてるし2人は早く寝たほうが良いよ」
「アキちゃん、ご馳走様でした」
「鳴海くん。ご馳走様でした。カレーとっても美味しかった」
「忙しいのに手の込んだ物を用意させてしまって、ごめんなさい」
「料理上手だったんだね。手間かけさせちゃったね。ありがとう」
忙しそうなアキの事を見た2人は休む前に謝罪だけでもしておきたかった。
「うん?あぁ……、全然手間なんてかけてないよ。米も炊いてたし」
アキはキョトンとした表情を浮かべた。
「サラダはスーパーで買ってきたカット野菜で、カレーは業スーのを湯煎しただけ」
「業スー?」
「あれ?マヤさんは業務スーパー行かない?結構面白い品物置いてるよ」
「新川には無いのよ〜」
「桜木町の方にもなかったかな」
「興味あるなら明日ね。キリがない。おやすみなさい」
アキに話を打ち切られた2人は客間のベッドに潜り込んだ。
「とりあえず、私より女子力が高いわけじゃないみたいね。安心したわ」
「マヤさん……。おやすみなさい……」
残念なマヤの言葉を聞きながら、ハルカの意識は薄れていった。
色々あって疲れていたようだ。
マヤも程なくして眠りに落ちた。




